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同調率99%の少女(5) - 鎮守府Aの物語

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 那珂たちは演習用プールに向かって専用レーンの水路から発進した。それを見届けたあと、明石と三千花ら4人は訓練施設に正規の入り口から入り、観客席のような感じになっているプールの脇のスペースへと入った。そことプールとの間には少し高めの仕切りがあり、明確にエリアが分けられている。プールは本格的な戦闘訓練にも対応可能にするため、一般的な50mプールには届かないが近い広さで作られている。(ただし鎮守府Aの演習用プールは空母艦娘用の訓練設備と共用のため単独では25mプールほどしかない)

 プールに浮かぶ3人が端にいる三千花ら3人を確認する。明石はそのスペースからプールサイドへと上がり、那珂たちに向かって合図をした。

「じゃあ3人とも。準備はいいかな?」
「「「はい。」」」
「今回はわかりやすくするために特別ルールです。少しでもペイントがついたらその人は轟沈ね。小破判定も、中破判定も一切なしだから、艤装の健康状態の表示は無視してね。」

 明石が今回の演習についてルール説明をした。通常の演習はペイント弾の付き具合によって小破・中破・大破を判定する。ペイント弾の特殊な染料により、艤装の健康状態が擬似的に変化するような電磁バリア代わりのチップを衣類に取り付けることになっている。
 那珂たちはその特別なチップを今回もつけてはいるが、素人の見学者にわかりやすくするため、また通常の演習だと平気で20〜30分経ってしまうため長々とやらずにすませるために、明石は特別ルールをその場で決めた。

 その説明を聞いて那珂・五月雨・村雨はそれぞれ異なる思いを述べる。
「一撃必殺ってことかぁ〜明石さんまーたすんごいルール決めるなぁ〜。まーでも面白いからいっか。」
 後頭部をポリポリ掻きながら那珂。
「ふぇ〜ん!あたし絶対すぐに当たっちゃうよ〜。真純ちゃん、先に負けたらゴメンね〜。」
始まる前からすでに負ける気マンマンの弱気な五月雨。そんな友人を鼓舞するように村雨はフォローする。
「まだ始まってないのにやめてよー。きっと意外に勝てたりするわよ。なんとかなるから頑張りましょ?」

 3人とも異なるタイミングで深呼吸をした。開始前のおしゃべりが終わって一拍過ぎたことを確認し、明石は振り上げた手を、叫びながら下ろした。


「それでは始め!!」


 合図をしたあと、明石はすぐさまプールサイドから降りてプール脇のスペースに戻って三千花らに解説をし始めた。

「あのぅ、明石さん。この演習って本当に弾撃つんですか?危なくないんですか?」
 初めて見る者ならば抱く当然の質問を三千花がした。それに対して明石は首を横に振って答えて三千花らを安心させる。
「いいえ。演習で使うのは専用のペイント弾なの。実弾ではないから安心してくださいね。でも実際の砲雷撃の影響範囲がわかるように、ペイント弾の中のペイントは飛び散る範囲をシミュレーションして設計されているの。だから万が一こっちに飛んできちゃっても最悪服が汚れるだけで、怪我はしません。」

 明石の説明をメモに取る書記の二人をよそに三千花はさらに質問をした。それは親友を心配した言葉だった。
「2対1なんてなみえは勝てるんでしょうか?」
「どうかな? 一瞬で勝つかもしれないし、負けちゃうかもしれません。今回は特別ルールで、少しでもペイントがついたら負けというようにしていますから、あなた達から見たらもしかすると拍子抜けするかもしれませんね。ただ実際の深海凄艦との戦いって、いろんな条件によるから、こういったルールをたまに設けてやったりするんです。」
 明石の談で、勝負はおそらく一瞬で決まると聞いた三千花ら。そう聞いたので一切目を離すことなく、那珂となっている親友を見続けることにした。少し遠いので表情はわかりづらいが、真剣な顔になっていることが容易に想像できた。