機動戦士ガンダムRSD 第7話 混迷の大地
「訓練規定だったな」
シン中尉は、忘れていた。
「ええ、どうせなら外の方が気持ちいいって。
でも調子悪いわ」
ルナマリア少尉は、がっかりしたように言った。
シン中尉は、レイ少尉の視線に気づいたがすぐにレイ少尉は射撃訓練を再開した。
ルナマリア少尉も再開しようとしたとき何かに気付いた。
「交代する?」
ルナマリア少尉がシン中尉に提案した。
「うん、そうしよう」
そういうとシン中尉は、射撃立ち位置まで歩き始めた。
「本当に私達みんなにとって貴方は、憧れなの」
ルナマリア少尉は、強化眼鏡を外すとシン中尉を期待の目で見て言った。
シン中尉は、ルナマリア少尉の言葉に驚いた。
「地球軍、元クルーゼ隊所属のアスラン・ザラ少将やキラ・ヤマト大佐の再来。
戦争中盤では、最強と言われたガンダムサイガーをあと一歩まで追い詰め、その後精鋭部隊である外郭艦隊旗艦エターナル所属。
GAT-X01A、フリーダムは大破したけどGAT-X09A、ジャスティスは終戦まで無傷。
そんな人たちと肩を並べられてうれしいでしょ?」
ルナマリア少尉の言葉は、シン中尉に重く重圧としてのしかかった。
「アスラン・ザラの方は、すごいわ。
普通のコーディネイターなのにあんな化け物と互角に戦えるなんて。
もちろんス−パーコーディネイターであるキラ・ヤマトもね」
ルナマリア少尉の言葉にシン中尉は、どう答えていいか分からず困ってしまった。
「射撃の腕もかなりものと聞いてるけど?」
ルナマリア少尉は、そういうと立ち止まっていたシン中尉に拳銃を出した。
メイリン曹長は、妙な雰囲気に目を離せなかった。
レイ少尉は、しばらく2人を見ていたがすぐに射撃訓練を再開した。
マユ少尉も射撃訓練をしようとデッキにある射撃訓練所前まで歩き2人に気付いた。
「お手本を見せてよ。
実は、あんまり上手くないの」
シン中尉は、微笑むと拳銃を受け取った。
そして消音用のヘッドホンと強化眼鏡をつけずに上級訓練開始ボタンを押した。
シン中尉は、全神経を集中させた。
そこにマユ少尉も来た。
その訓練は、瞬時に的が現れるのでその的の頭部か心臓を撃つ訓練である。
シン中尉は、見事心臓或いは頭部のど真ん中に当て続けた。
その腕前にルナマリア少尉は、圧倒されていた。
中間結果は、完璧であった。
その結果にマユ少尉も圧倒された。
「すごい、同じ銃撃ってるのになんで?」
ルナマリア少尉は、不思議がった。
「銃のせいじゃない。
ルナは、トリガーを引く瞬間に手首を捻る癖がある。
だから着弾が散ってしまうんだ」
シン中尉は、ルナマリア少尉がなぜ着弾が散るか理由を言った。
※
「ケイト中尉とお姉さん2人にあとは、いるのか?」
クーパー中尉とケイト中尉は、お互いの家族構成を聞きあっていた。
「あとは、妹が2人いるの」
ケイト中尉が自分の家族構成を言った。
※
シン中尉は、ルナマリア少尉に拳銃を返した。
「こんなことばかり得意でもどうしようもないけどな」
シン中尉は、そういうとその場を去ろうとした。
「そんなことないわよ。
敵から自分や仲間を守るためには必要よ」
ルナマリア少尉は、シン中尉に反論した。
「俺たちの両親は、そんな拳銃では護れなかったよ」
シン中尉は、立ち止まり悲しそうに言った。
その言葉にルナマリア少尉は、失言してしまったと後悔し顔を伏せた。
シン中尉は、射撃訓練所を去った。
※
「娘ばかりで且つ大家族なんだな。
男の子は、産まれなかったのか。
それで妹は、どんな子なんだ?」
クーパー中尉がケイト中尉に妹について質問した。
「妹たちは、普通かな。
すごくしっかりしてて頼れるかも」
ケイト中尉は、鼻を高くしていった。
「それは、ケイト中尉がしっかりしてなくて頼りないからだろ?」
すかさずクーパー中尉が突っ込みを入れた。
「おかしいな。
遊撃艦隊の時は、それなりに頼りにされてたのに」
ケイト中尉は、不思議に感じていた。
※
リーンホースJr.内の廊下をサイジョウ元帥が歩いているとデッキで1人地平線の向こうを見つめるサオトメを見かけ隣によった。
「嵐が来るんだな」
サイジョウ元帥は、サオトメの背中を見た瞬間にそう確信した。
「はい」
海は、時化ており時折大きな波が発生していた。
それが巨大な嵐が来る前兆に見えた。
作品名:機動戦士ガンダムRSD 第7話 混迷の大地 作家名:久世秀一