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もしも獅子尾エンドだったら (5)

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カラン、カラン。

「あ、すみません、まだ準備中で…」

そうやって笑顔で応える諭吉のカフェに現れたのは、
諭吉と絶交中の獅子尾だった。

「何しに来たんだよ、久しぶりだな。
 一年半くらい来てなかったか?」

「うん…久しぶり。」

「何だよ。もう卒業だから
 そろそろいいだろって?」

諭吉は背中を向けて
開店準備をしながら
さっきとは打って変わって
無愛想に言った。

「あれから…2人では会ってない。
 本当だよ。メールや電話はしてたけど。
 すずめが傷つくようなことは
 何もしてない…」

獅子尾がそう言うと、
諭吉は被せ気味に言った。

「卒業まで待たせて?傷つけてないって?」

「っ…」

「勝手だな。お前は。
 すずめ、18になっちゃったじゃないか。」

諭吉は手を置いて、獅子尾の目を真っ直ぐ見た。

「本気なのか?」

「ああ。」

「すずめもなんで馬村くんにしとかないかな。」

「どうしてそこで馬村が出てくんの。」

「あの子、前に俺がすずめと
 どういうつもりで付き合ってるのかって聞いた時、
 泣かさないつもりだって、
 アイツが幸せなら自分は身を引くのも
 厭わないつもりだって言ったんだぞ。」

「ゆきちゃん、馬村にそんなこと聞いたの?」

「えっ…だってまた騙されないか
 泣かされないか心配だったから…」

諭吉は少し焦って答えた。

「ちょ…騙すってオレのこと?人聞き悪いな。」

「そういうつもりがなくても
 お前はいつも自分のことで手いっぱいだから
 結果的にそうなってんだよ。」

「うん…マジでダセえな。
 高校生に負けてるよ。」

「こんななりふり構わないの、
 初めてじゃないか?」

「初めて…だな。簡単には諦められないのも。」

「………」

「ふん、卒業してもすずめはまだ
 未成年だってこと、忘れんなよ。」

「ゆきちゃん…」

「絶交は解くけど、大っぴらに
 許したわけじゃないからな。」

「!!ゆきちゃんっ!」

ガツッと獅子尾は諭吉にタックルをして
流れそうな涙をこらえた。

「わっ、やめろ、バカ!
 お前に抱きつかれても嬉しくないわ!」

「マジでサンキュー…」

「許してないって言ってんだろ?!」

オープンの時間になり、最初の客が
カランカラン、とドアを開けて入ってきて、

大の男が2人、抱き合って(いるようにみえる)
泣いているのを、青ざめた目でみつめていた。

「あっ…いらっしゃいませ~。」

「ハハハ、どうぞ~。」

(五月のせいで変な誤解されたらどうすんだ!)

(元々ゆきちゃん、誤解されやすかっただろ?!)

そうボソボソ言って、獅子尾は
とりあえずコーヒーを注文した。