ぐらにる たまご3
結局、地元の人間が訪れるフードコートへ、くりだして夕食となった。午後からのシエスタで三人とも、ぐっすりだったから腹は減っている。地元の名物料理を適当にチョイスしてビールで乾杯だ。
「くはー、この暑さだと、ビールに辛いものがベストだな。」
「くくくく・・・きみは大概、ビールがあれば、御機嫌じゃないか? ニール。」
「リボンズはワインじゃなくてもいいのか? ハウスワインぐらいならゲットできるぜ。」
「いや、今回は、お下品に食べよう。それが美味しそうだ。」
「リボンズ、きみも実働はしていたんなら、ニールとも組んでいたのか? 」
「ああ、何度かはチーム、何度かはライバル。組み合わせによってね、グラハムさん。あなたのことも僕は知ってます。派手なチームがあるというのは噂になってました。」
「うん、その噂は俺も知ってた。まさか、こんな優男がリーダーとは思わなかったけどな。」
「姫は、どういうイメージを私に持っていたんだ? 」
「もっと、こう、マッチョでヒゲだらけでザンバラ髪? 」
「ニール、それ該当枠があるから、二人もいらないよ。」
「あーなー、あいつの仕事と似てるから、イメージも似たような感じになってたんだろうな。」
フードコーディネーターと言っても、いろんな種類の人間が存在する。食材の調達をするものからメニューの製作まで、仕事の種類が多いからだ。マイスタークラスとなると、どれにも対応できるなんてことになっている。ニールとリボンズの知り合いにも、そういうマイスタークラスの人間はいて、その中の一人が、そういう容姿だから、二人して大笑いだ。そこへ、トンッッとテーブルに果物の盛り合わせが置かれた。こんなもの頼んでないぞ、と、三人が顔を上げたら、とんでもないのがビールジョッキ片手に立っている。
「おまえら、食物繊維の摂取を怠るな、と、何度、言えばわかるんだ? 生野菜が無理なら果物があるだろーがっっ。」
と、怒鳴りつつ、がははははと笑っているのは、その件のマイスタークラスの男だ。
「おや、珍しいところで逢うものだな? アリー。」
「いや、あんたがスサノオで出撃したって言うから、アルバイトできるんじゃねぇーかと押しかけたんだ。そしたら、嬢ちゃんの看病だって判明してな。当てが外れたぜ。・・・看病に自費でスサノオを動かすとか正気の沙汰じゃねーぞ。」
「それはすまない。姫が負傷したと連絡が入ったので、矢の如く参上したかっただけだ。きみも、付近で仕事だったのか? 」
「ああ、仕事が終わったんで休みに入ったとこだった。・・・ほら、おまえら、果物も食え。それから、嬢ちゃん、ビールも程ほどにしろ。毒が抜けたばっかなんだろ? アルコールはダメだ。」
ほら、これを、と、ニールの前に置かれたのはパイナップルジュースだ。
「なんで知ってるかな? このおっさんは。」
「おまえんとこのチビが慌ててりゃバレるだろ。おまえ、チビを慌てさせるなよ? 」
「ごめんごめん、ちょっと油断してた。・・・グラハムも知ってるんだな? このおっさん。」
ニールとリボンズには腐れ縁の相手だが、グラハムも知り合いとは思わなかった。
「知っている。たまに、うちの外注を依頼している相手だ。きみらも知り合いか? 」
「うん、知り合いっていうか、おかーさん? 」
ニールが小首を傾げて発言したら、リボンズが吹き出して、ひーひーと窒息している。的確な例えだが、ツボにハマったらしい。
「だーれが、おかーさんだっっ。」
「だって、チームになると食事管理とか体調管理とか、まさに、おかんってことやるじゃないか。」
「しょーがねぇーだろ? おまえらときたら、携帯食だけで済ますし睡眠も摂らないし、とんでもなく不健康で、俺の気分が下降すんだよ。今日だって、名物料理だけ、飲み物、ビールだけって。ちゃんと考えて食事しろ、と、言う俺の忠告が耳から素通りしてるじゃねぇーかっっ。」
「いいじゃないか、アリー。たまに羽目を外して食事しようという流れだったんだ。」
「たまにって・・・大将、どうせ俺の目が届かないと思って、暴飲してたんじゃねぇーのか? 食事という名目でワインだけとか、おかしいだろ? 」
「サプリメントで補っているけど? 」
「あれは緊急用だ。常食するもんじゃねぇー。」
まったく、と、文句を吐きつつ、ニールのビールを取上げて、ごくごくと飲み干したアリーは、どっかりとリボンズの横に座った。
ジュースを飲め、と、叱られてニールは、ぶーたれてグラハムのビールを口にする。
「親しいのか? リボンズ。」
「まあね。フリーの時からの付き合いなんだ。うちも、下請けを依頼しているよ? フリーの時は、ほんと、おかんでね。あははははははははは。」
ニールとリボンズがフリーの頃から、アリーとは知り合いだ。なんでも、ニールの両親とは、いろいろあったらしく、若い頃のニールのフォローなんかもやってくれていた。そして、後からアリーが注文したらしい料理も運ばれてくる。地元のフードコートは注文して金を払えば、料理を届けてくれるシステムだ。
「おまえらが、酷すぎたからだ。嬢ちゃん、ビールは、そこまでだ。グラハム、こっちの酒と合わせてみろ。」
運ばれて来た酒のグラスをアリーが手渡して、そこにライムを搾る。かなりのアルコール度数だが、この暑さと相俟って、すっきりした喉越しだ。はい、こっちも、と、リボンズにも同じように手渡す。
「うん、すっきりしているね。アリー、このエビの殻。」
「はいはい。」
新しく用意された料理をリボンズが指差すと、アリーは、そのエビの殻を剥く。なぜだか、ニールとグラハムにも配達される。とにかく、甲殻類の殻、魚介の骨なんかは取り外されて、小皿に載せてくれるので、手が汚れない。これが、アリーがおかーさんと呼ばれる由縁だ。綺麗に剥けないと、アリーの気分が悪くなるので、自分でやるほうが気が楽になるから手を出しているらしい。
「で、どうなんだ? 抜けたか? 」
「ああ、血液洗浄してもらった。あとは様子見。」
「まだ抗体がなかったか? 」
「いや、抗体はあるはずなんだが、数が多すぎた。リボンズのとこのヤツは容赦がねぇーよ、アリー。」
「どあほっっ、てめぇーが余裕ぶっこいてたんだろ? チビがダブルオーで、すっ飛んだって聞いたぞ? 」
「うん、情報入って、飛んで来てくれた。ものすごく叱られたけどさ。あと、亭主にも連絡してくれて助かった。」
「ちびは、おまえの代わりにリーダーになったばっかなんだぞ? 足を引っ張るとは何事だ? ああ? 」
「いや、まさか強奪があるとは思わなくてさ。・・・でも、刹那も、しっかりしてきたよ。ブツは奪還してくれたし、手配量も確保してくれた。」
「当たり前だ。厳しくしごいた成果は出てる。くくくく・・・・今度からは本気でやりあうか。」
「そうだな、そろそろいけるだろう。」
アリーとニールは、ふたりしてニッと笑った。グラハムは、アリーと知り合いではあるが、雇用関係だけだ。親しいわけではないので、この会話が不可思議だ。それに気付いて、ニールが剥かれたエビをグラハムの口に投げ入れる。
「くはー、この暑さだと、ビールに辛いものがベストだな。」
「くくくく・・・きみは大概、ビールがあれば、御機嫌じゃないか? ニール。」
「リボンズはワインじゃなくてもいいのか? ハウスワインぐらいならゲットできるぜ。」
「いや、今回は、お下品に食べよう。それが美味しそうだ。」
「リボンズ、きみも実働はしていたんなら、ニールとも組んでいたのか? 」
「ああ、何度かはチーム、何度かはライバル。組み合わせによってね、グラハムさん。あなたのことも僕は知ってます。派手なチームがあるというのは噂になってました。」
「うん、その噂は俺も知ってた。まさか、こんな優男がリーダーとは思わなかったけどな。」
「姫は、どういうイメージを私に持っていたんだ? 」
「もっと、こう、マッチョでヒゲだらけでザンバラ髪? 」
「ニール、それ該当枠があるから、二人もいらないよ。」
「あーなー、あいつの仕事と似てるから、イメージも似たような感じになってたんだろうな。」
フードコーディネーターと言っても、いろんな種類の人間が存在する。食材の調達をするものからメニューの製作まで、仕事の種類が多いからだ。マイスタークラスとなると、どれにも対応できるなんてことになっている。ニールとリボンズの知り合いにも、そういうマイスタークラスの人間はいて、その中の一人が、そういう容姿だから、二人して大笑いだ。そこへ、トンッッとテーブルに果物の盛り合わせが置かれた。こんなもの頼んでないぞ、と、三人が顔を上げたら、とんでもないのがビールジョッキ片手に立っている。
「おまえら、食物繊維の摂取を怠るな、と、何度、言えばわかるんだ? 生野菜が無理なら果物があるだろーがっっ。」
と、怒鳴りつつ、がははははと笑っているのは、その件のマイスタークラスの男だ。
「おや、珍しいところで逢うものだな? アリー。」
「いや、あんたがスサノオで出撃したって言うから、アルバイトできるんじゃねぇーかと押しかけたんだ。そしたら、嬢ちゃんの看病だって判明してな。当てが外れたぜ。・・・看病に自費でスサノオを動かすとか正気の沙汰じゃねーぞ。」
「それはすまない。姫が負傷したと連絡が入ったので、矢の如く参上したかっただけだ。きみも、付近で仕事だったのか? 」
「ああ、仕事が終わったんで休みに入ったとこだった。・・・ほら、おまえら、果物も食え。それから、嬢ちゃん、ビールも程ほどにしろ。毒が抜けたばっかなんだろ? アルコールはダメだ。」
ほら、これを、と、ニールの前に置かれたのはパイナップルジュースだ。
「なんで知ってるかな? このおっさんは。」
「おまえんとこのチビが慌ててりゃバレるだろ。おまえ、チビを慌てさせるなよ? 」
「ごめんごめん、ちょっと油断してた。・・・グラハムも知ってるんだな? このおっさん。」
ニールとリボンズには腐れ縁の相手だが、グラハムも知り合いとは思わなかった。
「知っている。たまに、うちの外注を依頼している相手だ。きみらも知り合いか? 」
「うん、知り合いっていうか、おかーさん? 」
ニールが小首を傾げて発言したら、リボンズが吹き出して、ひーひーと窒息している。的確な例えだが、ツボにハマったらしい。
「だーれが、おかーさんだっっ。」
「だって、チームになると食事管理とか体調管理とか、まさに、おかんってことやるじゃないか。」
「しょーがねぇーだろ? おまえらときたら、携帯食だけで済ますし睡眠も摂らないし、とんでもなく不健康で、俺の気分が下降すんだよ。今日だって、名物料理だけ、飲み物、ビールだけって。ちゃんと考えて食事しろ、と、言う俺の忠告が耳から素通りしてるじゃねぇーかっっ。」
「いいじゃないか、アリー。たまに羽目を外して食事しようという流れだったんだ。」
「たまにって・・・大将、どうせ俺の目が届かないと思って、暴飲してたんじゃねぇーのか? 食事という名目でワインだけとか、おかしいだろ? 」
「サプリメントで補っているけど? 」
「あれは緊急用だ。常食するもんじゃねぇー。」
まったく、と、文句を吐きつつ、ニールのビールを取上げて、ごくごくと飲み干したアリーは、どっかりとリボンズの横に座った。
ジュースを飲め、と、叱られてニールは、ぶーたれてグラハムのビールを口にする。
「親しいのか? リボンズ。」
「まあね。フリーの時からの付き合いなんだ。うちも、下請けを依頼しているよ? フリーの時は、ほんと、おかんでね。あははははははははは。」
ニールとリボンズがフリーの頃から、アリーとは知り合いだ。なんでも、ニールの両親とは、いろいろあったらしく、若い頃のニールのフォローなんかもやってくれていた。そして、後からアリーが注文したらしい料理も運ばれてくる。地元のフードコートは注文して金を払えば、料理を届けてくれるシステムだ。
「おまえらが、酷すぎたからだ。嬢ちゃん、ビールは、そこまでだ。グラハム、こっちの酒と合わせてみろ。」
運ばれて来た酒のグラスをアリーが手渡して、そこにライムを搾る。かなりのアルコール度数だが、この暑さと相俟って、すっきりした喉越しだ。はい、こっちも、と、リボンズにも同じように手渡す。
「うん、すっきりしているね。アリー、このエビの殻。」
「はいはい。」
新しく用意された料理をリボンズが指差すと、アリーは、そのエビの殻を剥く。なぜだか、ニールとグラハムにも配達される。とにかく、甲殻類の殻、魚介の骨なんかは取り外されて、小皿に載せてくれるので、手が汚れない。これが、アリーがおかーさんと呼ばれる由縁だ。綺麗に剥けないと、アリーの気分が悪くなるので、自分でやるほうが気が楽になるから手を出しているらしい。
「で、どうなんだ? 抜けたか? 」
「ああ、血液洗浄してもらった。あとは様子見。」
「まだ抗体がなかったか? 」
「いや、抗体はあるはずなんだが、数が多すぎた。リボンズのとこのヤツは容赦がねぇーよ、アリー。」
「どあほっっ、てめぇーが余裕ぶっこいてたんだろ? チビがダブルオーで、すっ飛んだって聞いたぞ? 」
「うん、情報入って、飛んで来てくれた。ものすごく叱られたけどさ。あと、亭主にも連絡してくれて助かった。」
「ちびは、おまえの代わりにリーダーになったばっかなんだぞ? 足を引っ張るとは何事だ? ああ? 」
「いや、まさか強奪があるとは思わなくてさ。・・・でも、刹那も、しっかりしてきたよ。ブツは奪還してくれたし、手配量も確保してくれた。」
「当たり前だ。厳しくしごいた成果は出てる。くくくく・・・・今度からは本気でやりあうか。」
「そうだな、そろそろいけるだろう。」
アリーとニールは、ふたりしてニッと笑った。グラハムは、アリーと知り合いではあるが、雇用関係だけだ。親しいわけではないので、この会話が不可思議だ。それに気付いて、ニールが剥かれたエビをグラハムの口に投げ入れる。