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緑と傍らの鷹

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 もし季節が真逆であったのならば、さぞ爽やかで涼しかっただろうに。
 冬となった。
 雨除けが施される以外は前後左右が全開となっている渡り廊下に、凍てつきの木枯らしはびゅんびゅんと容赦なく吹き付ける。
それを意に介さずに、或いはその身を苛む、本来であれば耐え難い寒さを忘れ去っているのかも知れない。
そう言った風情で、薄色の髪の美少女……桃井は駆けている。
息を切らすその姿をちらと見る者、談笑をしながらゆっくりと歩く女子生徒達を当たらないようにと避けながら渡り廊下を超え、その先の別棟へ。

 次の試合までは既にもう数日の間を空けるのみとなった今、桃井が今走る原因……ある事項の伝達は、時間的な意味で無駄な行為ではあるだろう。
何より彼等常勝不敗の帝光中バスケットボール部員と、その中で特に一際、赤と青と紫と黄と……の。
さながら綺羅星のように輝くスターティングメンバー達と、それらを引き立たせる黒のシックスマンは、桃井はおろか例え監督が一言の指図を行わずとも、与えられた全ての試合を遊戯のようにいともた易くこなしている。このように実力的にも精神的な意味でも彼等キセキに彼女からの助言は不要で無駄な事だ。
しかし彼女は走る。
同学年の主将と監督に目を掛けられ、私がチームスタッフのトップ、と言う自負心はその胸に抱いていたし、だからこそ考慮し計算し導いた、マネージャーとしての情報を部員……特に。
次の試合で確実に出る六名には必ず伝えなければいけない。
 プライドと、何よりも強い責任感が桃井を動かしていた。
作品名:緑と傍らの鷹 作家名:シノ