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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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 シンは少し宙に浮きながら高速で移動し、辺りに広がり続ける電撃から逃れた。
 ヒナの方も縮地法を駆使し、シンに続いた。
 四方八方に広がっていく電撃の中、一つだけ威力の格段に異なる、ドラゴンの顔の形をしたものがあった。
 それはその牙によって、シン達を食い破ろうとすさまじい速度で迫ってくる。
 たちまち彼らは今にも追い付かれそうになる。
「くそ……!」
 シンは停止するとメアリィを降ろし、ヒナに預けた。
「姉貴、オレがなんとか足止めする。その隙にメアリィ連れて遠くに逃げろ!」
「足止めするったって、シン……」
「早く行け! このままいたら全員御陀仏だ!」
 シンに圧しきられ、ヒナは仕方なくメアリィを連れて逃げていった。
「行くぜ……!」
 シンは迫り来る電撃のドラゴンを前にしても動じることなく、静かに精神集中する。
 そして十分に気が高まると、シンは左右異なる目をかっ、と見開いた。
「止刻法・オーバーリミット!」
 シンの右目に発現した、天眼を示す翡翠の勾玉の模様が浮き出ると、前方の時が全て止まった。
 ヒナが使用するような僅かな間、僅かな時を止めるようなものではなく、空気の流れから、エレメンタルの活動も止めてしまう、まさに掟破りの術であった。
 そんな型破りな術を駆使したためか、シンは途中、吐き気を催したかのように口元に手を当てた。
 風のエナジーの活動を止められたために、ドラゴンの姿をした電撃は小さな風のエレメンタルへと変化し、目に見えないほどに細かくなっていった。
 やがて全ての現象は収まった。破壊的なヒースのエナジーは消えてなくなった。
「うくっ……!」
 エレメンタルの活動さえも止めてしまうような無茶な術であるため、体に返ってくる反動もすさまじく、シンは脳を激しく揺さぶられたかのようなめまいで崩れた。
 反動は頭だけに止まらず、心臓も早鐘のごとく高鳴り、全身の関節が石膏で固められたかのように曲がらない。
 ヒースは空から下り、シンへと歩み寄った。
「……まさかあれを止められようとは、驚いたぞ」
 ヒースはソルブレードの切っ先をシンに向ける。
「だが、その有り様ではもう戦えまい。貴様はこれまで俺が戦った中で間違いなく最強であった。最高の敬意を払い、終止符を打ってくれよう!」
 ヒースがソルブレードを振り上げ、シンに引導を渡さんとしたその時だった。
「ぐうっ!?」
 ヒースの手首に風の針が刺さった。
 不意に与えられた痛みに、ヒースは思わずソルブレードを取り落としてしまった。
「……残念だったな、ヒース。この勝負、オレがもらった!」
 力を使い果たし、崩れ落ちていたはずのシンが、風の針を放っていた。そしてその口の中には褐色のあめ玉のようなものを含んでいた。
 シンが掟破りの止刻法を使う間に、その口に入れていたのは超兵糧丸であった。止刻法を使った後、ちょうど力が回復するように舐め溶かしていたのだ。
「止刻法!」
 シンはヒースの動きを止め、縦横無尽、電光石火の動きでヒースに攻撃を加える。シンはすさまじい速さであり、シンの左手にある漆黒の刃と思しき黒い閃光だけが後に残るのみである。
 シンはヒースを蹴り上げた。少し宙に浮いた瞬間も逃すことなく、シンの乱舞は続く。
 シンは白銀の刃での攻撃も加え、白と黒の剣閃で、空にヒースを打ち上げながら攻撃を加えた。
 そしてシンは一際高くヒースを打ち上げると、白銀の刃を納刀し、エナジーを込めて漆黒の刃を投げた。
「乱術奥義……!」
 シンはヒースに接近し、居合いの要領で白銀の刃を抜き放ち、漆黒の刃と同時にヒースを切り裂いた。
「白光・黒華刃!」
 シンに裂かれた漆黒の刃は、黒く細い花弁を持つ花のように広がり、シンの放つ白銀の閃光が茎のように、その花の花弁を貫いて伸びていった。
「ぐ、はあっ……!」
 血を噴き上げるヒースは、さながら花の美しさを引き立てる蝶のようだった。
 漆黒に白銀、そして紅蓮という色合いの妖艶なる美の中、ヒースという紅の蝶は羽を散らしてゆっくりと地に落ちていくのだった。