420の日
とりあえず俺は目の前にあるその顔がとてつもなくムカついたので、思いっきり握った。当然ながら「痛い! イタイイタイ!!!」と抵抗されるが、俺は気にも留めずにそのままその身体を持ち上げると窓を開ける。そして、ベランダから。
「え、ちょ、ま! シズちゃん、俺死んじゃう! シズちゃん俺が死んじゃったら寂しい思いしちゃうよ!?」
こんな事で死ぬならさっさと俺に殺されている筈だ。それに最後の言葉が更にムカついたんで、俺は容赦なく臨也を。
落とした。
情けない声が聞こえて数秒後。着地したのか、大きな音がした後に「もう! 今日一日を素敵に染めてあげた俺に対する態度がそれでいいわけ!? この恩知らず! シズちゃんの『シ』は恩知らずの『シ』だ!」と大人げない台詞が聞こえた。
「やっぱ死なねーじゃねーか」
そう呟いてベランダの窓を閉めた。
確かに今日は「奇妙な一日」だったが。まあ、確かに「嫌な一日」ではなかったな。
――あいつの言う通りなのだけが癪だがな。
自分で蹴り飛ばした扉を無理やり嵌め込みながら俺はそんな事を考えていた。
完