二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

記憶

INDEX|10ページ/10ページ|

前のページ
 

 救われなかった鴉
人の心を戻したと言うのに自らの子蘭丸を手に掛け、
完全にその心を彼岸に飛ばしてしまった哀れな鴉
 彼に追い打ちをかける訳ではない、ただ……
その時にもう、お前が話してくれたように信長に斬られ、いなかったお前に一つの話を伝えよう。
 三百年前の“事件”の顛末を。
 鴉、お前が心優しき子と言い人の心を戻す切っ掛けとなった己の、
 お前の子は、一度その時に死んでいるんだ。
 お前が最後まで憎んでいただろう男を強く思いひたすらに愛し。
 だから、その男のために死んでいった。
 今から丁度三百年前、天凶十年
 洋方太歴は一五八二年、時は……その時、六月の始めだった。
 そして鴉、お前にとっては更に苦痛で皮肉な話かもしれないが、
 お前が思った以上に天魔はお前の子供を愛していた。
 「……だから俺達は今こうして、あの時からの生を繰り返し、三百年の時を経て戦いを続けていた。」
 「あの男……鴉……いや烏丸は、思う通りに生きたのだろうな。だから……」
 俺は最後まで奴等の戦いを見なかった、と呟きゴエモンは口籠る。
 「ええ」
 ……だからここには鴉も蘭丸も信長ももういない。

 天魔……覇王信長とそれに従う者は倒れ、“大いなる戦い”は終わった。
 しかし、戦鬼達にはそれぞれの明日がある。
 希望を失くした民の為に未来を築かんとする者、今は未熟ではあるが忍の道を究めんとする者、遠く離れた故郷に戻り、平凡ではあるが幸せな日々を再開する者達……
 そして、天火・一右衛門と天明・孔凰
 ゴエモンと鳳凰には征かねばならぬ明日があった。
 「……行きましょう。貴方も追われる身。貴方を未だに追う赤い髪の者がやって来る。」
 「ああ……お前とはまたいつか会えたら良いな。お前は……」
 「戦い続けますよ、俺は。」
 さようなら、鴉
 さよなら、愛し合った者達。
 すっと鳳凰は立ち上がった。
 背にした黄金城は二度と振り返らない。
 ……この大いなる戦いの幕が下りても
   この世の全ての魔を断つ為に。

作品名:記憶 作家名:シノ