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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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「あたしの剣は一撃必殺、この技でほとんど終わるはずなんだけど、世の中甘くないわね……」
 背後に回られれば、なす術もないはずの相手を斬り倒すこの技であったが、同じ剣術を修める者ならいざ知らず、センチネルや暴走したロビンに避けられ、必殺という言葉はいよいよ怪しいものになっていた。
「全く、『転影刃こそ最強の技也』なんて言い出した始祖に文句言ってやりたいわね!」
 ヒナは不満を露にした。
「技にいちゃもんを付けている暇があるなら、己を磨くことだ。貴様の技が通用せんのは、単に貴様が未熟だからだ」
 センチネルはまるで師のように説く。
「あら、ずいぶんと偉そうに言ってくれるじゃない? まあ、あたしもこれで終わるなんて思ってないけどね。あの子をボコボコにした相手だしね」
 ヒナから突然出た言葉に、センチネルは首を傾げた。
「その様子……、まさか忘れたの? あたしによく似ていて、いい歳して忍者ごっこしてる戦士よ」
 センチネルは思い出した。それは一月前の事、自らを忍という男と戦った。
 あまりに勝負にならなかったため、センチネルにはほとんど印象に残っていなかった。
 弱者に関心しない、それがセンチネルの考え方であった。
「なるほど、道理で貴様を最初に見たときに既視感を感じたわけだ。その猫の尾のような髪、あやつも全く同じであったな」
 センチネルは思い出した。確かに一月前、デュラハンが現世に降臨した時、同時に復活したイリスを守ろうと、その男はセンチネルに戦いを挑んできた。
 まるで相手にならなかったがなかなか倒れようとせず、ひたすら攻めて足掻いてきた男の顔が、だんだんセンチネルに浮かんできた。
「思い出してくれたかしら? あたしの弟のこと」
「ああ、思い出したぞ。そっくりどころの騒ぎではない、瓜二つではないか。まさか貴様、性まで変えることができたのか?」
「ふふふ……、確かに、あの子、シンとの違いは性別と歳くらいで、他はほとんど同じかもしれないわね……」
 ヒナは構え直す。
「……あの子に剣を教えたのはあたしで、姉弟だけど師弟みたいなものなの。あたしの技を使って負けたとあっちゃ、あたしも黙っていられないのよ」
 ヒナの目付きが変わった。
「……本気の本気で行くわ。ここからは、死合いよ、センチネル……!」
 ヒナは縮地法を使い、更なる速さでセンチネルに攻め寄せる。あたかも瞬間移動をしているかのようなスピードで攻めるも、センチネルは簡単に攻撃を受ける。
「まだまだよ!」
 ヒナは回り込む動作を見せた。
「ふん、馬鹿の一つ覚えか?」
 回り込んで背後から斬る技を出すものと読み、センチネルは後ろに気を配る。しかし、ヒナの姿はなかった。
「やあっ!」
 ヒナは位置を変えず、その場で二撃目を放った。
「……ぬっ!?」
 センチネルは攻撃を防ぎ、後ろへと下がる。ヒナはその後を追う。
 ヒナは間合いに入った瞬間、今度は二方向に移動する動作を見せた。
 センチネルは四方から攻撃されるような錯覚を受けるが、右側から攻めてくるヒナを捉えた。
「ふっ、ならこれはどうかしら!?」
 ヒナは一歩大きく後退し、一瞬にして攻め寄せると、センチネルの周囲を回る。そのような動きを見せた。
 八方向全てからヒナの殺気を感じるものの、センチネルは冷静にヒナ本体の気配を探った。
 右斜め後ろ、左利きのセンチネルにとって最も守りの薄い場所から、ヒナは斬りかかろうとしていた。
「そこだ」
 センチネルは剣を振るわず、右手で当て身を放った。
「ぐっ!?」
 センチネルの当て身は、今まさに抜刀しようとしていたヒナの鼻先で止まり、ヒナは逆に不意を打たれ動きを止めてしまった。
 センチネルは、当て身に面食らうヒナを逃さず、回転しつつ剣を振り放った。
 ヒナはすぐに正気に戻り、飛び退いた。
 二人の間合いは再び大きく開く。
「……気配を方々に飛ばし、相手を惑わす、か。それにより八方向から攻められるような感覚を相手に与える……。なるほど、面白い技だ」
 センチネルは、ヒナの行った事の詳細を言い上げた。言葉には一切の狂いがない。
「八相法まで見破るなんて、驚いたわね。でも、これではっきりしたわ……」
 ヒナは何かを悟っていた。
「センチネル、あなたのその仮面の下、あたしと同じ目を持っているわね?」
 ヒナの言葉は唐突すぎて、センチネルは理解できないでいた。
「貴様と同じ、だと?」
「そうよ、あたしの技を一瞬で見抜いているのがその証拠よ」
 センチネルの眼には、不思議な力が宿っていた。それは、相手の動きを正確に分析し、その本質を見抜くことができるものである。
「あたしがさっきやって見せたのは、気の錯乱っていう技術でね、あたしの気配をあちこちに飛ばして相手を惑わすのよ」
 しかし、センチネルは八方から殺気を受けたにも関わらず、心を乱される事なくヒナの動きを読んでいた。
 初見で気の錯乱を破るなど、普通ならば不可能である。見事に術中にはまり、動くことさえもままならなくなる。
 しかしごく僅かであるが、この技を打ち破る方法はある。それは、相手の力を的確に読み取る眼力である。
「あたしの眼を見てくれるかしら?」
 ヒナは少しばかり眼を見開き、透き通るような翡翠色の虹彩を見せた。
「この眼は力通眼っていってね、見た者の力を推し量れるものなの」
 そう、例えば、言った瞬間ヒナは体を開いて攻撃をかわす。
 逆袈裟に剣を振るって来るセンチネルに、ヒナは刀の鞘の先端部で顔面を突いた。しかし、それを読んでいたかのように、センチネルは上体を反らしてかわした。
 しかしヒナは抜刀し、刀ではなく鞘の方を振ることで、体勢の崩れたセンチネルに追い討ちをかける。
「がっ!?」
 センチネルは伸びてきた鞘の先に顔面を突かれ、腰を落とした。そこへヒナは抜き身の刃を真下に振り下ろす。
 ガチン、と刃と刃がぶつかり合った。センチネルの防御はギリギリのところで間に合った。
「……ほとんどまっすぐの逆袈裟斬りで、下がるのもしゃがむのも防いだようだけど、残念だったわね。それじゃあ体を捌いた相手にはギリギリかすらないわよ」
 センチネルが刃を弾くと、勢いそのままセンチネルは右に、ヒナは左へ跳んで距離を置いた。
 ヒナは跳びながら、右手に持った鞘で攻撃し、納刀した。
「俺の意図した事をそこまで的確に言い当てるとは……。その眼には心までも見えているのか?」
「心ねぇ、まあ、少しなら見えるかしら。相手の動き、太刀筋を見ればね」
「面白い、ならば俺の心、読んでみるがいい!」
 センチネルは、ヒナの縮地法と紛うほどの速さで斬りかかった。しかしヒナは、真っ正面から来るセンチネルに目もくれず、右を向いて刀を半分抜いた。
 刃が火花を散らし、ぶつかり合う。
「ふん、貴様の言葉は満更虚言ばかりではないようだな!」
「センチネル、あなたの考えていること、少しわかったわ。それは、美人と戦えて嬉しい、でしょ!?」
「ぬかせ!」
 センチネルは剣を寝かせ、そのまま切っ先を突き出した。
 ヒナは首を捻って紙一重で突きをかわし、抜刀してセンチネルの剣を弾き上げた。そして真横に刀を振る。
 センチネルは攻めの手を止め、後ろに下がった。