嫉妬と不安 2
そしてやっと全部話し終えたのか、すずめは眠りに落ちた。
それを見て、獅子尾はすずめの携帯を勝手に拝借し馬村に電話をかけ、今に至る。
全てのてん末を聞き、馬村は顔を真っ赤にした。
「だから俺はもー疲れたわけ!聞きたくもないお前の話聞かされて、もーボロボロだわ!」
「それはテメェの行いのせいだろ!」
「はいはい。まーわかったら連れて帰ってやれ。それと...
あんまり寂しがらせんなよー。」
「うるせぇ!わかってるわ!」
すずめの分のお金を適当に獅子尾の前に置き、
「もー二度とちょっかいかけんな!」
そう言うと中指を突き立て、すずめをおぶって店をあとにした。
温かい...。
目を開けると、自分が馬村におぶられているのに気づく。
「え!?なんで馬村!?」
ギョッとしながら辺りをキョロキョロし、すずめは叫ぶ。
ここ、家の近くの道だ...。
「起きたのかよ...。酔いは冷めたか?」
「え、あ、う、うん。」
酔いは冷めたものの、ここまでの記憶がなかった。
途中から獅子尾と何を話したのか、なんでこうなったのかが全くわからない。
「あ、えっと、なんで馬村が...?」
恐る恐る尋ねると、獅子尾から電話が来たから迎えに行った。そう簡潔に伝え、目の前にあるベンチにすずめを下ろし、それに向き合うように馬村も腰をかけた。
しばらくの沈黙が続くと、馬村から話をきりだした。
「...今日は悪かった。会う約束守れなくてごめんな?
いや...。今日だけじゃなくて、寂しい思いさせてごめん...。」
「ううん。いいの。バイトならしょうがないしね。」
すずめは苦笑いしながら言った。
「...なぁ、なんでバイトこんなにしてるのかわかる?」
「え...。欲しいものでもある...とか?」
「バーカ。お前のためだよ。」
照れ隠しのように、すずめの鼻を軽くつまんだ。
「へ...?私の?」
すずめの鼻から手を離すと、真っ直ぐと目を見て話を続けた。
「俺、お前とずっと一緒にいたい。
けど、まだお前と違って就職もしてねぇのに一緒に暮らせるわけもないし、だからといって、仕事に就いてすぐに養えるかもわかんない。それでも、お前と、すずめと少しでも早く一緒になれるように金貯めてんだよ。
だから、まだしばらくは寂しい思いもさせるかもしれない。それでも、俺が就職したら...一緒になろう。」
すずめは、自分の事をここまで考えている馬村にも気付かず、寂しいなどと思っていた自分の小ささと、馬村の温かい愛情に自然と涙が溢れてきた。
「わ、ちょ、泣くなって…!」
「うぅ...だって。ごめんね。ありがとう...。」
「何に謝ってんだよ...。」
「だって私、そんな事も知らずに、寂しいとか思っちゃうし、その、わざとじゃなくても先生と二人で居たし...。」
「寂しいって思ってたのはお前のせいじゃないし、俺も会いてぇと思ってた。...あいつのことは...、別にいい。」
すずめの腕を引き寄せ、力強く抱きしめた。
「まむ...、...大輝。好きだよ。」
馬村の腕の中ですずめは呟いた。
「俺も...。」
どちらともなく二人は唇にキスをし、手を繋ぎながら帰路についた。
すずめの家の前につき、別れを告げようとすると、
「そういえばお前一人で飲もうとしてたの?」
馬村に尋ねられた。
「えっ、いや、馬村にダメって言われてたから、ご飯だけ食べて帰ろうと思って。そこに先生が来たの。」
「ふーん。じゃあ、俺以外の男と二人で飲むのも禁止な。」
馬村の発言にプッと。笑い、
「はいはい。」
と、返事をした。
「なんだよ...。」
「べーつにー。」
すずめはニコニコしながら言った。
「...お前、今日獅子尾とどんな会話したか覚えてる?」
「いや、それが、途中からまったく...。」
「ふーん、じゃあ次会う時までに思い出しとけよ。宿題な。」
「えー、何それ。」
すずめの頬に軽くキスをし、馬村は去っていった。
家に入ってもしばらくしても思い出すことが出来ず、しばらくもんもんと暮らす、すずめなのであった。