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風と風鈴

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その様子を見ていた桂が慌てて辰馬に言う。



桂「待て坂本!!こやつも悪気があってやった訳じゃ…!!!」



それでも辰馬は笑顔を崩さない



高「た…ただ声かけようとしただけだ…。お前がほったらかしにするからだろ…」




あの高杉の顔が引きつった。

そう…いつも笑ってる辰馬だが、この笑顔はヤバい。一番ヤバい。



完璧にキレてる時の笑顔だ…。



それを分かってるためか、いつもより下手に出た高杉。



しかし同時に辰馬が片手に持ってる箱が気になった。



高「そんなに怒るこたぁねぇだろ…。それより、何だよその箱は」



すると辰馬は直ぐにいつもの顔に戻り言った。



辰「この箱か?中に風鈴が入っちゅう」



そして桂と高杉は同時に問い返す。



桂・高「風鈴?」



辰「そう風鈴じゃ。今日は良い風が吹いちょるからのう。風鈴でも飾ろうかと思うてな」




桂「坂本…それは少しばかり不謹慎ではないか?今日は戦は無いとしても、まだ戦争中だぞ…」



桂が険しい顔で辰馬に言うが辰真はいつもの笑顔で返す



辰「だから、じゃ。こういう日にやっとかんと、いつやるんじゃ?おまんらも、この夏の音でも聞いて少し落ち着け。心休まるぞ?アハハハハ!」




二人にそう言うと辰馬は立ち上がり、ぼーっとしている銀時の元へと行った。


もちろん、風鈴を持って―――――――――





銀時の背後に立っても銀時は何も反応しない。


もしかしたら気がついてないのかもしれない。

戦場では有り得ない事だが――――――






"仕方ない奴じゃのう"と心の中で呟き、一度大きく深呼吸してから思いっきり銀時に抱きついた。



辰「金時ぃ!!!何をぼーっとしちゅうがぜよ!!」



辰馬の行動に特別驚いた素振りを見せずに銀時は答える。



銀「辰馬…?か。ただ外を…空を…景色を見てただけだ」



辰馬は一瞬悲しそうに笑ったが、すぐにいつもの明るさを取り戻した。



辰「…そうじゃ、金時!"これ"持ってきたんじゃよ!」



銀「これって?」



辰「これじゃよ!おんしの好きな…これじゃ!」



銀「あ…風鈴だ」



銀「おんし風鈴好きじゃろ?今日も暑いが風が吹いてるからのう。きっと良い音が出るぜよ」



そう言いながら風鈴を飾り始める辰馬。


そんな辰馬を銀時はただ眺めていた。



銀「風鈴か…懐かしいな。戦争が激しくなってからは飾ってなかったな」



辰「そうじゃろそうじゃろ?たまにはこうしてのんびりしながらリフレッシュせんといかんぜよ!」



"よし出来た"と、辰馬が風鈴を飾り終えた。
すると風が吹くたびに"ちりん、ちりん"と綺麗な音を立てた。


辰「いい音じゃな。こういう音を聞いてると心が落ち着くぜよ」


銀「そうだな、俺も好きだ…」


辰「そういえば、銀時は何で風鈴が好きなんじゃ?」


銀「んー…なんでだろ。何か嫌な事とか忘れられるような気がするんだよな。あと…」


辰「ん?なんじゃ」


銀「餓鬼の頃、よく先生と縁側で風鈴の音聞きながら茶を飲んだんだ」


辰「…そうじゃったんか」


銀「そういえばその時、何か教えてもらった気がするんだけど……あれ、思い出せねぇ…や…おかしいな…」





今にも泣き出しそうな顔をしていた銀時を見ていられず、ギュッと後ろから抱きしめる。


ここは辰馬に任せた方が良いだろうと判断した高杉と桂は静かに立ち上がり部屋を去った。




辰「銀時」


銀「…?」


辰「好きじゃよ」


銀「なんだよ…急に」


辰「言いたくなったたけじゃ」


銀「なんだそれ」


辰「いいじゃろ、たまには」


銀「なぁ、辰馬」


辰「ん?」


銀「…あいつらには内緒にしてくれな」


辰「わかった。…こうしててやるから、言うてみ」




まっすぐ空を見ながら、独り言のように言い始めた



作品名:風と風鈴 作家名:棗-なつめ-