風と風鈴
時は攘夷戦争末期―――――
灼熱の太陽が地を照らす夏。
しかし今日はジメジメするような暑さではない。
日差しは強いが湿気は無くカラッとしていて、心地よい風も吹いている。
心まで血に染まってしまいそうな青年達にも心地よいと感じられるような風が――――――――――
どうやら敵は、今日は戦を仕掛けてこないらしい。
そのためか青年達はいつもより穏やかに時を過ごしていた。
その青年達の中心人物。
銀髪の天然パーマ
敵からも一部の味方からも…恐れられている彼は縁側に座っていた。
普段戦場を駆けめぐっているようには見えない
他人から見れば何を考えているかも読み取れないような表情で、ただじっと外を眺めていた。
彼はたまにこういう表情をする。
しかし、彼の昔からの親友…仲間…戦友…同志…
もはや家族とも言える存在の3人には彼がなにを考えているかが大体わかるようだ。
銀髪の青年を遠目で見ながら最初に口を開いたのは
女のように髪が長く、女より綺麗な黒髪の持ち主だった。
桂「あいつ…またあの時の事考えてるな…」
次に口を開いたのは紫がかった黒髪の持ち主。
高「あぁ…そうだな…」
そう言いながら少し視線を落とす
茶髪の天然パーマの青年は二人の会話を聞きながら、少し悲しそうな……そんな顔をしながら銀髪の青年を見た
そして銀髪の青年は誰に言うわけでもなく呟く
この風に溶け込んでしまいそうなほど弱々しく…だがハッキリと、たった一言
銀「先生……」
言った本人に自覚はないだろう
無意識に言ってしまったようだ
遠目で見ていた三人からはそう見受けられた。
そして三人はそれぞれ思う
【やっぱりな…】と。
茶髪の青年を除き、"先生"を失って悲しかったのはみんな一緒だ。
しかしその中でも、幼い頃に屍だらけの戦場で"先生"に命を救われた銀髪の青年は一番傷つき、一番悲しんだ……
自分の親を知らない銀髪の青年はその"先生"を親のように慕っていたからである。
いや…その青年は親というものがどのようなモノか知らないが、周りから見たら二人は親子のよう見えたらしい。
そんな人を失ったのだ……
高杉と桂は銀時にどう声をかけるか……いや今はかけない方がいいか…迷っていると辰馬が口を開いた
辰「いい風が吹いちょるのう」
そうしておもむろに立ち上がり自室へと戻ってしまった。
残された二人は顔を見合わせてからもう一度銀時に視線を移し、桂から口を開く。
桂「あいつは…銀時は…未だに"自分は独りぼっちだ"…と思っているのだろうか…」
高「俺たちに心配かけたくないんだか何だかしらねぇが…最近は俺たちの事でさえ拒絶するような目だったり、そんな雰囲気だったりする時があるよな。まぁ、昔ほどじゃねぇが…」
桂「あいつは物心ついた頃には既に独りだったからだろう…。まだ幼い…俺達が出会った頃は警戒心丸出しだったからな。先生から少し聞いていたが、かなり辛い生活だったと思うぞ」
高「あぁ…そうだな…」
幼いながらに"生き残らなければならない"と思い、独りで食料を探し、時には天人とも…人間とも戦ったのだろう。
誰を信じ、誰を頼って良いのかも分からず、ずっと…たった独りで。
桂「俺達はあいつを、仲間…友達…もっと特別な存在だと思っているのだがな」
高「それは銀時も分かってるだろうよ。ただ……それでも足りねぇのかもしれねぇ。俺達だけじゃあいつを救ってやれねぇのかもな…」
桂「だからと言って友情を断つ気はないぞ。」
高「安心しろ。俺もだ…。それにしても辰馬の野郎は何してんだ?」
桂「そういえば自室に戻ったきりだな…。銀時があぁなった時はいつも側に居るはずなのだが…」
高「何だ…倦怠期か?ならちょうどいい。俺が銀時を貰うか」
桂「やめとけ高杉。あいつらに倦怠期など有るわけがなかろう。そうやって隙あらば奪おうと…。邪魔をするな馬鹿者」
高「ほったらかしにしとく辰馬が悪い……っと」
高杉は立ち上がり銀時に声をかけようと近づいた瞬間、後ろから思いっきり引っ張られ元居た場所に戻される。
桂がやったのだと思い苛立った目で引っ張った人を見上げるとそこには桂の顔ではなく……
辰馬がまんべんの笑みで高杉を見ていた。
灼熱の太陽が地を照らす夏。
しかし今日はジメジメするような暑さではない。
日差しは強いが湿気は無くカラッとしていて、心地よい風も吹いている。
心まで血に染まってしまいそうな青年達にも心地よいと感じられるような風が――――――――――
どうやら敵は、今日は戦を仕掛けてこないらしい。
そのためか青年達はいつもより穏やかに時を過ごしていた。
その青年達の中心人物。
銀髪の天然パーマ
敵からも一部の味方からも…恐れられている彼は縁側に座っていた。
普段戦場を駆けめぐっているようには見えない
他人から見れば何を考えているかも読み取れないような表情で、ただじっと外を眺めていた。
彼はたまにこういう表情をする。
しかし、彼の昔からの親友…仲間…戦友…同志…
もはや家族とも言える存在の3人には彼がなにを考えているかが大体わかるようだ。
銀髪の青年を遠目で見ながら最初に口を開いたのは
女のように髪が長く、女より綺麗な黒髪の持ち主だった。
桂「あいつ…またあの時の事考えてるな…」
次に口を開いたのは紫がかった黒髪の持ち主。
高「あぁ…そうだな…」
そう言いながら少し視線を落とす
茶髪の天然パーマの青年は二人の会話を聞きながら、少し悲しそうな……そんな顔をしながら銀髪の青年を見た
そして銀髪の青年は誰に言うわけでもなく呟く
この風に溶け込んでしまいそうなほど弱々しく…だがハッキリと、たった一言
銀「先生……」
言った本人に自覚はないだろう
無意識に言ってしまったようだ
遠目で見ていた三人からはそう見受けられた。
そして三人はそれぞれ思う
【やっぱりな…】と。
茶髪の青年を除き、"先生"を失って悲しかったのはみんな一緒だ。
しかしその中でも、幼い頃に屍だらけの戦場で"先生"に命を救われた銀髪の青年は一番傷つき、一番悲しんだ……
自分の親を知らない銀髪の青年はその"先生"を親のように慕っていたからである。
いや…その青年は親というものがどのようなモノか知らないが、周りから見たら二人は親子のよう見えたらしい。
そんな人を失ったのだ……
高杉と桂は銀時にどう声をかけるか……いや今はかけない方がいいか…迷っていると辰馬が口を開いた
辰「いい風が吹いちょるのう」
そうしておもむろに立ち上がり自室へと戻ってしまった。
残された二人は顔を見合わせてからもう一度銀時に視線を移し、桂から口を開く。
桂「あいつは…銀時は…未だに"自分は独りぼっちだ"…と思っているのだろうか…」
高「俺たちに心配かけたくないんだか何だかしらねぇが…最近は俺たちの事でさえ拒絶するような目だったり、そんな雰囲気だったりする時があるよな。まぁ、昔ほどじゃねぇが…」
桂「あいつは物心ついた頃には既に独りだったからだろう…。まだ幼い…俺達が出会った頃は警戒心丸出しだったからな。先生から少し聞いていたが、かなり辛い生活だったと思うぞ」
高「あぁ…そうだな…」
幼いながらに"生き残らなければならない"と思い、独りで食料を探し、時には天人とも…人間とも戦ったのだろう。
誰を信じ、誰を頼って良いのかも分からず、ずっと…たった独りで。
桂「俺達はあいつを、仲間…友達…もっと特別な存在だと思っているのだがな」
高「それは銀時も分かってるだろうよ。ただ……それでも足りねぇのかもしれねぇ。俺達だけじゃあいつを救ってやれねぇのかもな…」
桂「だからと言って友情を断つ気はないぞ。」
高「安心しろ。俺もだ…。それにしても辰馬の野郎は何してんだ?」
桂「そういえば自室に戻ったきりだな…。銀時があぁなった時はいつも側に居るはずなのだが…」
高「何だ…倦怠期か?ならちょうどいい。俺が銀時を貰うか」
桂「やめとけ高杉。あいつらに倦怠期など有るわけがなかろう。そうやって隙あらば奪おうと…。邪魔をするな馬鹿者」
高「ほったらかしにしとく辰馬が悪い……っと」
高杉は立ち上がり銀時に声をかけようと近づいた瞬間、後ろから思いっきり引っ張られ元居た場所に戻される。
桂がやったのだと思い苛立った目で引っ張った人を見上げるとそこには桂の顔ではなく……
辰馬がまんべんの笑みで高杉を見ていた。