同調率99%の少女(5) - 鎮守府Aの物語
--- 11 高校生は思う
鎮守府からの帰り道、那美恵たちは駅前の全国チェーン店のコーヒーショップに入り、一息つきはじめる。
「さて、今日は半日使って鎮守府を見てもらったわけだけど、どうだった?率直な意見を聞かせて。」
那美恵が他の3人に感想を求めた。すると最初に三千花が口を開いた。
「興味深いしなみえ含めて応援したいとは思うけれど、ちょっと先行き不安ね。」
「え?何が?」
「運用がってこと。うちの学校と提携できたとして、少し増えたからといってあそこの鎮守府を良くするのに貢献できるとはとても思えないわ。まぁ、鎮守府の運用とかそのあたりまで私達が気にするところではないんだろうけど。それに私達学生をバックアップしてくれる先として学校を説得できるほど頼れるとは思えない。」
三千花が辛辣な意見を口にする。それは、那美恵もうすうす感づいていることだった。
「まぁ、今日のことは毛内さんと三戸くんが撮ってくれた写真や動画とメモを元に報告書作るわ。でもそれでも校長たちを説得できるかどうか……。」
「みっちゃん厳しいなぁ〜。タハハ……」
信じていた親友に厳しい言葉を浴びせられ、不安を耳にしてさすがの那美恵も表情を暗くする。
「あと大人が西脇提督だけというのもやっぱり無理があると思う。」
「明石さんとかいるじゃないっすか?」
「えぇと。そうだけどそうことじゃなくて。鎮守府の顔として対外的に交渉する人、管理する立場の人がってこと。なみえ、あなた以前も西脇提督と一緒に校長を説得したって言ってたわよね?」
「うん。」
三戸の指摘をそれはそうと受けつつ流して、三千花は那美恵に尋ねた。
「私達から見れば誠実で良い人だとしてもさ、大人同士で交渉してもらうんだとしたらあの人一人だと厳しいんじゃないの?」
那美恵は目を細めて表情をやや暗くして説明し始める。
「うーん。でもあのときはあたしもまだ正式に艦娘に着任前だったし、今回みたいに説得材料集めきれなかったからだと思うの。けど今回は違う。あたし一人ではできなかったことをみっちゃんたちが協力してくれる。きっと説得させられるよ!」
最後に明るさを取り戻して希望を述べると、それでも不安なのか三千花が食い下がる。
「そりゃ私も協力はするけどさ、なんか精神論的でなみえらしくないよ。なにか自信の持てる確証があるなら別だけど。」
「うん。実はね。あのとき校長の昔の思い出の一言で提携の話が立ち消えになったけど、あの時あたしと提督、あと提督が準備してきたっていうなんか国からの資料だけで、結構いい線イケたんだよ。まだ経験ほとんどないあのときでさえイケそうだったんだから、今回はきっともっとうまくいけるってあたしは確信してるの。」
「イケるって言われてもねぇ……。」
三千花はよろしくない反応を示す。
最初に説得した当時の話を思い出しながら那美恵はさらに続ける。
「それにね、校長が言う戦いの思い出。あたしは心当たりがあるの。多分、うちのおばあちゃんが経験した昔の戦いのこと。おばあちゃんはその当事者の一人だったから。校長とうちのおばあちゃんは歳が結構離れてるから、校長は本当は昔のその小学校で起きた戦いや騒動に、巻き込まれていないんじゃないかって思ってる。年代が違いすぎるんだよ。多分、校長はうちのおばあちゃんと同じ世代か、近い世代の人たちから伝え聞いたことをただ単に言っているだけだと思う。実感のない戦いの思い出だけで、てきとーに拒否してきたんだと思う。あたしはそれがどうしても頭の中にひっかかってたんだよね。」
「……そこまで知ってるんならその時適当に言いくるめればよかったじゃないの。」
三千花は校長の弱点かもしれないそのポイントを、狡猾なところがある親友が狙わなかったことを不思議に思った。三千花の意見に那美恵は至極穏やかに言い返す。
作品名:同調率99%の少女(5) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis