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オダワラアキ
オダワラアキ
novelistID. 53970
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優しいキスをして

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誰かが、自分のことを大事に思ってくれている。
そう思うだけで、人は強くなれる。
それを知ってか知らずか、すずめは大和が大事だと伝える。

そう、大地が心に傷を負った時、兄は大地を抱き締めて言ったのだ。
大地のことが、大事だと、大好きだと。
母親がいなくなった日を境に、笑いもせず、泣きもせずだった大地が、その時初めて兄の胸で咽び泣いた。





食事も終わり、すずめの自室に戻ると、大和がいなくなった部屋は、いつもどおりであるはずなのに、シンと静まり返っている気がした。

「男にキスすんなよ」

隣に座った大輝にボソリと言われ、すずめはカァァッと頬を赤く染めた。

「男って…小学生だけど…」
「ダメ。しかも、大和ばっかり構いやがって」
「大輝…。なんか、子どもみたい…」
「子どもはこんなことしないだろ?」

大輝は、すずめの額から頬にキスを落とす。
そして、上唇を舌でなぞるように、唇を合わせた。

「んっ……ぁ」

チュッチュッと角度を変えて、深く口付けていくと、すずめが体重を預けるように大輝にもたれかかる。

「はぁ…ん」

唇を離すと、互いの口から唾液が糸を引く。

名残惜しそうに潤んだ瞳で大輝を見るすずめに、これ以上側にいるとマズイことになると、身体を離した。

すると、すずめから縋り付くように、大輝の首に腕を回して口付けられる。
すずめの積極的な態度に驚くが、それに応えるように、口腔内を愛撫していった。

こんな日があってもいいかもしれない。

諭吉に知られれば、確実に出禁ではあるが。
大輝は、すずめの腰を強く抱きしめると、彼女の香りに、口付けに、愛しさが溢れ出す。

好きだと、愛していると思って結婚しても、別れが来ることがある。
それを知っているから、願わずにはいられない。

すずめとの出会いが運命でありますように。
こんなにも自分にとって大事な人が、運命の人でありますように。
明日も明後日も、離れることなくずっと側にいられますように。

いつもどおりの、優しいキスをして。


fin
作品名:優しいキスをして 作家名:オダワラアキ