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未来福音 序 / Zero―ボーイミーツ?―

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 光沢の足元で必死に餌を食べる猫を見ながら、俺はそう答えた。もちろん、光沢から与えられる餌が無くなれば、力の弱い猫がここから追い出されてしまうこともあるだろう。それがきっかけとなって、生きていけない猫だっているかもしれない。でも、俺はそういう答え方をしなかった。
「そうかもしれない」
 表情一つ変えず、光沢はそう言って俺の答えを受け入れた。
 またしばらく沈黙が続いた。少しいたたまれないような気がして、俺は言葉をかけようとした。おまえの行為で救われているものも確かにいるはずだ、と。
 そう考えていたところに、再び光沢が話しかけてきた。
「たまに、思う。これから何が、どうなっていくのかを、知れたらって。未来を、知ることができれば、少しはマシに生きられるかもしれないって」
 俺は、何も答えることができなかった。今度は、光沢の方を見ることができない。根拠はないけれど、彼女がこちらを窺っているような気がした。
「知ったって、それが本当の未来かどうかなんてわかりゃしないんだ」
 そう言ってから、光沢の方へ視線をやると、こちらを見つめる光沢と目があった。真っ直ぐな目が俺を見ていた。何が後ろめたいわけでもないのに、俺はすぐさま目を逸らした。
 いつの間にか、雨は小降りになってほとんど止んでいた。野良猫たちも、餌を食べ終わって毛づくろいに勤しんでいる。
光沢は、餌の容器を回収すると軒下から外へと出て行った。俺も慌ててその後を追った。
なぜ焦っていたのか。口を利かない光沢といることは居心地がよかったはずなのに。
駆けた足が水たまりに突っ込み、撥ねた水がズボンを汚した。

きっと、かつての俺ならこの時点で視えていたはずだ。さっさと気づいて取るべき行動を見定めていたはずだ。
それが、できなかったことを、悔いていないといえば嘘になるだろうか。
家に着いてから、俺はハンカチを返し忘れたことに気づいた。