伝えたい事
「ホワイトユニコーン・・・」
絵のタッチ・・は、忘れる事がない人の手によるものだ。
「この人って何でもできそうだと思っていたけどさ。絵まで描くとは予想外だよ」
ぼやくようなジュドーの言葉を聞いた事までは覚えているが、何と言ってその場を離れたのか、記憶に残っていない。
気が付けば寝室のソファに座り込みテーブルに広げた絵を見ていた。
「キャスバルにいさん・・」
宇宙(そら)に似た藍色の空間に満ちるペールブルーの泉に蹄をひたす白い角を持つ馬に似た生き物とそれを照らす赤い星に、ブライトから聞いた事がある。
白い流星は、ホワイトユニコーンをデザインしたパーソナルマークにしていたとブライトから聞いたので、
「貴方らしいわ」
白いユニコーンはアムロで、赤い星は自分を表したつもりだろうが、いかにも兄らしい思考だと笑ってしまった。
キャンパスに描かれた絵は抽象画と誰もが言うだろうが、セイラ=マス・・であり、アルテイシアでもある自分にとっては違うものに映る。
「2人が戦う理由なんてないって言ったのに、2人共・・人の話をちっとも聞かないで・・、本当にダメな人たち・・・」
私にとっては、portraitだ。
白い空想上の生き物とそれを照らす赤い星が描かれたキャンバスは、遠く離れた場所に居る彼等からのメッセージで、長い時間をかけて届けられ受け取った。
「兄さん・・、アムロ」
絵に向かって呼びかける。
返事はかえってこないけれど・・・
この絵が貴方からの返答なのでしょう?
生きている事を伝えたいと知らせたいと思ってくれたのね。
まだ私達の間にも絆が・・繋がりが残っていると思って良いのね。
「アムロ・・・、兄さん・・」
流すつもりもなく涙が出てきていた。