っぽい
「あれ?馬村?!もしもーし!」
「切れた…何で?待ってろってどういう意味?」
なんだよ、とすずめはブツブツ言いながら
携帯の画面を眺めた。
「お風呂でも入ったのかな…」
待ってろと言われて待つこと20分。
トゥルルルル、と電話が鳴った。
「!///」
馬村だ!
ピッ 「馬村?」
「外!」
ハァハァという弾む息が
声に混ざっている。
「外?」
「いいから外に出てこい。」
「えっ」
すずめは携帯を通話状態にしたまま、
バタバタと部屋を出た。
ガチャッと玄関を開けると
外にまだ制服姿の馬村が、
やはり携帯を通話させたまま立っていた。
「馬村!」
「…こういうのがそうじゃねえの?」
「え?」
「会いたいと思う時に
オマエも会いたいと思ってくれるとか
声が聞きたいと思う時に
声を聞きにいけるとか。」
馬村がそういうのを聞いて、
すずめはちょっとジンとした。
確かに、想う相手に別の人がいたら、
それはできない。
カップルの特権だ。
ふっと笑ってすずめは
馬村に抱きついた。
「っ!///」
抱きついたまま、頭をグリグリと
馬村の胸に押し付けた。
「…痛えんだけど。」
「これも特権だね。」
「…だな///。」
馬村はそっとすずめの背中に手を回した。
二人ともじんわりとお互いの体温を感じ、
両想いになった嬉しさを噛みしめた。
「馬村、走ってきた?」
「…走ってねえ。」
「熱いよ?」
「気のせいだろ。」
「ありがとう。」
「…だから走ってねえって。」
自分が会いたくて急いだ、
とは馬村は言えなかった。
「わたし、忘れてたよ。」
「何が?」
「馬村といたら、何してても
どこに行っても楽しいし
嬉しいんだなぁってこと。」
「……」
ボソボソと何かを囁く声がした。
「え?なんて言った?」
「///俺もって言ったんだよ!」
「!ホント?」
「…嘘言ってどうすんだよ。」
「や…自分だけが嬉しいかと思ってた。」
「そんなわけねーだろ。」
馬村は今更何言ってんだと
言わんばかりだ。
またすずめは、あたたかい気持ちになった。
カップルっぽいことって、
こういう気持ちになることなら、
馬村と一緒にいればずっとそうだな、
とすずめは思った。
「もう一つカップルっぽいことしたいんだけど…」
馬村が言った言葉に、すずめは顔を上げた。
「え?何?」
チュッ
馬村はすずめの頬にキスをして、
赤い顔がさらに赤くなった。
すずめもそれに釣られるように
頬を染めた。
「これもカップルの特権だね。」
「…それもういい加減にしろよ。」
「あ、でも付き合ってないのに
馬村こういうのしてきたことあったね。」
「うるさい。もういいだろ?」
「でもほらこうさ、馬村前に
これで許すって言ってほっぺたに…」
「だからヤメロ///」
馬村にとっては思い出したくない、
勢いでしたことだった。
思い返せば、付き合ってないのに
抱きしめることもした。
「あん時のは…今とは
全然意味が違うだろ。」
お互い頬を染め、目を合わし、ふっと笑いあった。
「そっか。そうだね。」
ぽくなくても全然違うんだ、と
やっと実感したすずめだった。