-Honey and Sweets?-
エルリック兄弟が訪れていると聞きつけ、急ぎ執務室に戻ってきて扉を開けたロイは来客用のソファーを見てぱちりと目を瞬いた。
「そこの全身に可愛らしいアイテムを付けて微笑ましい姿をしていながら、お化けよりも凶悪そうな目付きをしているのは君の兄さんかね、アルフォンス?」
「はい、どこからどう見ても可愛らしくなってて見る人達をほっこりさせまくっているのに、本人はいたく不本意らしくて不貞腐れているのは確かに僕の兄です。こんにちは、大佐。お久しぶりです」
「ああ、久方ぶりだね。息災なようで何よりだ。……鋼のも」
ようやく本人に向けて声をかけると、エドワードはさっそく噛みついてきた。
「息災じゃねーよ!この格好見りゃわかんだろ!」
「いや、でも……可愛らしくていいじゃないか。見ている方も和むし、君も菓子をたくさんもらえたようだし」
「これのどこが可愛らしいんだよ。それに男が可愛らしくされて嬉しいかっての!」
いやでも、これはやはり可愛らしいとしか言いようがないじゃないか。
ロイは改めて兄の方の全身を眺めたが他の語彙が思い浮かばず、同意を求めて隣に座る弟へ視線を向けた。しかしアルフォンスは鎧の肩を竦めるようにして、キシリと音をさせただけだった。
「門兵がよく来たねって飴くれたのくらいはよかったけど!受付で頭にねこみみ付けられて!そしたら皆オレのこと見て顔背けて笑うし!通りすがりの人に帽子みたいのとかボンボンみたいなのくっつけられて――主に女の人だったから無下に出来なかったけど(つまり逆らえなかった)――、途中会うやつ皆、フードやらポケットやらに勝手に菓子突っ込んでくるし!」
皆、賞味期限切れの菓子の回収屋だと思ってるんじゃねーの?!
子供は憤慨した様子で捲し立て始めた。恐らくここに来るまでの間、本人的には大変に不本意であるこの状況について訴えられる相手が誰もいなかったのだろう。何故なら……。
「極めつけにここ来たらあんたいなくて、しばらく戻らないからこれ背負って司令部内一周してこいって中尉に……」
エドワードは屈辱の極みだとばかりに唇を噛んで俯き、ちらと背中をこちらに向けた。
「かっ……」
「か?」
「……カッコいいじゃないか、その羽根」
思わずかわいいと口にしてしまいかけたのをなんとか堪え、無難そうな言葉に言い換える。
エドワードの背にはコウモリのような小さな黒い羽根が生えていた。いや、正確には両脇に羽根の付いたショルダーバッグを背負っていた。バッグが膨らんでいるように見えるが、恐らくその中にも菓子が詰まっているのだろう。
日頃は引き締め役のホークアイが黙認どころか自ら率先して携わっているとなると、誰にも止めることなどできない。
いや、それになんといってもかわいい。この格好を少しでも長く愛でたいと思う者は少なくないないだろう。
頭にはねこみみのカチューシャ。おさげの先やコートの所々に、小ぶりな黒のとんがり帽子や黒いふわもこしたボンボン状のアクセサリーを留められている。そして背中にはコウモリの羽根。どうやら菓子を入れやすいようにカゴも持たされていたようだ。
もちろん成果は上々だ。腹立ち紛れに幾つか既に腹の中へ収まったらしき痕跡もある。
「そこの全身に可愛らしいアイテムを付けて微笑ましい姿をしていながら、お化けよりも凶悪そうな目付きをしているのは君の兄さんかね、アルフォンス?」
「はい、どこからどう見ても可愛らしくなってて見る人達をほっこりさせまくっているのに、本人はいたく不本意らしくて不貞腐れているのは確かに僕の兄です。こんにちは、大佐。お久しぶりです」
「ああ、久方ぶりだね。息災なようで何よりだ。……鋼のも」
ようやく本人に向けて声をかけると、エドワードはさっそく噛みついてきた。
「息災じゃねーよ!この格好見りゃわかんだろ!」
「いや、でも……可愛らしくていいじゃないか。見ている方も和むし、君も菓子をたくさんもらえたようだし」
「これのどこが可愛らしいんだよ。それに男が可愛らしくされて嬉しいかっての!」
いやでも、これはやはり可愛らしいとしか言いようがないじゃないか。
ロイは改めて兄の方の全身を眺めたが他の語彙が思い浮かばず、同意を求めて隣に座る弟へ視線を向けた。しかしアルフォンスは鎧の肩を竦めるようにして、キシリと音をさせただけだった。
「門兵がよく来たねって飴くれたのくらいはよかったけど!受付で頭にねこみみ付けられて!そしたら皆オレのこと見て顔背けて笑うし!通りすがりの人に帽子みたいのとかボンボンみたいなのくっつけられて――主に女の人だったから無下に出来なかったけど(つまり逆らえなかった)――、途中会うやつ皆、フードやらポケットやらに勝手に菓子突っ込んでくるし!」
皆、賞味期限切れの菓子の回収屋だと思ってるんじゃねーの?!
子供は憤慨した様子で捲し立て始めた。恐らくここに来るまでの間、本人的には大変に不本意であるこの状況について訴えられる相手が誰もいなかったのだろう。何故なら……。
「極めつけにここ来たらあんたいなくて、しばらく戻らないからこれ背負って司令部内一周してこいって中尉に……」
エドワードは屈辱の極みだとばかりに唇を噛んで俯き、ちらと背中をこちらに向けた。
「かっ……」
「か?」
「……カッコいいじゃないか、その羽根」
思わずかわいいと口にしてしまいかけたのをなんとか堪え、無難そうな言葉に言い換える。
エドワードの背にはコウモリのような小さな黒い羽根が生えていた。いや、正確には両脇に羽根の付いたショルダーバッグを背負っていた。バッグが膨らんでいるように見えるが、恐らくその中にも菓子が詰まっているのだろう。
日頃は引き締め役のホークアイが黙認どころか自ら率先して携わっているとなると、誰にも止めることなどできない。
いや、それになんといってもかわいい。この格好を少しでも長く愛でたいと思う者は少なくないないだろう。
頭にはねこみみのカチューシャ。おさげの先やコートの所々に、小ぶりな黒のとんがり帽子や黒いふわもこしたボンボン状のアクセサリーを留められている。そして背中にはコウモリの羽根。どうやら菓子を入れやすいようにカゴも持たされていたようだ。
もちろん成果は上々だ。腹立ち紛れに幾つか既に腹の中へ収まったらしき痕跡もある。
作品名:-Honey and Sweets?- 作家名:はろ☆どき