世界最後の一日1
朝からチャイムが鳴る音。
日本と談笑しながら朝食を取っていたというのに、こんな時間から・・・と若干不機嫌になる。
「ボンジュー、世界のフランスお兄さんだよ☆」
そう、周りにハートを飛ばしながら、玄関から顔をのぞかせたのは髭――フランスだ。
「んだよ、髭、こんな時間に・・・」
「朝から酷いっ!」
「まあまあ、お二人とも、玄関で喧嘩は・・・」
「日本がいなかったらフルボッコだぞ、クソ髭・・・」
「あー、はいはい、そんなに日本がいいのねー」
かあああっと、顔に赤みが帯びる。
「んなわけ、ない、!」
しどろもどろに出された単語は意味なく空中で踊る。
「・・・はあ、とりあえず上がらせてもらうよ、日本?」
「え、えぇ・・・・」
そういえば、と言葉を付け足しながら、フランスは小さな紙袋をつくえの上にのせた。
「お兄さん特製のマカロン♪明日、終わっちゃうから、せめてもの餞別よ」
「何が餞別だ、お前にもらうものなんて何も無――」
いつものフランスじゃない。
その顔には陽気さはなく、悲しみの色がかかっていた。
「・・・・・、しょうがねぇな、」
「イギリスさん・・・」
「お前のマカロンなんて食べ飽きたけど、腹減ってるし、食ってやるよ、喜べばか」
そう言って、綺麗に装飾が施された袋の中に手をいれ、てっぺんにあった薄桃色の固形物をつかむ。
そして口に入れた。
(美味い・・・・・)
やはりいつ食べても、隣国の作るものは美味しかった。
素直に言うとなんだか悔しいので言わないが・・・。
でも今日だけは特別。
「・・・・悪くねぇんじゃねーの・・・」
(おや、今日は素直ですね・・・)
(明日ロンドンは晴れだな・・・。あ、明日はないっけ・・・)
日本とフランスが目配せをしている。
すると二人同時に笑い出した。
「ちょ、お前らなんだよ、ばかぁ!!」
めきめき、と。
その時確かに音がした。
その数秒後、なにかが割れる音。
ああ、間違いない。
これはきっと・・・・。
「Hey!日本、遊びに来たんだぞー!・・・って、おっさん達もいたのかい」
「おっさんってなんだよ、○○○○!!」
「あーらら、口が悪いよ、坊ちゃん」
「お前もその坊ちゃんってのやめろ!」
騒がしい。
いつもの騒がしさだ。
騒がしいのは苦手なはずだが、何故か心地よく感じた。
「この様子ですと、ほかの方もいらしっしゃいそうですね・・・。」
「そうだな。」
フランスはというと、勝手に日本の家に上がりこみゲームをしようとするアメリカの世話をしている。
「とりあえず・・・」
私達もいきましょうか、と日本が微笑んだ。