未来への報償③
そんな男が、誰よりも木手を信頼してるなんて信じられはずない。なのに、考えれば考えるほど、それは間違いない事実だと思えた。そうすると、信じられないという気持ちよりも、ただ可笑しくて可笑しくて、笑い出してしまいそうな衝動が込上げてくる。
そして、切なくて愛しい感情が木手の胸を暖かくする。
木手は力の抜けた笑みを浮かべて、平古場へと向ける視線を少しだけ柔らかなものにした。
「そうですね、諦めなければいいだけだ」
きっと答えはいつだってシンプルだ。
どれほど難しいことでも、目指す未来があるなら、簡単に諦められることではない。だから、木手はもう迷うことは止めようと思った。平古場のように、自分の信じる道を進もうと決めた。
平古場は木手の珍しい穏やかな笑みに、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに屈託の無い笑顔を浮かべて同意をした。
「あーー! 今すぐ練習したくなった!!」
「そうは言っても、今日は部活休みですからね。どこかテニスコートを借りれる場所があったと思いましたが……」
「なら、コート借りれるか確認してみるか。借りれるようなら、裕次郎達にも声かけて一緒に練習しようぜ」
「そうですね」
携帯を取り出しながら、屋上の出口へと向って歩き出した木手の背中に、平古場は大きな声で呼びかける。
「永四郎!!」
海から強い風が吹く。
木手へと向って吹く風は平古場の声をより耳へと届けた。
そして、振り向いた木手に、平古場は最高の笑みを浮かべて叫んだ。
「今度は絶対に負けたりしねぇ! わったーの強さ、本土のやつらに見せつけてやろうぜ!!」
木手は、あまりの眩しさに目を細めた。
それは太陽の所為なのか。
それとも――。