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ぐらにる たまご3

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「ああ、少し滞在して姫の具合が問題なければ、適当にスサノオで立ち寄りつつ本国まで戻るつもりだ。たまには、ゆっくり夫夫で過ごしたいと思っている。」
「そうだな。大陸沿いに進路をとれば、南国から北国まで楽しめるからな。俺としては、山東料理がお勧めだ。」
「それ、店の場所は? 」
「ニールの端末にいくつかピックアップして送ってやる。中華の基本としては、俺は山東が好きなんだ。」
「久しぶりに、俺も本格的なの食いたいよ、アリー。あと、懐石のいいとこも送ってくれ。」
「懐石? おまえ、どんだけ食べ歩きするつもりだ? ニール。・・・いや、そうか、あっちの薬膳なら毒消しの効果もあるな。わかった、送る。」
 会話が弾むと、飲み物かなくなってしまった。あらま、と、ニールが立ち上がって店に注文してくることにした。ここまで来るとビールではなく本格的な酒になるから、そこいらを探してくる。アリーが、おおよその場所を告げると、そちらへ歩き出した。それを見送って、グラハムがアリーに顔を寄せた。以前から、ずっと気になっていたことを教えてくれそうな相手だ。
「アリー、ひとつ聞きたいことがあるんだが・・・」
「なんだ? 」
「刹那は、その・・・私の姫に対して、恋愛感情などは抱いていないものだろうか? 」
 その言葉に、アリーだけでなくリボンズまでが、唖然としてから噴出した。
「ちびが嬢ちゃんに? くくくくくくく・・・ふははははは・・・」
「刹那がかい? グラハムさん。くくくくくくくくくく。」
「いや、長年、刹那の世話を姫はしていたので、そこが少し気になるのだ。これといって不審なことはないのだが、仕事で同行するのは刹那が多い。もし、そういうことなら・・・」
 グラハムのお姫様は、刹那をとても可愛がっている。それは、もう結婚前は、嫉妬するぐらいにいちゃこらとしていたから、気にはなっている。どちらも、そんなものは皆無だ、と、おっしゃるが身近な第三者に尋ねてみたくもなる。
 その様子に、アリーもリボンズも大笑いして手を横に振った。ねぇーわーという態度だ。
「どっちかっていうと、親子だと思うんだが・・・そういうことはないだろう。ちびにとっちゃ、嬢ちゃんは母親みたいなもんだ。あれが結婚して喜んでいると俺は感じているがね。」
「そうだろうねぇ。ニールって年下には、誰でも、あんな感じなんだよ。なんせ『人タラシ』っていう能力があるからさ。それで誤解されることも、しばしばだったし。」
「ていうか、あいつの好みは年上のグラマラスな女性なんで、ちびなんて眼中にもなかったはずだ。ちびの好みは、男ではないと思うぜ。」
「そういう意味じゃあ、あなたも外れているね? グラハムさん。」
「それは最初に姫から言われている。だが、恋には好みも何もないものだ。今は、私も姫もお互いに夢中だ。・・・それなら、いいんだ。」
「だいたいね、ニールが、あなたのペントハウスに同居している段階で、そこはクリアーしているんだ。ニールは定宿を作らない子だったんだ。それが、ひとつところに落ち着いたんだから、きみのところが安心できる居場所になってるんだよ。僕は、そこからして驚愕の事実だった。僕も、うちを定宿に、と、誘ったけど、にべなく断られたからね。」
「確かにな。嬢ちゃんは、居場所を知られるのが嫌いだったからな。ま、そういうことだ、グラハム。」
 身近な関係者から、そう言われれば、グラハムも悪い気はしない。ふむふむと頷いて、二カーと陽気に笑った。
 そこへニールが戻って来た。なんだか、亭主が嬉しそうなので、顔を覗きこむ。
「どうした? グラハム。」
「私は姫を愛してる。」
「は? 」
「姫は、私の最後の砦だ。何があろうと、きみを誰にも渡さない。大切で美しい私の宝物だ。これだけが私の生涯の持ち物だ。」
「うん? 」
 ガバチョッッと抱き疲れて抱擁されるに到って、体面でニヨニヨと笑っている二人に視線を投げる。
「何をぬかしたんだ? 」
「きみらの愛が確かなものだと言っただけだよ。」
「亭主孝行してやれよ? 嬢ちゃん。こんなに想ってくれる相手なんて、一生に一度しか逢えないぞ? 」
 まあ、なんか吹き込まれたのだろう。性質が悪いおっさんとあんちゃんなので、そこいらはスルーだ。はいはい、どこにも行かないよ、と、宥めて座ると、後から酒が運ばれてくる。
 とにかく大騒ぎで楽しい酒宴となったらしいが、目の前でいちゃこらされるので、アリーも、途中で呆れ果てたのは言うまでもない。
「姫、帰ったら手料理が食べたい。」
「うん、しばらくは専業主夫だから好きなもの作ってやるぜ。とりあえず、マッシュ? いや、ロイヤルマッシュかな。」
「それから一緒に買い物にも行こう。私も手料理を用意したい。」
「いいなあ。あんたのは豪華で美味いからな。でも、作るのは二人で一緒に? 」
「もちろんだ。姫との共同作業は楽しい。もう少し休暇を延長したい気分だが。」
「ダメだろ? こんだけ無茶したんだから、きちんと仕事はしてくれ。そうでないと、俺が叱られる。ちゃんと、毎日、送り迎えしてやるからさ。」
「なにっっ。それは行幸だ。・・・・くふふふふ・・・ドライヴして食事というデートもいいな。」
「そうだな。いろいろ楽しんでみようか。こんな時ぐらいしか、ゆっくり顔も合わせられないし。」
 二人の世界でいちゃこらされるので、アリーとリボンズは、二人して、これはこれで面白いけど、なぜかムカつくなーと言いつつ酒盛りしていたりだったらしい。


作品名:ぐらにる たまご3 作家名:篠義