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ぐらにる たまご

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ニールは優秀なフードコーディネーターで、マイスターという称号まで冠せられている。で、そのニールが結婚した相手が、所謂ところのライバル会社の執行役員で名前はグラハム。彼自身もフードコーディネーターとして世界中を飛び回っていたが、功績を認められて現場を離れて、現在はデスクワークが本業だ。だが、まあ、習性というものは一生治らないもののとされている。

 予定は未定な妻だが、一応、帰宅予定というものは、グラハムも教えてもらっている。たまにアクシデントで二、三日遅れることはあるが、その程度だ。今回は四日しても連絡がない。メールをしても返事がない。たぶん、衛星通信も届かない場所での仕事なのだろう。そういうこともある。あるが、さすがに焦れてきた。三ヶ月ばかりニールは留守をしているので逢いたくてたまらないからだ。
 そこへメールが飛び込んできた。相手は、件のお姫様で、「すまん、アクシデントで十日ばかり遅れる。」 という素っ気無いものだった。十日? グラハムは明日から十日間の休みだ。グラハムとニールの取り決めで年に二回だけ必ず、一緒に過ごす日を決めている。その日が二日後だった。そのためにグラハムも休暇を取るために、しゃかりきになって働いた。その結果が、これでは腹が立つ。メールが届いたのだから、こちらからも届くだろう。返信を乞う、と送ったら、電話だ。
「すまない、グラハム。少しアクシデントが大事で時間がかかる。約束を守れなくてすまない。・・・いや、大したことはないんだ。ただ場所も悪いし時間がかかりそうなだけだ。ほんと、ごめん。この埋め合わせは必ず、必ずするから。」
 と、一方的に叫んで切れた。それからは繋がらない。そして、その声音だけで、これは何事かあったのだな、と、気付いた。なんせ、ニールの声真似をして電話してきたのは、ニールの双子の弟だったからだ。すぐに別のダイヤルをする。
「すまないが、刹那・F・セイエイか、ロックオン・ストラトスの現在の居場所または現在のミッションを調べてくれないか? 居場所が知れると有り難い。・・・いや、これはプライベートな案件だ。それと場所が遠ければ、私のスサノオの発進準備も頼みたい。もちろん、これもプライベートなので経費は私個人が持つ。」
 持つべきものは、信頼できる仲間だ。グラハムは、以前はニールと同じ仕事をしていたからチームひとつを持っている。今はデスクワークが大半だが、たまに自分でも捕獲に出向いたりはしている。そちらには、ニールの会社に知り合いがあるのが数人居て、なんとはなしに繋がっていたりするのだ。


 たぶん、バレたと思う、と、ライルはティエリアに報告した。一応、兄らしい口調で相手に一言も喋らせずに話は切ったが、夫夫であるグラハムは気付いただろうと思う。
「・・・そうか・・・」
「どうするつもりだ? ティエリア。俺じゃあ、見破られてしまいだぞ。」
「わかっている。だが、まだ動かせるほどには回復していない。」
 はてさて、と、ティエリアが考えていたら、本部からの連絡だ。やはり、スメラギのところへ連絡が入ったらしい。ちょうど刹那が戻っていて、そちらにもバレた。すぐに、こちらに飛んで来るとのことだ。スメラギは、連絡相手には知らせなかったそうだが、時間の問題だ。
「二日ばかりすれば容態は安定する。」
「いや、安定しても、すぐには動けないだろ? そろそろ情報をグラハムにも知らせてさ。」
「ダメだ。その間、ロックオンも動けなくなる。」
「いや、グラハムは俺のことを知ってるし、今までもバラしてないから、俺が動いても問題は発生しない。・・・・次のミッションは俺が行く。」
「ダメだ。おまえでは、あのミッションは・・・」
「フリーランスでやってた俺を舐めるなよ? 今回だって、あんたの代わりにやっただろ? 動揺してるあんたよりは、俺のほうがマシだ。刹那が着たら報告して交代する。次に、あいつらがやりやがったら凹な? 」
 ロックオンたちの会社には、いわば子会社というか別会社がある。そちらと獲物がかち合って妨害された。その妨害の余波でニールは負傷したのだ。すぐに休暇だったライルに連絡して、ミッション自体はクリアーしたのだが、負傷したニールは動けない状態だ。
「まさか、ここまでするとは・・・」
「必死だったんだろ? オーナーには抗議しておいたから、今後はないんじゃないか? 」
「・・・わからない・・・」
「とりあえず、ロックオンが動く。それだけで、あちらさんにも牽制になる。いいな? ティエリア。」
「・・ああ・・・」
 神出鬼没、神速のマイスターロックオン・ストラトスは二人居る。というのは、会社でもマイスター実働部隊とオーナーしか知らない。別会社は知らないから、負傷したはずのロックオンが動いていると分かれば、それなりに警戒はするはずだ。



 三時間で刹那が到着した。このスピードだとエクシアではなくダブルオーを使ったらしい。事情をティエリアから聞きだすと大きな溜め息をついて、携帯端末を操作した。
「グラハムか? すまない、ニールが負傷して動けない。・・・・場所は・・・ああ・・・端末へデータを送る。命に別状はないんだが、血液洗浄に手間取っているんだ・・・・」
 刹那は、ニールが毎年、同じ頃に休暇を取っていることを知っているし、その日が何かも知っていた。だから、相手が休暇を取っているはずだとも思っていた。
「リボンズのほうは俺が対処する。・・・・それから、こういう場合の小細工は必要じゃない。ニールの亭主は、実戦経験豊富な男だ。こちらのアクシデントについては問わない。」
「だが、刹那。」
「おまえのミスではない。ニールのミスだ。おまえを庇うから、こ
んなことになった。・・・・おまえもニールだと頼っていたな? 」
 ずばり言い当たられて、ティエリアも絶句する。最近は、ライルのロックオンと組んでいたから、久しぶりのニールとのミッションで甘えていたのだ。そこいらを指摘されるとぐうの音も出ない。ニールなら、こちらが主導権をとってもフォローしてくれるからと甘えていたのは事実で、周囲の警戒を怠ったのはティエリアだ。捕獲対象は海蛇の卵。卵胎生なので、体内に卵を抱いている。だから、産卵前の、この時期に罠を仕掛けて集めた。その網のひとつを破壊され、飛び出した海蛇に攻撃されてニールがティエリアを庇った。ウェットスーツを着用していたので、庇われたティエリアは咬まれなかったが、ニールは何箇所か咬まれ、そのまま船上に保護したままのティエリアを引き摺り揚げて港に戻った。ライルに連絡してミッションの引継ぎまでしてくれて、ばったりとダウンしたのだ。もちろん、他の罠は、あちらに奪われた。海蛇の毒は猛毒で血清がない。対処療法で、なんとか毒は排出しているが、まだ意識は、はっきりしない状態だ。奪われたブツは刹那が手配して、強奪予定だ。そちらはアレルヤとマリーに任せてある。
「とりあえず、ロックオンのミッションは俺が引き継ぐ。刹那、悪いけど、後を頼めるか? 」
「ああ、任せておけ。」
作品名:ぐらにる たまご 作家名:篠義