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いつも通り、比企谷八幡の理屈は曲がっている

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「や、やっはろー」
「お、おう。」
「なんでこんなことしなきゃいけないんだよ……」
「がんばろうね、八幡!」
 
 
 今俺が顔を合わせているのは、由比ヶ浜、川なんとかさん、そしてわれらが天使、戸塚の三人だ。俺と戸塚が机を合わせて横に並び、その向かいに同じようにして由比ヶ浜と川坂さんが座っている。
 
 なぜこんな奇妙な組み合わせでいるのかというと、今は国語の授業中で、『これからの女性の社会的立場』というテーマで議論をすることになっているのだ。そして、その組み合わせで偶然こんなメンバーの集まりになってしまったというわけだ。
 
 
 それにしてもなんだよこの組み合わせ……。エンジェル戸塚がいるのは、超ハッピーでうっはうはなんだけど、由比ヶ浜と川佐藤さんの組み合わせって。スクールカーストの最上位と最下位じゃないですか。いうなれば一国の王様とそこら辺の一村人が同じテーブルに座って食事をしているようなものだ。微妙な空気になること必至である。
 ってあれ、俺もスクールカースト最下位だっけ?人のこと言えなかったな。テヘペロ。
 
 というか一つの班にぼっちが2人もいるじゃねーか。マジでなんだこのグループ。まあでも戸塚がいるから超ハッピーだけど。あれこれさっきも言ったっけ?まあいいや戸塚マジ天使。



「じゃあ、各自でてきとーに議論してくれー。白熱した議論になることを期待してるぞ。レディー、ファイ!」
 
 国語教師であり、生活指導の担当である平塚先生が、俺たち生徒に向かって指示を出した。
 
 この人今てきとーって言っちゃったよ。しかもすげーだるそうに椅子に座って、教卓に頬杖つきながらだし。よくその直後にドヤ顔で白熱とか言えたな。あんた少年漫画に影響されすぎなんだって。しかもちょっと古いやつ。レディーファイとかいまどき言わねーよ。
 
 
 このばりばり昭和臭のする女教師を見ていると、見ているこっちが少し恥ずかしくなってくる。しかしこの年で思いっきり自分を出しているところは、男前だなーと、少しかっこいいとも思えてしまう。

 
 
 しかしこの、『これからの女性の社会的立場』ってテーマはどうなんだろうか。
 すでに女性議員という形で政治にも女性は進出しているし、いまさらこれを高校生が話し合ったところで、社会にどう影響が出るということもないだろう。たかが高校生が、評論家が考えもつかないようなことを言えるはずもない。
 
 まあ、「自主的に考えることが大事」ということなんだろう。そう考えると、無難なテーマを選んだものだと思った。いかにも高校の授業で取り上げそうなものである。まあ、このアニメ大好き教師が、『イヴァンゲリオンにおいてなぜ使徒と人間は戦うのか』、とかのテーマを選ばなかったことを考えれば、上出来なテーマ選びだ。
 


「それじゃあ始めよっか」
 
 由比ヶ浜がまず口を開いた。
 このグループでのスクールカーストを考えれば、当然だろう。

「でもその前に一つ聞きたいんだけどさ、『女性』の中にニューハーフって含まれるのかな?」
 由比ヶ浜は小首を傾げて、うーんと考え込むしぐさをする。
 
 ニューハーフ!?
 その発想はなかった……。さすがはガハマさんだ。おバカはたまに常人では思いもしないような突拍子もないことを言う。
 
 さっきの評論家の話は、前言撤回だ。いきなり一高校生が、評論家が考えもつかないことを言ってのけてしまった。この発言にはベテラン評論家もびっくりだろう。目玉は飛び出さないまでも、入れ歯なんかは飛び出しちゃうかもしれない。
 
「ニュ、ニューハーフはこの場合の『女性』には含まれないんじゃないか?」
 
 このテーマでの論点はそこじゃないとは思ったが、とりあえず由比ヶ浜に俺が答える。

「えー、なんでー?だって最近はすごいきれいなニューハーフの人だっているよ。そこらへんの女優さんよりきれいな人だっているじゃん」
 
 ぷーっと頬を膨らませながら、由比ヶ浜が俺に反論してきた。
 
 
 お前の人を女とみなす判断基準はきれいかどうかなのかよ。じゃあそこらのおばちゃんたちはみんな男なのか。だとしたら地球にいるのって男ばっかじゃねーか。僕そんなの嫌だよ。
 
 おっとマダムたちに対して失礼なことを言ってしまった。ご無礼をお許しくださいマダムたち。いまのはほんの千葉ジョークですよ。はっは。


「確かに最近のニューハーフの人ってきれいだよね。言われないと男の人だってきづかないこともあるし」
 
 戸塚が由比ヶ浜に話を合わせた。戸塚優しいなー。
 また戸塚のいいところを発見してしまったと思って戸塚を見ると、はっと俺は重大な事実に気が付いた。
 
 
 もし由比ヶ浜のいう、きれい=女性という方程式を認めれば、きれいな戸塚は女性ということになる。てゆーか戸塚が女性じゃなかったら逆に誰が女性だって言うんだ!
 
 思わず興奮してしまった。戸塚のこととなると俺はすぐこうだ。落ち着け、俺。そして冷静に考えろ。
 
 きれい=女性。戸塚=きれい。……もうお分かりいただけただろうか?
 
 これは数学でいう、A=B、B=C、それならばA=Cであるというように、これらの前提を用いれば、戸塚=女性という解が導き出せるのだ!つまり俺は、合法的に戸塚と付き合えるということになる! Q.E.D!
 

「ん? どうしたの、八幡?急にそんな嬉しそうな顔して?」

おそらく心中の喜びが顔に出ていたのだろう、戸塚が顔を少しこちらに寄せ、俺の顔を覗き込むようにして尋ねてきた。

「い、いや、なんでもない。議論を続けよう」
 
俺は頑張って顔のにやにやを収めて、真顔を作って言った。
 
あぶないあぶない。おもわず喜びのあまり、戸塚のハートをゲットだぜ!とか言ってしまうところだった。そんなこと言ったら戸塚に変なやつだと思われてしまう。

「急ににやけるなんて、気持ちわる……。あたしはなんでこんなのに……。」
 
 俺に暴言を吐いてから、川佐原さんがなにやらごにょごにょ言っていた。こころなしか顔がほんのり赤いように見える。熱でもあんのか?

「き、気持ち悪いとか言うなよ。んで、なにを話してたんだっけ?」
「もー、ヒッキーやる気あんのー?だから、ニューハーフは『女性』かどうかだよ!」
「悪い、そうだったな」

 一応謝りはしたが、由比ヶ浜にやる気あんの、なんて言われたくはない。
 お前のやる気は変な方向を向いてんだよ。やる気方向音痴か。
 
「僕は、ニューハーフは女性には含まないでいいと思うなー」

 戸塚が議論を再開させる。

「えー? さいちゃんもかぁ。どうして?」
「うーん、やっぱり男として生まれたからには、男らしくいたほうがいいっていうか、男らしくいたいというか……」

 由比ヶ浜の質問に対して、少し照れながら戸塚が答える。
 
 今のは理由というよりは戸塚の願望のように思えたが、戸塚が言うことはすべて正しいに決まってるから、全然俺は気にしない。

「えと、川崎さんは、どう思う?」

 戸塚から川崎にパスがいった。あ、そうか。川崎か。