優しいキスをして
久しぶりのひるなかの流星です!
大輝×すずめ。最近花より男子ばっかり書いてたから、すずめがつくしになってたりしたらごめんなさい(笑)
13巻発売記念に(^-^)
***
【優しいキスをして】
ピピピピ…
大輝が自室で勉強していると、珍しくすずめからの着信が入った。
高校を卒業し、同じ大学の別の学部に進学した2人は、時間が合えば帰り待ち合わせをして帰ることも多く、高校時代とはそう変わらない付き合いが続いている。
それでも、夏休みの今は課題に追われていて、週に一度くらいしか会えていない。
猪突猛進タイプのすずめは、会いたいと思えば電話もせずに会いに来るから、約束が意味をなさない場合が多い。
元々、外出が好きというわけではない大輝だったが、用事がない日にほとんど家にいるのは、すずめのためと言ってもよかった。
そんな珍しいすずめからの電話に驚くのと同時に、もちろん嬉しさもあって、すぐに出ようとするが、1コールで電話は切れてしまう。
なんだ…?
そして、待つこと1分。
再度着信、もしくはメールがあると思っていた大輝は肩すかしを食らう。
何だったんだ?
すずめからの電話が気になってしまい、勉強が手につかなくなってしまった。
はぁとため息を吐くと、荷物をまとめ出掛ける準備をする。
たまには、俺が会いに行ったっていいよな。
***
「こらっ!大和〜何してんの!?」
「べーつに。ちょっと見てただけだよ!」
「ほら、返して!」
諭吉のマンションで、携帯の取り合いをしているのは、すずめと名を大和と言う、すずめの従兄弟にあたる親戚だった。
どうやら、親には禁止されているスマホゲームをすずめの携帯でやろうとしたらしい。
家庭の事情があり、今日、諭吉が預かることになった小学2年生の大和だが、諭吉も仕事を休むわけにはいかずに、すずめが面倒をみることになった。
すずめにとっては、気の置けない相手であることから、迷惑よりも、たまにしか会えない大和と遊ぶのは嬉しいことだ。
2人で、人生ゲームをして盛り上がっていると、玄関のチャイムが来客を告げる。
「あれ、誰だろ?おじさん…じゃないよね。大和、ちょっと待っててね」
「うん。早く戻ってこいよ」
玄関のドアを開けると、顔を赤くした大輝が外に立っていた。
「大輝!?どうしたの?顔赤いし…」
「炎天下の中走りもすれば、赤くなるだろ…。あっちい。てか、どうしたのって、おまえ、さっき俺に電話しただろ?」
「えっ?ああっ!あれ?大輝に掛けちゃったんだ!?ごめん!ちょっと今ゴタゴタしてるんだけど、良かったら上がって?」
「ゴタゴタ?」
すずめの言葉を受けて、大輝の頭にたくさんの疑問符がわくと、甲高い子どもの声が大輝の言葉を消した。
「すっずっめえっ!!」
「!?」
「あ、ごめん。電話の犯人はコイツ。大和っていう父方の従兄弟なんだ…。ちょっと事情があって、夜までおじさんちで預かることになってて」
「ふーん」
大和と紹介された少年を見ると、親戚ということもあって、目のあたりや真っ黒の髪質はすずめによく似ていた。
「なんだよ、すずめの彼氏?よろしくな」
「ああ、よろしく」
話し方が大人びて、背は割と高いが、顔つきは幼く見える。
意外ではあるが、大輝は弟がいることもあり、子どもはそんなに苦手ではない。
ただ、子どもだからと言って媚びを売ったような態度は出来ないが。
大輝がすずめの部屋に行くと、そわそわと大輝を伺うような大和に、ふと大地の同じ頃を思い出す。
それは、大輝にとっても嬉しくはない記憶で、今でも胸が詰まるように感じた。
早くゲームがしたかったのか、大和はすずめが来るまでは暇な様子で、近くにあったすずめの携帯を勝手に操作した。
着信は、これのせいか…。
「こら、人の物勝手にいじるなよ」
「む〜いいじゃん!ゲームしたい」
「だったら、すずめにちゃんと聞いてからにしろよ?」
「分かったよ…」
手に取った携帯を机の上に戻すと、手持ちぶたさだったのか、それとも誰かに聞いて欲しかったのかは分からないが、大和はポツポツと話し始めた。
「だいき…俺、お父さんいないんだ…」
突然の話ではあったが、何となくではあるが予想していた通りだった。
「そうか…寂しいか?」
「ううん。お母さんがいるもん」
「俺には母親がいない。けど、やっぱ、寂しくはないな…。おまえと一緒だな」
大輝の言葉に、一瞬驚いたように目を丸くするが、大和は顔をクシャクシャにて笑った。
*
両親が離婚した直後、大地は心に問題を抱えた。
まず、1人で夜眠れなくなった。
夜中に何度も起きるようになった。
そして笑わなくなった。
父は仕事をしながら、3兄弟の面倒を見たが、家事と仕事の両立に必死で、大地の心の問題にまでは気が回らなかったのだろうと、今になってみれば分かる。
だが、両親の離婚による、子どもの心のケアは非常に重要だ。
中学生だった大輝にも、そのことは心に穴が開くような出来事だったが、弟を守らなくてはならないという大義名分のおかげで、兄と自分は立ち直れたぐらいなのだから。
なぜ、そんなことを今更思い出したのだろうと、目の前で笑う大和を見る。
あぁ、そうか。
似ているんだ。
大地に。
母親に捨てられたという事実を受け止められなくて、必死に愛情を求めていた。
悪戯をしながら、どこまでなら許してくれるかを試している、伺うような目。
事情を少し聞いたぐらいでは、大和の気持ちは分からないが。
この小さな体でも、色々と思い悩むことがあるのだろうと思う。
*
何度も何度も人生ゲームをやり直し、やっと大和が勝ったところで終わった。
大輝のことが好きになったらしい大和は、夕食前に絶対にまた遊んでと大輝の腕をギュッと掴んだ。
そして、諭吉も仕事から帰り、大輝と大和と共に夕食を囲っていると、玄関のチャイムが鳴った。
「あっ!お母さんかも!?」
よほど、嬉しかったのか、食事中にも関わらず玄関に走る大和に、諭吉も立ち上がり玄関に向かう。
「大和〜!遅くなってごめんね!すずめちゃんの言うことよく聞いてお利口にしてた?」
母親はドアを開けるなり、大和の頬を包み込むと目と目を合わせ、じっと見つめた。
「うん。お母さん…急患の人大丈夫だった?」
「大丈夫よ。お母さん腕利きのお医者さんだもん!」
どうやらシングルマザーで、医師として働いているらしいが急患が入り、日曜日の今日はどうしても預け先がなかったらしい。
「熊本さんも、ありがとうございました」
「いえいえ、俺は何もしてませんから」
普段から忙しい母親を見ているからだろう。
大和は母親の前では、途端に大人しくいい子を演じていた。
「すずめ、大輝またね」
そして、靴を履いて出て行こうとする大和に、大輝が母親に聞こえないように耳打ちする。
「おまえさ…母親にもっと我儘言えよ?我慢すんな。まだ子どもなんだから」
大輝は、優しく頭をポンポンとする。
隣で見送っていたすずめは、恥ずかしそうな大和をギュッと抱き締めると、おでこにキスをした。
「大和、大好きだよ。また遊びに来てね」
大輝×すずめ。最近花より男子ばっかり書いてたから、すずめがつくしになってたりしたらごめんなさい(笑)
13巻発売記念に(^-^)
***
【優しいキスをして】
ピピピピ…
大輝が自室で勉強していると、珍しくすずめからの着信が入った。
高校を卒業し、同じ大学の別の学部に進学した2人は、時間が合えば帰り待ち合わせをして帰ることも多く、高校時代とはそう変わらない付き合いが続いている。
それでも、夏休みの今は課題に追われていて、週に一度くらいしか会えていない。
猪突猛進タイプのすずめは、会いたいと思えば電話もせずに会いに来るから、約束が意味をなさない場合が多い。
元々、外出が好きというわけではない大輝だったが、用事がない日にほとんど家にいるのは、すずめのためと言ってもよかった。
そんな珍しいすずめからの電話に驚くのと同時に、もちろん嬉しさもあって、すぐに出ようとするが、1コールで電話は切れてしまう。
なんだ…?
そして、待つこと1分。
再度着信、もしくはメールがあると思っていた大輝は肩すかしを食らう。
何だったんだ?
すずめからの電話が気になってしまい、勉強が手につかなくなってしまった。
はぁとため息を吐くと、荷物をまとめ出掛ける準備をする。
たまには、俺が会いに行ったっていいよな。
***
「こらっ!大和〜何してんの!?」
「べーつに。ちょっと見てただけだよ!」
「ほら、返して!」
諭吉のマンションで、携帯の取り合いをしているのは、すずめと名を大和と言う、すずめの従兄弟にあたる親戚だった。
どうやら、親には禁止されているスマホゲームをすずめの携帯でやろうとしたらしい。
家庭の事情があり、今日、諭吉が預かることになった小学2年生の大和だが、諭吉も仕事を休むわけにはいかずに、すずめが面倒をみることになった。
すずめにとっては、気の置けない相手であることから、迷惑よりも、たまにしか会えない大和と遊ぶのは嬉しいことだ。
2人で、人生ゲームをして盛り上がっていると、玄関のチャイムが来客を告げる。
「あれ、誰だろ?おじさん…じゃないよね。大和、ちょっと待っててね」
「うん。早く戻ってこいよ」
玄関のドアを開けると、顔を赤くした大輝が外に立っていた。
「大輝!?どうしたの?顔赤いし…」
「炎天下の中走りもすれば、赤くなるだろ…。あっちい。てか、どうしたのって、おまえ、さっき俺に電話しただろ?」
「えっ?ああっ!あれ?大輝に掛けちゃったんだ!?ごめん!ちょっと今ゴタゴタしてるんだけど、良かったら上がって?」
「ゴタゴタ?」
すずめの言葉を受けて、大輝の頭にたくさんの疑問符がわくと、甲高い子どもの声が大輝の言葉を消した。
「すっずっめえっ!!」
「!?」
「あ、ごめん。電話の犯人はコイツ。大和っていう父方の従兄弟なんだ…。ちょっと事情があって、夜までおじさんちで預かることになってて」
「ふーん」
大和と紹介された少年を見ると、親戚ということもあって、目のあたりや真っ黒の髪質はすずめによく似ていた。
「なんだよ、すずめの彼氏?よろしくな」
「ああ、よろしく」
話し方が大人びて、背は割と高いが、顔つきは幼く見える。
意外ではあるが、大輝は弟がいることもあり、子どもはそんなに苦手ではない。
ただ、子どもだからと言って媚びを売ったような態度は出来ないが。
大輝がすずめの部屋に行くと、そわそわと大輝を伺うような大和に、ふと大地の同じ頃を思い出す。
それは、大輝にとっても嬉しくはない記憶で、今でも胸が詰まるように感じた。
早くゲームがしたかったのか、大和はすずめが来るまでは暇な様子で、近くにあったすずめの携帯を勝手に操作した。
着信は、これのせいか…。
「こら、人の物勝手にいじるなよ」
「む〜いいじゃん!ゲームしたい」
「だったら、すずめにちゃんと聞いてからにしろよ?」
「分かったよ…」
手に取った携帯を机の上に戻すと、手持ちぶたさだったのか、それとも誰かに聞いて欲しかったのかは分からないが、大和はポツポツと話し始めた。
「だいき…俺、お父さんいないんだ…」
突然の話ではあったが、何となくではあるが予想していた通りだった。
「そうか…寂しいか?」
「ううん。お母さんがいるもん」
「俺には母親がいない。けど、やっぱ、寂しくはないな…。おまえと一緒だな」
大輝の言葉に、一瞬驚いたように目を丸くするが、大和は顔をクシャクシャにて笑った。
*
両親が離婚した直後、大地は心に問題を抱えた。
まず、1人で夜眠れなくなった。
夜中に何度も起きるようになった。
そして笑わなくなった。
父は仕事をしながら、3兄弟の面倒を見たが、家事と仕事の両立に必死で、大地の心の問題にまでは気が回らなかったのだろうと、今になってみれば分かる。
だが、両親の離婚による、子どもの心のケアは非常に重要だ。
中学生だった大輝にも、そのことは心に穴が開くような出来事だったが、弟を守らなくてはならないという大義名分のおかげで、兄と自分は立ち直れたぐらいなのだから。
なぜ、そんなことを今更思い出したのだろうと、目の前で笑う大和を見る。
あぁ、そうか。
似ているんだ。
大地に。
母親に捨てられたという事実を受け止められなくて、必死に愛情を求めていた。
悪戯をしながら、どこまでなら許してくれるかを試している、伺うような目。
事情を少し聞いたぐらいでは、大和の気持ちは分からないが。
この小さな体でも、色々と思い悩むことがあるのだろうと思う。
*
何度も何度も人生ゲームをやり直し、やっと大和が勝ったところで終わった。
大輝のことが好きになったらしい大和は、夕食前に絶対にまた遊んでと大輝の腕をギュッと掴んだ。
そして、諭吉も仕事から帰り、大輝と大和と共に夕食を囲っていると、玄関のチャイムが鳴った。
「あっ!お母さんかも!?」
よほど、嬉しかったのか、食事中にも関わらず玄関に走る大和に、諭吉も立ち上がり玄関に向かう。
「大和〜!遅くなってごめんね!すずめちゃんの言うことよく聞いてお利口にしてた?」
母親はドアを開けるなり、大和の頬を包み込むと目と目を合わせ、じっと見つめた。
「うん。お母さん…急患の人大丈夫だった?」
「大丈夫よ。お母さん腕利きのお医者さんだもん!」
どうやらシングルマザーで、医師として働いているらしいが急患が入り、日曜日の今日はどうしても預け先がなかったらしい。
「熊本さんも、ありがとうございました」
「いえいえ、俺は何もしてませんから」
普段から忙しい母親を見ているからだろう。
大和は母親の前では、途端に大人しくいい子を演じていた。
「すずめ、大輝またね」
そして、靴を履いて出て行こうとする大和に、大輝が母親に聞こえないように耳打ちする。
「おまえさ…母親にもっと我儘言えよ?我慢すんな。まだ子どもなんだから」
大輝は、優しく頭をポンポンとする。
隣で見送っていたすずめは、恥ずかしそうな大和をギュッと抱き締めると、おでこにキスをした。
「大和、大好きだよ。また遊びに来てね」