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仮面ライダーGLAY 第二話

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「第二話 宿命との邂逅」


 一方その頃、光太郎は双子山の山中に洞穴を発見し、不気味に真っ直ぐ続く道を進んでいた。
そしてその奥にはぼんやりと明かりが見え、更に進むと岩肌には不自然極まりない鉄の扉が見える。
扉の横には黒いローブを羽織った人影らしきものがいた。顔は真っ白なお面をつけており不気味さを後押しする。
「見張り?・・・やはりゴルゴムのような悪しき組織の仕業なのか・・・。」
光太郎は岩陰に隠れつつ足元の小石を拾い反対の壁に投げつけた。
その音に誘い出されてきた見張りの首元に手刀を叩きつけると呆気なく倒れ込んだ。
ローブを剥ぎ取ると奇妙な戦闘服を身に着けた人間であった。
続いて顔のお面を取ると光太郎は仰天した・・・
一見普通の人間に見えるが耳は触覚のように突き出ている。
「これは・・・・みた事がある・・・・怪魔界人じゃあないのか!?ばかな!」
かつて、クライシス帝国侵攻作戦の一旦で、ひとみが連れ去られた。
奪還の際、光太郎は怪魔界に潜入し怪魔界の住人とコンタクトを取った経験があった。怪魔界の住人は様々なタイプが存在するらしいのだが、その時に会った怪魔界人は丁度このタイプであった。
「では、はるかちゃんや一連の失踪事件もクライシスの仕業なのか?しかし皇帝は倒し、怪魔界も死滅してしまったと思っていたが・・・。とにかくここを調査しなくては・・・」
光太郎の嫌な予感は意外な形で答えが出始め、そしてまた新たな謎を深めてゆくのであった。
扉を開けてみると明らかに人工的に整備された廊下が続いていた。
「はるかちゃん・・・待っていてくれ。・・・おっと、こいつは借りて行こう。」
先ほどの見張りからローブと仮面を拝借し山中の洞穴にある施設へ侵入する。
施設内は所々薄暗い箇所もあるが電気はあるようで明るく沢山の機械がある部屋等もあった。その中で光太郎は大きなモニターがある部屋に入り適当に機械をいじってみる。
モニターはカシャカシャと画面が切り替わり、監視カメラの様子が表示された。どうやら監視室のようで施設の各セクションを監視する事が出来るようだ。
「見たこともない文字盤だ・・・・ん?これは・・・怪人!?仲間割れか?」
画面を切り替えてゆくとカマキリのような怪人と緑色の大きな目がある灰色の怪人が戦っている部屋が表示された。この部屋のカメラを操作する事もできるようで動かしてみると部屋の二階の高さにはガラス張りの観覧室があるようで数名の怪人が止める様子もなく戦いを見守っている。
また、画面を見渡してみると、胸部がえぐられたような痛々しい人間の遺体が映った。
「くっ!やはりこいつら人間を襲ったのか!?はるかちゃんは無事なのか!?」
更に画面を切り替えてゆくと光太郎が入って来た施設入口に画面が切り替わる。
「おっと、この監視室に居たやつが見張りが居ない入り口を確認しに行ったな。異常事態を発見されるまで時間の問題だ、先を急がなくては・・・。ここの見取り図は・・・怪人が仲間割れしている部屋が地下へと通じる部屋なのか・・・仕方ない・・・。」
光太郎は更に施設の奥へと駆けて行く。




 もう何度の攻撃と防御をくりかえしただろうか・・・。
自分の意思とは無関係に体は動き、まるで人形が体をぶつけ合う様な感情のない命のやり取りが続いた。いや、厳密には感情が反映されないと言うべきだろう。
いくら風士が泣き、叫び、憤慨しても体は意思を受け付けない。
その攻防も徐々に風士が押しつつあり、いま、終わろうとしていた。
人間であったであろうカマキリ怪人の両腕をへし折り、弱った所に更に執拗に攻撃を仕掛けるのだ。
この攻撃でカマキリ怪人は重傷を負い、両腕の鎌もへし折られ攻撃手段は無に等しい。もはやカマキリ怪人はただ立ち尽くすのみとなった。
普通でればお互いのどちらかが戦意無くした所で戦いは終わるのであろう。
しかし、この戦意そのものがない人形同士の場合、戦いを終わらせる事はどちらかの活動の終了を意味するのである。
「やめろぉーーーーーー!!!!」
風士は力の限り叫んだ。
しかし、無情にも体は動き、渾身の一撃を放つ。

ドッゴォッ!!


元同室者であるカマキリ怪人の胴体からは先ほどの筋肉男同様に大きな風穴が開きおびただしい血液が流れ出ている。
ベットリと腕に付いた血液は暖かく、たった今まで生きていた事を証明する。
人間であった筈であろう彼女の名前は?親は?恋人は?それよりも意識はあったか?痛みは感じていたか?恐怖はどうだ?誰のせいだ?バケモノども?それとも・・・・・・・自分?
腕に残る不愉快な感覚を鈍らせるように、様々な思念が頭の中で渦巻く。
ふとカマキリ怪人を見ると、本体を覆っていたカマキリ怪人の外皮が蒸気を放ちながらぽろぽろと剥がれ落ち、隙間からチェック柄の服が確認できた。
改めて自身の体が殺めたそれは元人間であった事実を突きつける。
殺してしまった罪悪感。殺されなかった安堵感。
様々な感情はやがて絶対的な悲しみ一色となり、風士の胸を引き裂いた。
「くっ!くそ!・・・・・ごめんよ・・・・。」
相変わらず涙は確認できないが、目頭が熱くなっているような感覚だけはある。
「ほっ、コード・グレイが勝ったな。あのトライコア怪人もスペックは悪くなかったが・・・流石はペンタゴンコアといった所かの。」
激しい戦いが終わった静寂の中茫然と立ち尽くしていると、雑音が混じったマイクを通して「四つ目」の声が響いた。
色々な事が一気に起こり過ぎて混乱していたが、自分や筋肉男、たった今殺害してしまった元人間も全て異形の者達の実験動物にされたのだという事がようやくわかってきた・・・。
「ほっ、最後にスクウェアコア怪人との戦闘記録をとって終わりにするかの。」
四つ目はとんでもない事を口にした。まだやると言うのだ・・・。
確かに痛む所はあるが体のダメージそのものはさほどでも無い様である。
しかし、心がもう持たない。絶望と虚無が風士の心を支配してゆくのが分かった。
「早く・・・俺を・・・殺せ・・・・。殺してくれ・・・・。」
「ほっ、脳が残存している分面倒じゃのぅ。身体コントロールには影響は出て無い様じゃが。意識喪失したら多少動きが鈍るかのぅ?」
実験動物の言葉など解さないのであろう。風士はふと、大学で受講した動物実験の講義を思い出した。
絶食したラットに試験毒物を投与させ、体調の変化を見てゆく方法や、刺激物を皮膚に塗り反応を観察してゆく方法など・・・。
動物は生存本能に素直であり、生きようとする。
例え毒入りだとわかっていてもエネルギー摂取として毒餌を必死に食べるのであろう。しかし今風士の心は生物が本来強く持っている生存本能がひどく薄らいでいる。毒だとわかれば死ぬ為にそれを喜んで食べるのであろう。
(ラットと人間、これじゃどっちが生物として優れてるかわからねぇな。まぁ、もう・・どうでもいいか・・・いや、良くない・・・かな。)
考えを目の前の状況に戻すべく冷静であろうとすればする程、別の何かが浮かび、現実から逃避しようとする。
まさに思考回路はショート寸前であり、心は完全に折れてしまっている。
銀のシャッターにうつろな目をやると丁度カラカラと開き始めた。