もしも獅子尾エンドだったら (4)
『今後化粧禁止な。』
夜気がつくと、獅子尾からメールが入っていた。
『わかってます。校則でしょ。』
すずめがそう返信すると、ピリリリッと携帯が鳴った。
「言ってる意味が違う!」
と、とった途端に言われた。
「え?え?」
何が?とすずめが思っていると、
「すずめがキレイに着飾ってると、
他に男が寄ってこないか
オレが気が気でないの! わかる?」
と、獅子尾が言った。
ただでさえ普通に会えなくて
ヤキモキしてるのに、と、
電話の向こうからブツブツ言うのが聞こえる。
「ふっ…」
と、すずめは思わず吹いてしまった。
「何だよ?!」
「先生、なんかかわいいですね。」
「っ///は?何それ…って、
だから言ったし。オレはガキなんです。
25なんてそんなもんだよ。
大人の男じゃなくてガッカリした?」
「別にそういうこと、先生に求めてません。」
すずめにそう言われて嬉しいのか
悲しいのか、
「それはそれでショックだな…」
「大人に見られたいんですか?」
「たまにはね…」
「ちゃんと思ってますよ?」
「どーだか。」
「先生。」
「ん?」
「先生が大人でもガキでも
どんなでも私は好きです。」
「えっ!あっ…おお、うん。って
何言ってんだ、オレ///。
急にそうくるからビックリした。」
「オレも好きだよ。」
「ふふ…」
電話でしか愛を語れないのが寂しい。
早くこの腕に抱いてやりたい。
そう、はやる気持ちを
獅子尾は一生懸命おさえつけた。
出会った頃は、単なるゆきちゃんの姪で、
大食いで田舎者丸出しの少女だったのに、
どんどんと女らしくなっていく。
25とはいっても、
こんなふうにちゃんと思いを口にした付き合いは
今までなかったと思う。
なんとなく流れで、悟って、
たぶんお互い好きなんだろうで一緒にいて、
離れていく人を行くなと引き止めもせず、
伝えることで傷つくことも傷つけることも避け、
適当にやってきた。
今は例え会えなくても、口にする想いで
ちゃんと繋がっていることがわかる。
ただ、もっと確かに繋がりたい、
という気持ちも強くなっていく。
ただ愛しくてひとつになりたい、
そういう気持ちをすずめに対してもつのが、
今の社会では犯罪だというのはなぜだろう、
そう矛盾を感じつつも抑えるしかできないのは
獅子尾はやはりしんどかった。
作品名:もしも獅子尾エンドだったら (4) 作家名:りんりん