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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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 メアリィがペンダントを手にした瞬間、ペンダントがぽうっ、と淡く光り始めた。
 その輝きは水色であり、優しい水のエレメンタルの力を感じる。
「やはりな、これで決まった。ペンダントに込もったマリアンヌの意思が転生体である君に反応した。メアリィ、君は間違いなくマリアンヌの生まれ変わりだ」
 ペンダントの光が次第に大きくなっていった。すると、メアリィの体までも光り出した。
 メアリィの中に何かが入り込んできた。それは癒しの力へと変わっていき、心の中に、あるエナジーとして発現する。
 メアリィはなすがままに、心に浮かんだエナジーを詠唱した。
『グレイスフル・ウィッシュ』
 瞬間、メアリィを中心に蒼い光の柱が空に伸び、噴水のように辺りにいる者を包み込んでいった。
「何だ、これは?」
「とても心地いいわ。身も心にも力が溢れてくる……」
 シンとヒナは、激戦で負った傷はもちろん、普通ならエナジーで回復することのない精神力までも回復していくのを感じた。
「……それはマリアンヌが得意としていたエナジーだ。とても優しい彼女には、人を傷付けるようなエナジーはなかったが、その代わりにあらゆるものを癒す力を持っていた……」
 ヒースも回復し、起き上がる。しかし、シンとヒナに比べれば僅かにしか回復していない。
 それは、一度死神にその身を食らわれ始めれば、どんなに回復しようとも消滅を逃れられないためだった。
 ヒースは地に転がったソルブレードを拾い上げた。まさかまだ戦うつもりなのか、一瞬シンは思ったが、ヒースにその意志はないことがすぐに分かる。
 ヒースから強い憎しみは感じられず、その表情はとても穏やかだったからである。
 そして、どこか吹っ切れたような様子が窺えた。
「シン」
 ヒースは呼びかける。
「憎しみ、復讐心からはなにも生まれない。ただ怨恨の悪循環に陥るだけだ。それに仮に、復讐を成し遂げられたとしても、大切な人は決して帰って来ない。お前のおかげで最期に気が付くことができた。礼を言う」
 ヒースは胸の内を全て打ち明けた。シンに話した言葉ではあったが、まるで自分自身に言い聞かせているかのようだった。
「ヒース?」
「お前のその力、守りたいものがあるから得られたもののようだが、僅かながら俺に対する復讐心も感じられた。シン、お前は決して、俺のようになるな」
 シンは心を見透かされたような感じがした。確かにこの一ヶ月、イリスを助けたい思いで必死に修行に励んでいたが、原動力はそれだけではなかった。
 ヒースに手も足も出なかったあの戦いを悔いて、鍛練を行っていたのも確かだった。
「……お前の言う通りだ。肝に命じておく」
 シンが言うと、ヒースは小さく笑った。
 そしてヒースは、ソルブレードを左手に持ち変えた。
 左手にはまだ、デュラハンに付けられた枷が付いたままであったが、ソルブレードの聖なる力で枷は一瞬にして砕け散った。
 最後の枷を砕いたかと思えば、今度は魔法の翼を開いた。
「ヒース、一体何をするつもりだ?」
 連続するヒースの突飛な行動に、シンは訊ねた。
「俺は、自分なりにけじめをつけるつもりだ。このまま大人しく死神の腹に収まるつもりはない、最期までデュラハンに抗ってやるさ……」
 ヒースは強力な瘴気の渦巻く先を見る。
「この先に世界を瘴気で満たしている装置がある。力任せに行ったところでとても壊せない代物だが、ソルブレードの聖なる力を以てすれば打ち砕けるはずだ」
 シン達は驚いた。
「その体で行くつもり!? もう半分近く死神に取られてるじゃない!」
 ヒナの言う通り、ヒースの体はほとんど透き通っており、足の先に至っては既に消滅している。
 だからこそヒースは翼を広げ、浮遊するしかなかった。
「確かに俺一人の力では装置までたどり着いても、破壊する力までは残らんだろう。だが、俺に考えがある……」
 ヒースはメアリィを見る。
「メアリィ、俺と一緒に来てくれ」
 メアリィは驚き、目を見開く。
「私が、ですか……!?」
 自分の力ごときがなんの役に立つというのか、メアリィには分からなかった。それに仮に行くとして、メアリィに大きな問題が立ち塞がる。
「ちょっと待って、この先は人間じゃ耐えられないほど強い瘴気があるんじゃないの? まさかあなた、マリアンヌの生まれ変わりのメアリィと心中を……!?」
 ヒナは、緊迫した状況下にも関わらず、冗談めいた事を言った。
「姉貴、そんなわけねえだろ。ヒースはもうじき存在ごと消えるんだ。あの世で幸せに、なんて無理なことだ」
 シンはヒナの冗談を切り返し、真面目にヒースに問う。
「……それで、メアリィを連れていってどうするつもりだ? そもそも、姉貴の話が本当なら、どうやってメアリィを連れていくんだ?」
 ヒースはエナジーを発動した。
『レジスト・スフィア!』
 メアリィは再び、バリアに包まれる。
「これに包まれていれば、少しの間瘴気に耐えられる。それに、ソルブレードが瘴気を払ってくれる。ソルブレードの近くにいる限り、彼女は安全だ……」
 ふと、ヒースは咳をした。咳には血が混じっている。
「ごほっ……どうやらもう、時間は永くないみたいだな。どうか頼む、力を貸してくれ、メアリィ……!」
 メアリィは少しの間を開けた後、ヒースを真っ直ぐに見つめ頷いた。
「分かりましたわ。私の力が役に立つのなら……!」
 ヒースは小さく笑う。
「ありがとう、メアリィ」
「本気なの、メアリィ!?」
 ヒナはまだ信じきれていなかった。
「ヒナさん、私にはあなたのような力を見抜く眼も、イワンやシバのように心を読む力も持ち合わせてはいません。ですが、ヒースさんの気持ちに偽りはないように思うのです。だから私は信じたい」
 メアリィはヒースを一心に信じていた。マリアンヌの事を想い、全ての世界を救いたいと思う心に。
「姉貴……」
 シンはヒナの肩に手を置いた。
「ヒースは全てを懸けてオレ達の世界を救おうとしてくれている。これ以上ガタガタ言うのは、ヒースの思いに傷をつける事になる」
「シン……」
 よもや弟に諭されるとは思わなかった。
 シンはヒナほど何かを読めないにも関わらず、いや、読めないからこそに物事をしっかりと考えるようになっていた。
 いつの間にかずいぶんと大人になったシンに諭され、ヒナはもう何も言うまいと思った。
「……分かったわ、あたしもヒースを信じる。あんなに真っ直ぐな剣を振るうんだから、きっとやってくれるわよね」
 ヒナも信頼し、ヒースに反対する者はいなくなった。
「ありがとう。最期にお前達姉弟に会えてよかった。お前達のおかげでかつての誇りを取り戻せたように感じる。心から礼を言わせてもらう」
 ごほごほ、とヒースはまた血の混じる咳をする。
「……げほ、さて、もう時間がないな。早く行かなくては。メアリィ、俺の肩に掴まってくれ」
 ヒースはメアリィに背を向けた。メアリィは言われた通りに、ヒースの両肩を掴み、しっかりとくっついた。
 メアリィが掴まったのを確認すると、ヒースは翼をはためかせ、更に上へ浮上した。
「そうだ、最後に一つ、言い忘れていた」
 ヒースは何かを思い出し、シンへと振り向いた。