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聞かせてよ、あいのうたを(アルエド+ハイウィン)

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すう、と寝息を立てる弟の顔を、エドワードは笑みを浮かべて見下ろす。
小春日和の裏庭は、午睡にうってつけの場所だ。



とある秋の日の昼下がり。
王宮の裏庭に建てられた東屋で、二人休憩を取っていたのだが。
はふ、とあくびをしたアルフォンスが、読みかけの本を膝の上に置いて小さく唸り。
目頭を指先で摘んで呟いた。
「…なんだか、こんなにいい天気だと…眠くなってきちゃうね」
「あー…そうだよなぁ」
空は真っ青、雲も殆ど無く。
気温は暑すぎず、かといって涼しすぎもせず。
なんていうか、平和そのもの、みたいな感じ?
「この後、会議とか入ってなかったよな?」
「うん、午前中ので今日の執務は終わり。…ていうか、こんな良い天気の日に会議したって、まともに議論できないよ」
「…確かに」
きっと睡魔に襲われて、案件どころじゃなくなる。





「どうしよ、ホントに眠いや。…ちょっと眠っても、平気かな」
「ここでか?」
「うん」
東屋には屋根と木製の簡単なテーブルセットが備えられているだけで、風を遮るものなんて無いに等しい。
「だって、部屋まで戻るのめんどくさいんだもん」
「けど、ここじゃ枕の代わりになるモンもねぇだろ。オマエ、枕がないとちゃんと眠れないくせに」
「そうなんだけど…動きたくないなぁ」
うー、とまた唸ったアルフォンスは、眠そうに目を瞬かせる。
「つってもなー…」
眠いと訴えているのに部屋まで無理矢理歩かせるのも可哀想だし、だからといって枕がないと夢見が悪くなる体質の弟を、このまま寝かせるのもちょっと考えものだ。
何か方法がないだろうか、そう考えたエドワードの頭に、ぽん、と一つひらめいた。
「ああ、そっか」
枕がないなら、代わりを探してやればいい。
思えばそれは、とても簡単なことで。
「…?」
アルフォンスの肩を抱いて、エドワードは自分の方に体を倒してやる。
眠気で反応の鈍い弟の頭を、ぽてりと載せた先は。
「…これなら、少しはマシだろ」
「……わあ」
自分の太股、所謂膝枕だ。
ムダな贅肉の付いていない体は、女の子のように柔らかではないけれど、木のベンチの上に直接頭を載せるよりはマシだろう。
「硬いのは我慢しろよ」
「えー、そんなに硬くないよ?」
ふふ、と小さく笑ったアルフォンスは、自分の肩に置かれた兄の手に触れた。
「国王陛下に膝枕してもらえるなんて、身に余る光栄だなぁ」
「おーおー、光栄に思え」
するりと指を絡め取り、アルフォンスはエドワードの指先に軽く唇を押し当てる。
「優しいね、兄さんは」
「兄ちゃんはガキの頃から、可愛い弟には優しかっただろ」
「うん。でも、ボクがただの弟じゃなくなってからは、もっと優しくなった」
「…………」
斜め下から兄を見上げてほにゃあ、と笑う表情は、子供の頃の無邪気なそれと変わっていない。
「結構甘やかしてくれるよね、兄さん」
「…オマエがオレを甘やかしてくれることの方が、断然多いけどな」
自分よりも少し色味の濃いアルフォンスの金髪を、繋いでいない方の手で梳いて、エドワードも小さく笑い返す。
弟の膝の上から転がり落ちかけていた本を拾い上げて、テーブルに置いてやる。
「いいぜ、眠っちまえよ。涼しくなる夕方までには、起こしてやるから」
そろりと手を離して促すと。
「うん…じゃあ、お言葉に甘えて」
「おう、おやすみ」
よいしょ、と言いつつベンチの上で長い手足を折り曲げ完全に横たわり、アルフォンスは目を閉じた。
一度だけの、ため息のような長い吐息も、すぐに深い寝息に取って代わる。
(…ありゃ)
この弟はもともと寝付きの悪い方ではないのだが、ものの数秒で寝入ってしまうというのはちょっと珍しい気がする。
よほど疲れているのかとも思ったが、エドワードの腹に顔を埋めるようにして眠るアルフォンスの表情に、疲労の色らしきものは見られない。