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もしも獅子尾エンドだったら (5)

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しばらくしてカフェにすずめがやってきた。

カラン、カラン。

「おじさんっ!ありがとう!」

カウンターの中の諭吉に、
すずめは思いっきり抱きついた。

絶交が解かれたと、
獅子尾がメールしたらしかった。

「わっ、すずめ?!こらっ、やめなさい。」

「ホントのホントにありがとう!」

「まだだよ。まだ卒業してないでしょ?」

「うん!でもありがとう!」

本当にうれしそうな姪の顔を見て、
諭吉は少しデレッとした。

「すずめもなんか飲んでいくか?」

「うん。じゃあ、紅茶。」

すずめはカウンターの
獅子尾の隣に座った。

カフェで人目があるとはいえ、
学校外で二人になることが
とても久しぶりだったので、
お互いにドキドキした。

「よかったな。」

「…うん。」

すずめはもう専門学校の入試も終わり、
四月からの進学先も決まっていた。

2人の間に何やらほんわかした空気が漂い、
この一年半、本当に我慢して
愛を育んできたのがわかり、
諭吉は少し悔しかった。

その空気を割るように、
「はい、すずめ。レモンティー!」
と、すこし乱暴にティーカップを差し出した。

反対すればすぐダメになると思っていたのに。

本気で付き合いたいのだとわかって
嬉しいはずなのに、なぜだか
諭吉はモヤっとしていた。

それでもかわいい姪には笑っていてほしい。

ついつい2人にケーキなんかを
出してしまっていた。

紅茶を飲み終わり、
カフェが混みあってきて、
2人が一緒に出ようとしたところへ、
「ほら、そこ!あと1ヶ月あるんだから
 気を抜かないの!」
と、諭吉の怒号が飛ぶ。

「おじさん、今からうちに先生呼んでいい?
 まだ話したいことがいっぱいあるから…」

「えっ…じゃあ俺も行く…って…」

諭吉はそう言いかけて
カフェが満席なのを見た。

「手ぇ出したらこの先ないからな?」と、
獅子尾をじろりと睨んだ。

「何にもしないよ。ただ話すだけ。頼むよ。」

「じゃあ、先にすずめが帰んなさい。
 家についてから五月が行って。」

「おじさん、ありがとう!」

そう笑ってすずめはカフェを出ていった。

「絶対だぞ?」

念を押すように諭吉が獅子尾に言った。

「わーかってるって。
 ここまできてそんなバカなことしないから。」

そう言って獅子尾はすずめを追いかけるように
カフェを出ていった。