君のせい
アイツがビクッとなるのがわかった。
でもアイツが悪い。何にもわかってねぇから。
「オレのこれは、女に触れるとなるんだよ。」
「知ってるよ。でもさっきならなかったじゃん。」
「…チッ」
「何だよ。何怒ってんの?」
「オレにとって、もう女はお前だけなの!」
「は?何ソレ。」
あーマジで何でわかんねんだよ。
「オレが好きな女はお前だけだし、
意識する女はお前だけだし、
触れられて舞い上がる女も
お前だけだって言ってんだよ!」
「えっ///」
「何でここまで言わねえとわかんねえんだよ。
…このバカ。」
また体温があがるのがわかる。
「えっと…その…ごめん?///」
「もういーよ。
お前の鈍さなんて今更だからな。」
オレは赤い顔のままでアイツのほうを見た。
オレのこの顔も、コイツの前では今更だ。
「あ、でも私もだよ?」
「…何が。」
「男の人って意識するのも
なんかこう舞い上がっちゃうのも
馬村だけだよ?」
フニャっと笑ってそういうことを
アイツが言った。
「…は?////」
なんでそういうこと言うかな!
オレは思わずアイツの手首を掴み
抱き寄せた。
「えっ、はわわっ。馬村っ!
ここ、保健室…///」
「うるせぇ。
お前がそういうこと言うのが悪い。」
しばらく抱きしめ、ふと腕をゆるめて
お互いに顔を見合わせた。
「…オレ…顔赤ぇ?」
「え…うん。」
「教室戻れねー。」
「私気にしないよ?」
「オレが気になんだよ。」
「別にいいのに。」
「お前のせいだからな?」
「えっ、何で?何が?」
「もういいからお前は戻れよ。」
どうせ言ったってわかんねえだろ。
アイツはブツブツ言いながら
教室に戻って行った。
オレは保健室の椅子に座って、
抱きしめた腕をしばらく眺めた。
「細ぇな…」
ますますアイツのことばかり考えてしまう。
ふいに言う言葉が可愛くて仕方がない。
ガラッ
「あれっ…君は、二年の馬村くん。
具合悪い?空けてて悪かったね。」
養護教諭が戻ってきた。
抱きしめた瞬間じゃなくてよかった。
「いや、ちょっと休んだらよくなったんで
戻ります。」
「あ、そう?じゃあ、名前だけここ書いといて。」
名前を書いて教室に戻ると、
国語の授業中だった。
「なんだ、馬村、無理すんなよ?」
「もう大丈夫ッス。」
先生に言われてそう返答し、席についた。
亀吉と猿丸がニヤニヤした顔でオレを見た。
マジむかつく。
嬉しそうに二カッと笑うアイツにもむかつく。
誰のせいでこんなことになってると思ってんだ。
何もかも、お前が悪い。
そしてまた俯いて
ニヤけそうになる顔を抑えるんだ、オレは。