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同調率99%の少女(5) - 鎮守府Aの物語

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 倉庫付近を道路に沿って歩いて進み、一行は海岸沿いへ来た。
 海沿いには、人工の海岸と、物資運搬用の小さな港湾施設がある。その港湾施設は倉庫群や本館とはやや離れたところにあるため、提督は海岸に沿って伸びる遊歩道の途中まで進んで紹介した。その港湾施設は鎮守府・艦娘だけでなく、民間船舶にも開放されているが、基本的には防衛省や企業が使うことを念頭に置いて作られている。さすがにタンカーとまではいかないが小規模の護衛艦なら2隻同時に停まっても航行に余裕があるくらいには整っている。60〜80年前には北寄りにあったが現在では鎮守府に近い位置に移設され、大幅に拡張されていた。
「ここは港湾施設になっています。わかりやすくいうと、うちだけでなく防衛省や提携企業も使える港です。実際にはうちの所有ではなく、管理を委託されている形になっています。」
 そう説明した提督の指さした先の港は、今は何も停泊していない状態だが、那珂や三千花らにとっては十分広すぎてどこまでが鎮守府の敷地なのか分かりづらかった。

 鎮守府のある一帯は、大昔(60〜80年前)には海浜公園が隣接された人口の海岸と、民間の船舶業者が所有する敷地などがあった。付近には少し離れて隣の駅との境目あたりに大型のショッピングモールや別の公園、そして病院などがある。途中は住宅街、そしてこの時代にはすでに存在しないが、鎮守府Aの目の前の区画にはかつて県立高校があった。今その広い区画には小さなショッピングセンター街ができていた。地域活性化のために海岸沿いの区画には長い年月の間に様々な施設が建てられたものの採算がとれずに最終的には売却され大半が国に戻っていた。21世紀も終盤となった現在では、その広いエリア一帯はいくつかに分割され、それぞれ別々の目的に使われている。その内の一つに鎮守府Aが開設された。

 やっとそれらしい説明の施設の見学ができているためか、三千花や書記の二人は積極的に質問をし、提督から丁寧な回答を受けている。一方の那珂はというと、自身の時とは見学のルートが異なっていたため途中の倉庫や港湾施設は初めてだったが、グラウンドの先の海岸沿いは二度目でありすでに馴染みがある。
 再び見る景色に思いを馳せる。
 海を眺めると、ワクワク心踊る気持ちになったり、心穏やかに休める気持ちにもなる。海はすべての生物の生まれ故郷とも言え、本来はもっと近しい存在のはずなのに、そこを荒らしている異形の存在のために海からあらゆる生物が遠ざけられてしまっている。やつらのために、人は海に触れにくくなり、いつしか自然と興味を失って、今では一般人は海に近づくことを忘れてしまっていた。このままではいけないはず。
 提督の考えには賛成だ。あの人がそういうふうにするならば、自分は艦娘として、他の艦娘にはできないことを行なって、人々に海を思い出してもらい、楽しく過ごしてもらえるようにしたい。
 三千花らが提督に話す一方で沈黙を保っていた那珂はそのように思いを巡らせていた。

「じゃあ、次行こうか。次は……おーい那珂。なにポケッとしてるんだ?」
「へ? あ!はーい! いきましょいきましょ〜」
 思いをはせる時間が少し長かったためか、提督の掛け声に一瞬気づくのに遅れた那珂は珍しく素で慌てて、提督らのもとに駆け寄っていった。