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同調率99%の少女(5) - 鎮守府Aの物語

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 一行は海岸沿いを倉庫のあったほうとは逆の方向に進む。そこは昔から存在する人口の海岸だ。海水浴に適した水質ではないため、泳ぐことはできないが環境保全と景観保持のために70〜80年以上前の形が保たれている。
 そして港・倉庫群、本館の中間には多目的に使えるグラウンドがある。ここでは艦娘たちの訓練のほか、地域住民や企業・団体に貸し出す目的に設置されている。(ただし海に非常に近いため、災害時の避難場所としては不向きとしてその目的からは除外されている)

 海岸を背に、那珂たちはグラウンドの端に立って提督からの説明を聞いている。
「グラウンドもせっかく大本営に用意してもらったのに、今は完全に遊ばせている状態でね……。ときどき五十鈴という艦娘や夕立たちが運動するのに使うくらいかな。」
 閑散としたグラウンドの様子を見て、三千花は提督に提案も兼ねて質問をした。
「あの、西脇提督。もしですよ?うちの高校と提携できた場合、このグラウンドをうちの高校の生徒が使ってもいいのでしょうか?」
「その辺の運用はまだしっかりとは考えていないんだ。だから提携してる学校に対してはある程度自由に使ってもいいよと開放してもいいね。その辺は責任者である俺次第だから、アイデアがあればどんどん言ってくれたら助かります。」
 提督をどうにかすれば、どうやら自由に使えそうだと三千花や書記の二人らは湧き立った。

「ねぇ提督。五月雨ちゃんたちの中学校にはここ使わせてないの?」
 那珂は気になって聞いてみた。
「一応自由に使ってもいいよと言っているんだけど、彼女らはここの使い道までは頭が回らないみたいなんだ。」
「そりゃあ、4人じゃ広すぎるもんね……。あと提督。対外的に言えるくらいに運用固まっていないと、五月雨ちゃんたちの学校も使わせてって言い出しづらいと思うよ。そこは文書化なりまとめておいたほうがいいと思うな。」
「う……たしかに。」

 那珂の指摘に提督は図星を付かれた様子を見せる。さらに那珂が畳み掛けるように指摘をする。
「五月雨ちゃんも提督と似たとこあるみたいだけどさ〜、二人とも頭の中だけで残しておかないで、私や時雨ちゃんだけでもやれるように知ってること手順書みたいにもっと書き残しておいてね。」
 もはや那珂に頭が上がらない状態になってしまった提督は那珂のいうことにはい、はい、と答えるだけになった。

 その様子を見た三千花は、那美恵にやりこめられる大人も可哀想だなと思った。と同時に、西脇という人は那美恵から認められているとも思った。それは、ちゃらけている普段の仕草や振る舞いとは裏腹に、何事もそつなくこなせる、本気で物事に取り組むときの彼女の観察力や行動力を一番良く知っている親友の三千花だからこそ傍から見て感じとれることであった。
 取り組むとなったら全力で、一人でもやれる那美恵だが、興味のない、できないと判断した物に関してはあっさりと手放して他人にすべて任せる。それ以外は一人でやろうとする那美恵だが、提督に対する態度が普段他人に見せるそれと違うと三千花はなんとなく気づき始めた。甘えてるというか、尽くそうとしている。親友があそこまで他人(しかも学生ではない大人の男性)に何かを促すのが珍しいと感じていた。
 提督と那美恵の付き合いがどのくらいの深さなのかそこまでは知らない三千花だが、着任してから2ヶ月程度と言っていた那美恵と提督のわずかな掛け合いを見て、お互いある程度信頼を得合っているのだなと捉えた。