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主人公惣受け物語~アニポケ・ジョウト編~

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第9話『時をかける出会い』

前書き

時を渡るポケモンが祀られているウバメの森。



サトシ達はこの森を抜けてコガネシティへと向かうのだが…







ここは、ヒワダタウンとコガネシティとを結ぶ道の途中にあるウバメの森。ここは都市を結ぶ道としての役割だけでなく、あるポケモンが祀られていることでも知られている。そのポケモンは時を渡る力を持っている。


セレビィ「ビィ! セレビィ!」


 そのポケモンの名は、セレビィ。幻のポケモンとして知られるセレビィが、こうして姿を現して祠の周りを動き回る光景はかなり稀である。


キィィィィィン!


 すると、祠から突然眩い光が放たれる。やがてその光は祠を包み込み、そこへセレビィが降り立つ。一体、何が起こるというのか…








アイリス「ん〜、気持ち良い空気ね〜」


デント「久方ぶりにこうしたナチュラルなテイストを味わえた気分だよ」


 アルフの遺跡からコガネシティへと向かうサトシ達は、ウバメの森の自然を噛みしめながらウバメの森を進んでいる。


コトネ「ここはジョウトでも自然を感じられる有数の名所。この森にある祠はご利益があるとして、お参りに来る人もいるくらい有名な場所よ」


マリナ「自然が感じられる場所だけあって、生息するポケモンも草ポケモンや虫ポケモンが多いわね」


カスミ「む、虫ぃ!?」


 ウバメの森はジョウト有数の草タイプポケモンならびに虫タイプポケモンの宝庫でもある。読者の皆様はご存じだとは思うが、虫タイプポケモンと聞いて恐れをなす者がここに一名いるのである。


ケンタ「ん? どうしたんだ?」


ハルカ「あぁ、ケンタ達はまだ知らなかったわよね。カスミ、大の虫ポケモン嫌いなのよ」


コトネ「えっ? そうだったの、カスミン」


カスミ「えぇ、まぁ。バタフリーやイルミーゼとか、綺麗な虫ポケモンは大丈夫なんだけれど…」


サトシ「今はマシな方だよ。昔、俺達と一緒に旅をしていた頃なんかもっと酷かったんだぜ」


カスミ「でも今でも、やっぱり虫ポケモンと聞くと身体が震えるわ…」


マリナ「…誰にでも苦手なものってあるものね」


 以前よりカスミの虫ポケ嫌いを知っていた面々は今日に始まったことではないと特に気に掛ける様子はなかったが、初めて聞いたケンタ、マリナ、コトネは一様に驚きを示していた。


アイリス「でももったいないわね。虫ポケモンってよくみたら結構可愛いのに…」


カスミ「ちょっとやめてよ、アイリス」


ヒカリ「…本当に駄目なのね」


 カスミの虫ポケ嫌いについて語られる中、サトシ達は時渡りのポケモンが祀られているとされる森の祠がある場所に到着する。


ケンタ「しかし、いつ来ても神秘的な場所だよな…」


マリナ「実際に遭遇したことはないけれど、時渡りって本当に不思議なことよね…」


デント「この祠は、何とも言えないミステリアスなテイストを漂わせているね」


 祠を前にして、サトシ達は感慨に更ける。セレビィを見かけること自体ごく稀ではあるが、ここにいる面々の中でサトシ、カスミ、ハルカはセレビィに遭遇している。ちなみにサトシとカスミは、セレビィに出会った際に少年期のオーキド博士ことユキナリとも出会っている。


ガサガサガサ…


サトシ「!?」


 サトシ達が祠の前に立っていると、付近の草陰から何かが動く音が聞こえる。音に気付いたサトシ達は、音のする方へと目を向ける。


???「いたたた、ほんとびっくりしたわ…」


???「うぅ〜、森でポケモンを探していたら急にあんなことになっちゃうんだもの…」


 草陰から、何かの拍子に打ち付けたのか腰を抑えながら一人の少年と一人の少女が出てきた。


少女「とりあえず、一旦森から…!?」


少年「あっ、えっと…」


 少年少女は未だ状況がつかめていないせいか、どうしていいのか分からないような素振りをみせる。


デント「とりあえず、落ち着こうか。僕たちは君達に危害を加える気は全くないから安心して」


少女「あっ、はい…」


 デントが機転を利かせて、少年と少女を何とか落ち着かせる。落ち着いた二人は、気を取り直してサトシ達に自己紹介をする。


少女「申し遅れました。あたし、アカリと言います」


少年「僕は、コウマです。幼馴染のアカリちゃんとは一緒に旅をしています」


 少女の名前はアカリ、少年の名前はコウマ。二人の名前が判明した後は、アカリはポケモントレーナーで世界一のポケモンマスターを目指していることが、一方のコウマはポケモンコーディネーターで世界一のトップコーディネーターを目指していることが語られる。尚、サトシ達も各人アカリとコウマに対して自己紹介をしたが、そのシーンはここでは割愛させていただく。


ヒカリ「二人とも、それぞれの目標に向けて一緒に旅をしているのね」


アカリ「はい。とは言っても、コウマ君と旅に出てから間もないので、まだ夢のまた夢ですが…」


コウマ「僕たちは夢を夢のままで終わらせる気はありません。だから、これからレベルアップするためにこうしてアカリちゃんと一緒に旅をしているんです」


ケンタ「じゃあ、俺達と一緒だな」


サトシ「俺達も、それぞれの目標に向かって旅をしているんだ」


ヒカリ「あたし達は大勢で旅をしているけれど、アカリちゃんとコウマ君は二人で頑張っているのね。大変でしょ?」


コウマ「はい。だけどアカリちゃんとは幼馴染でお互いをよく知り尽くしている分、上手くいっていますよ」


アカリ「それぞれの足りないところを補えますし、それに楽しい旅ですよ」


ベル「あたし達よりも年下なのに、しっかりしているわね」


マリナ「何だか、私達も頑張れる気分になるわ。お互いこれからも頑張っていかないとね」


アカリ・コウマ「「はい!」」


 サトシ達とアカリ、コウマが初めて顔を合わせた直後はぎこちない雰囲気であったが、他愛もない会話を通じてすぐに仲良くなれたようだ。ちなみに、アカリとコウマは8歳で、サトシ達より年下ということになる。


デント「ところで、君達はどこから来たんだい?」


アカリ「えっ? あぁ…」


コウマ「えっと…」


デント「?」


 デントがアカリとコウマにどこから来たのかを聞くと、二人とも口を濁してしまう。そんな二人にデントは、頭にクエスチョンマークを浮かべる。自分の身元情報を伝えるのを少々拒んでいるような素振りのアカリとコウマであったが、意を決したかのように口を開く。


アカリ「…みなさん、実は私達」


コウマ「この時代よりも先の時代から来たんです」


 何と、アカリとコウマは未来人であった。何故、未来人のアカリとコウマが過去の時代と言えるサトシ達の時代に迷い込んだのか、大方の見当がつく。


カスミ「未来から来たってことは、セレビィの時渡りを使ったのかしら?」


アカリ「はい」


コウマ「急にセレビィが僕たちの目の前に現れたものだから、びっくりしましたよ。その流れで時渡りをすることになるなんて思ってもみませんでした…」