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ぐらにる たまご2

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 ニールは二日後に退院した。何かあっても問題のないように近くのホテルに滞在することにした。これといって用件はないし、なるべくは安静に、と、ドクターからも言い渡されたので、大人しくしている。ホテルのビーチサイドで、デッキチェアに寝転がって、トロピカルなカクテルなんぞ、ちゅーと吸い上げていた。亭主が、ちょうど席を外していたのだが、隣りに人影だ。もう戻ったのか、と、横を向いたら、とんでもないのが立っていた。
「ごきんげんよう、ニール。」
「ごきげんよう、リボンズ。どうした? 俺に文句のひとつでも吐きに来たか? 」
 相手は、件の強奪グループのトップだ。刹那がブツを強奪したはずだから、抗議でもされるのかと思ったが、そうではないらしい。ガラスの瓶に入ったものを差し出された。
「タマゴだ。まだ産卵されて間もないものを選んで焼いてオイル漬けにした。これなら栄養価も高いので、今のきみでも食べられるだろう。・・・・すまない、具合はいかがだろうか? 」
 真っ白で小さなタマゴが詰め込まれた瓶を手渡された。確かに、これは滋養のクスリでもある。起き上がって、リボンズの顔を、しげしげと眺めたら、ちよっと困ったように笑っている。
「毒は排出したから問題はないはずだ。まあ、ちょっとふらついてるから、ホリデーを満喫中だよ。・・・・俺はいいけど、あの強奪方法はいただけないぞ? 本来はティエリア単独のミッションだったんだからな。怪我したら、どーしてくれる? 」
「すまない、うちのものが強引すぎたようだ。」
「ブツは? 」
「きみのところの暴れん坊たちに取り戻されたよ。まあ、うちのものには、いい薬になっただろう。ちょっと怖がらせて、うちに移籍するようにする、と言われてたんだ。まさか、こんなことだとは思わなかった。きみがいてくれた助かった。このタマゴは別口で用意したものだ。海蛇ではなくてマムシという陸蛇のものだ。」
 ティエリアはリボンズとは親戚関係にある。本来は、リボンズたちの会社に所属するはずだったが、少し外部で経験を積ませよう、と、オーナーがティエリアをマイスターとして、ニールたちの会社に入れた。そろそろ戻ってもいいのだが、ティエリアが頑として拒否するので、リボンズも残念に思っていたのだ。
「こっちの水が性に合ったんだから、それは諦めてくれ、リボンズ。うちもティエリアを手放すのは痛い。」
「わかってはいるんだが、少々残念でね。きみも、うちに来ないか? ニール。それなら移籍してくれると思うんだ。」
「・・・・それ、刹那の前で言ったら凹にされるぞ? 一回やられて懲りたんじゃないのか。」
 ティエリアはマイスターチームが気に入っている。マイスターとして育ててくれたニールが大好きだし、今のチームのメンバーが大好きだ。だから、以前、強引に取り戻そうとリボンズが画策したら、バレてリボンズは刹那にボコボコにされたことがある。
「あははは・・・あれは参ったよ。殺されるかと思った。・・・・まあ、諦めてはいるんだけどね。うちのものは、そうは思っちゃくれないのさ。」
「あんたは愛されてるからな。」
「きみだって、そうだろ? だいたい、こんなビーチにいるのに水着じゃない段階で、愛されているとしか思えないね。」
 ニールはデッキチェアで寝転がっていたが、アロハシャツにハーフパンツという出で立ちだ。水着になれない理由がある。休暇中の亭主に、いいようにされているからだ。
「・・・・おまえ・・・」
「だって、そうだろ? マイスター全員が、自分のミッションを投げ出して、きみらのカバーに入って、さらに、きみのご亭主は愛機で登場だ。愛されているね? ニール。」
 確かに、そうなのだ。マイスターたちは全員が世界に散らばってミッションをこなしている。それが、ティエリアの不手際が発覚したら、すぐにフォローに入る。チームの団結力なくしては有り得ない話だ。リボンズの会社では、到底、有り得ないことなのだ。
「しょうがないだろ? ティエリアのが優先というか時間がなかったんだ。」
「ああ、聞いているよ。でも、羨ましいとは思うのさ。個人の功績よりもチーム員の仕事を手伝えるというやり方は、うちでは無理だからさ。きみに教育係として来ていただきたいというのも本心だ。」
「お断りだ。」
「そうだろうね。・・・・ニールが、そう言うのが、すでに僕には羨ましいよ。僕も、そちらに移籍しようかな。」
「トップが言うことじゃねぇーだろ? あんたたちのほうが効率はいいはずだぞ? それに、あんたのために無茶するぐらいには、あんた、愛されてるんだからな。そこんところは、うちと一緒だ。」
「そうだった、そうだった。僕のためにティエリアを怖がらせるつもりだったんだ。・・・・おや、ご亭主だ。」
 ものすごい足音が近寄ってきた。振り向いたら、亭主が砂浜をダッシュしている。
「リボンズ、どういう関係にしておく? 」
 リボンズは表立って顔は出していない。だから、素性を知られてはマズイので、ニールが適当なところを考えようとしたら、いやいやとリボンズが手を横に振る。
「きみのご亭主なら、そのままでいいだろう。ライルのこともバラさない義理堅い人だ。・・・あ、ライバル宣言なんて、どうだろうね? ニール。」
「やめとけ。刹那と同じタイプだから、本気にする。」
「きみ、ああいうタイプに好かれるよね? 」
「長年、流されて生きてると、ああいう強引なのが一番、困るタイプなんだよ。どうやっても離れてくれなくて、絆されちまった。」
「なるほど、強引にやるといいのかい? 」
「リボンズ? ほんと、やめて。目がマジすぎて怖い。」
「きみはつれないからね。フリーの時だって僕を袖にしたじゃないか。あの時もっと強引に引き寄せていれば、こうはならなかった。非常に残念だ。」
「いや、あんたんとこのシステムに俺は馴染めないよ。それもあって断ったんだ。イオリアのじーさんも笑ってたろ? 俺じゃあ、おまえさんとは組めないだろってさ。」
 元々、ニールがフリーの時からのリボンズは知り合いで、だから、現在はライバル関係ではあるが、友達でもある。そんなことだから、リボンズもニールには優しいし、わざわざ詫びと見舞いにやってくる。忙しいはずのリボンズだが、ここまで来たなら、それなりの時間はあるのかもしれない。
「今日、時間あるのか? 」
「ああ、一緒に、のんびりさせてもらおかな。」
「夕食、一緒にしようぜ。たまには新しいニュースでも聞かせてくれよ? 」
「ご亭主は怒らないか? 」
「三人一緒にってことなら大丈夫。ルームサービスばかりで飽きてたんだ。レストランで食べたい。どっか、いいところはあるか? 」
「じゃあ、僕が探して予約しておく。どんなものがいい? 」
「ここいらの名物料理。メールくれたら行く。」
「ドレスコードがないほうがいいんだな? 」
「リボンズがいやじゃなければ。たまには手づかみで、バリバリ食ったりしようぜ? そういうのが食の醍醐味だ。」
「それ、予約なんか取れないんじゃないかな。」
「そうかもな。」
作品名:ぐらにる たまご2 作家名:篠義