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絶対に笑ってはいけないLIAR GAME24時

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「葛城先生!? どうしてここにいるんですか?」

 そこへ、次なる参加者が現れる。ちょうどナオと同い年くらいの若い女性だ。名前は篠宮ユウ。葛城の職場である帝都大学の卒業生だ。
 彼女は葛城の講義を受けたことは無かったが、卒業式で首席として答辞を述べていたため、葛城に顔と名前は覚えられていた。

「私にも招待状が届いのですよ」

 そう言って、懐から黒い封筒を取り出す葛城。

「これを見たらまた参加してみたくなったのです」

「また? ということは……」

「お察しの通り、葛城センセーはライアーゲームの経験者。セミファイナルで僕とあそこにいる神崎直ちゃんと戦ったんだ。ちなみにあの白髪野郎はヨコヤノリヒコ。三回戦で僕らに負けた雑魚だよ」

 福永の説明を受けたユウは、ナオとヨコヤを見て会釈する。ナオは屈託のない笑顔を向けてきたが、ヨコヤは表情を変えずに目礼をすると、ユウのもとへ歩み寄ってきた。見た目からして異質なヨコヤの接近に、ユウは思わず身構えるが……。

「福永さん、嘘はいけませんねぇ」

 ヨコヤの狙いは福永であった。

「三回戦は引き分けて全員が四回戦へ進んだではありませんか」

「はいはい、そーでしたねー」

 福永はヨコヤを雑魚扱いすることでタブーゲームで負けたことへのささやかな報復をしようとしたが、結局失敗に終わった。

「あっ、秋山さん!」

「秋山先生!」

 そんな中、ナオとユウはこちらにやってくる男性を見つけて声を上げた。
 その男性はヨコヤとは対称的に全身を黒でコーディネートし、両手をロングコートのポケットに突っ込んだ状態で5人がいる場所まで歩いてきた。彼の名は秋山深一。かつて天才詐欺師と呼ばれ、ファイナルステージを制したライアーキングだ。

「なぜお前たちがここにいる? 事務局の奴に唆されたのか?」

「いえ、今回は私の意志でここに来ました。まだ、戦いは終わっていませんから」

「私も自分の意志で来ました。ゲームに巻き込まれた人たちのために私にできることを全力でやるつもりです」

 秋山の問いに、ナオとユウは決意のこもった目で答えた。
 バス停に6人が集まった段階で、1台のバスが公園の入口前に停止し、そこから黒い服を着た少女が1人が降りてきた。彼女の名はアリス。ライアーゲーム事務局の最年少事務局員だ。年端もいかない少女が事務局員として登場したことにナオは驚くが、彼女と面識のあるユウと福永は驚かず、他の三人もポーカーフェイスを保っていた。

「お迎えに上がりました。どうぞバスヘご乗車ください」

 アリスに促され、6人は順番にバスに乗車した。なお、このバスの座席は本家笑ってはいけないと同じ配置だ。座席にはそれぞれネームプレートがついており、プレイヤーたちはそれに従って席についた。席順は運転席側からユウ、ナオ、秋山、福永、葛城、ヨコヤだ。そして、彼らの着席と同時に、彼らの向かい側の座席の上に設置されたモニターに、仮面をつけた男性が現れた。

『皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。わたくしが今回ディーラーを務めます、アルサブです』

「まだ移動のバスの中だろ。アルサブ登場早くね?」

 福永が早すぎるディーラーの登場に疑問を抱いた。

『皆様がこのバスに乗り込んだ瞬間からゲームは始まっております。今回のゲームのルールはたったひとつ。何があっても絶対に笑ってはいけない。それだけです』

「もし笑ってしまった場合はどうなるんですか?」

『笑ってしまったプレイヤーはアウトとなり、制裁を受けていただきます』

 直の質問に淡々と答えるアルサブ。

「制裁……」

「どうせ笑ったらマイナス1億とかそんな感じだろ?」

『いいえ。制裁でマネーが減ることはありません。ご安心ください』

 今回のゲームの「制裁」は、これまでのような金銭的ペナルティではないようだ。

『今回、皆様には場代として1億円を貸し付けます』

 実際に手元には無いが、現在プレイヤーたちは合計で6億円ものマネーを持っていることになっている。

『24時間後のゲーム終了時に時にアウトの数が最も少ないプレイヤーが優勝。場代を総取りすることができます。そして、おわかりかと思いますが皆様に貸し付けた1億円は返却していただきます』

 今回もゲームに負ければ1億円の負債……その先にあるのは破滅だ。

『我々は必ず回収します。いかなる手段を使ってでも、必ず……!』

 アルサブの宣言と同時にバスが発車し、24時間に及ぶ6億円争奪戦の火蓋が切られた……。