仮面ライダーGLAY 第二話
次に現れたのは黒いローブと白い仮面を被った、異形・・・と、言うには仮装した人間の様な印象を受ける。
「ほっ、まだ選定中じゃて・・・なぜソルジャーが出てきおった?」
「・・・・」
どうやら異形の者達の仲間のようだがこの黒いローブの者は何も喋らない。
「なんじゃ?なぜそこに居る?」
黒いローブの者は四つ目の問いを無視する様にキョロキョロと辺りを見渡した後、真っ直ぐ風士を凝視している。
「オイっ!キサマァ何者だぁ!?返事をしないかぁ!!!」
オオカミ男がしびれを切らして叫ぶ。スピーカーがハウリングする程の下品な大声が部屋中に響き、茫然自失であった風士を我に帰した。
「お前達こそ何者だ?人を誘拐していたのはお前達だろう?」
黒いローブと仮面を外したそこには中年の男性が姿を現した。どうやらここには似つかわしくない普通の人間の様だ。
(助けが来た!)
と、風士は一瞬思ったのだが、どう見ても自分は怪人だし、それよりもまた自分の体を操られ、せっかく助けに来てくれた人を殺してしまうのでは?というリスクの方がはるかに高い。
「ほっ、人間が迷い込んでしまったようじゃな・・・。やれやれ・・・グレイ、片付けろ。」
四つ目が指示を出すと予想通り風士の意思とは関係なく体が動き出す。
(まずい!!)
「おい!あんた!逃げろ!殺されちまう!!!!」
「!?」
中年男性は武道の心得があるのか素早く構える。
「俺、バケモノにされちまってオマケに首から下は操られているんだ!きっとあんたも殺してしまう!」
「何だって!?」
「早く逃げ・・・!!」
逃げろと言いかけたが体は既に攻撃を開始している。回避は難しいだろう・・・。
しかし、次の瞬間中年男性は高く跳躍し、風士の背後に着地した。
「え?」
体操選手でもこうは行かないだろう。風士の動揺は異形の者達にも同様であった。
「なんだぁアイツは?」
「ほっ、少々人間離れした跳躍力じゃな・・・まさか・・・」
中年男性はクルリと身を翻し、左手を胸に構え、右手を高く突き上げた。
「変身!」
中年男性がそう呟き素早く構えると、全身から光を放った!
「な、なんだ!?」
光の中から現れたのは黒いボディと真っ赤な目の怪人が現れた!
「俺は太陽の子!仮面ライダーBlack!RX!」
「こ、これが・・・・仮面ライダー!?・・・危ない!!!」
仮面ライダーBlackRXが助けに来た。しかし今その仮面ライダーに対して攻撃を仕掛けている。正義の使者・仮面ライダーまで殺してしまってはもう救われないだろう。しかし・・・
「キングストーンフラッシュ!!!!」
RXから再び眩い光を浴びせられると、意思を介さない体がピタリと止まった!それだけでなく体を覆っていた灰色のバトルスーツの様な外皮も光とともに消えてゆき、風士を元の人間の姿に戻した!
「も、もどった・・・?」
「君は人間・・・?大丈夫か!この首輪で操っていたのか!?」
RXが力を込めるとバチバチと火花を放ちながら忌々しい銀の首輪が外れた。
観覧室ではオオカミ男が目を見開いて驚いている。
「あいつは・・・仮面ライダーと言えば・・・!!マッド司祭殿!?」
オオカミ男が四つ目を見るとフルフルと震えている。
「なんと!!!!いきなり大本命が現れるとは!!!!」
「司祭!あいつなんだな!?」
「いかにも!我らが絶対神の仇!憎き仮面ライダーBlackRX!何としてでもここで討ち取ってくれよう!!!ワルフ!獣鬼どもをここに集結させよ!適応期でも構わん!!」
施設内に警報が鳴り響く。やっと操り人形であった体から解放された事と人間の姿に戻った安堵の余韻に浸る間もなくすぐに敵がやってくるだろう。
「大丈夫かい!?君の名前は?」
「はぁ・・・はぁ、ありがとうライダー・・・。俺、北川風士って言います。」
「君は確かニュースで言っていた連続失踪事件の最初の被害者・・・。ここでは一体何があったんだい?」
「あいつらに捕まって・・・たぶん体中改造されて・・・・俺もバケモノになって・・・それで・・・それから・・・俺は・・・」
風士はそこまで言いかけたが、胸が苦しくなり声を詰まらせた・・・。
その様子を察したRXは冷静に語り掛ける・・・。
「・・・わかった。辛い事がたくさんあったのだろう・・・。だが今はとにかく脱出だ。他に囚われている人は居なかったかい?」
「無事な人はもう・・・いや、いた。確か、はるかって言ったっけ・・・。女の子だ!」
「そこまでだ!!!!」
ガッシャーン!!
観覧室のガラスが割れ、そこからオオカミ男が降りてきた。
「逃がさんぞ仮面ライダー!憎き者よ!ここで八つ裂きにして王の前にその首晒してくれる!!」
「王・・・だと?うおっ!!」
「死ねぃ!!!」
オオカミ男が素早く鋭い攻撃を仕掛けてくる!!
「風士君!君に物を頼むのは申し訳ないが、はるかちゃんを連れて逃げてくれ!!俺はここで時間を稼ぐ!!」
「俺が・・・?このバケモノだらけの中で・・・?」
既に精神的な疲労はピークに達しており一瞬躊躇したが、ここでやらない訳にはいかない。いや、そうすることが自分自身への救いなのでもある。
「わかった・・・・ここは任せたよ・・・・仮面ライダー!」
「逃がさんぞグレイ!!」
オオカミ男が風士に向けて鋭い爪で襲い掛かる!
ガシィ!
「貴様の相手は俺だ!」
間一髪!RXがオオカミ男との間に割って入り手首を掴む!あと、コンマ何秒遅れていたら風士の眉間は貫かれていた事だろう!
態勢を崩しつつも風士は走り、自身が居た牢屋へと向かった。
「ワルフよ!よい、仇敵、RXにのみに絞れ。」
観覧室から「四ツ目」が見降ろしながら言う。どうやら四ツ目の怪人が司令官のようである。口ぶりからして自分に対して只ならぬ因縁があるようだ。
「貴様ら・・・・・・・怪魔界・・・クライシスの者なのか?」
「ほっ、いかにも!我は<神聖国家エウレカ>におけるクライシス教司祭マッド・・貴様に滅ぼされかけた怪魔界の者。」
「クライシス教・・・だって!?しかし!怪魔界の住人は死滅したかと思っていたが・・・・・」
「そうじゃとも・・・死滅しかけたとも。よかろう・・・RX・・・冥土の土産に我らの想いを教えてやろう。ワルフよ・・・下がっておれ。」
「フンっ!死にゆく相手に何を聞かせようと言うのか・・・まぁ司祭殿の好きにするが良い・・・」
「クライシス絶対神が討たれた帝国は瓦解した・・・。怪魔界はクライシス神の絶対支配において長く統一されていたが、これを機に激しい権力争いの戦争が300年続いたのじゃ・・・。」
「300年!?馬鹿な!クライシスの侵攻はほんの30年程前だったぞ・・・」
「ふん・・・怪魔界と地球との時空道が遮断され共有していた時間軸が失われたのじゃ。悠久の時を経て再び時空道を繋げたは良かったが・・・RX!貴様が既にいない世界であれば目的は半分しか果たせなかったからのぅ・・・間違いなくクライシス神のお導きじゃわい。」
「なんてことだ・・・。しかし・・・あの時怪魔界は荒廃がかなり進んでいたはず・・・大規模な戦争なんてしたら・・・」
「いかにも・・・しかし戦争のおかげで人口は十分の一以下に間引きされ環境とのバランスを得たのじゃ。」
作品名:仮面ライダーGLAY 第二話 作家名:カイム