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聞かせてよ、あいのうたを(アルエド+ハイウィン)

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「───春にさ。オマエがオレに、花をくれただろう?」
「うん、兄さんもお返しに、花をくれたよね」
春の盛りの頃に迎える、兄弟だけのささやかな記念日に。
花言葉に準えて、お互いに贈った花。
「あれがさ、すげぇ嬉しかったんだ」
カップを両手で包み、唇を付けてエドワードはふわりと笑う。
「そんで、オレもオマエに何かしたいな、って思って」
…ねえ兄さん、誰よりあなたを、あいしてるんだ。
言葉という形にして気持ちを差し出してくれるのは、いつもアルフォンスからだった。
それに対して、解ってるよ、とか、オレもだよ、とか。
形にするのが苦手な自分は、いつだってそんな風に享受するばかりで。
だから時には、自分から弟に何かをしてあげたい。エドワードはそう思ったのだ。
「何が良いだろうって思ってたときに、偶々アイツらからあの歌のこと聞いて。これなら、って思って」
ちろりと目線を上げ、弟を見る。
「ホントはもっとちゃんと練習してから、歌ってやりたかったんだけど。歌詞は書き留めちゃいけない、ってのがしきたりだから、憶えるのが精一杯で…ごめんな、下手くそで」
「そんなことないよ、上手だった」
大臣達との議会や、民の前での演説など、聞かせることに慣れている兄の声は、元々よく通るし耳触りも良い。
歌声は滅多に耳にすることがないけれど、眠りの中で聞いた小さな声も、先程聞いた声も、とても心地よいものだった。
「みんなに自慢したいくらいだよ」
「…勘弁してくれ、そもそもオレが歌ってるってこと自体が、しきたりを破ってるんだから」
照れ笑いと苦笑いの混ざった表情で、エドワードはカップの中身を飲み干す。
「ちぇ、残念だなぁ」
ソファの背もたれに身を預けて、アルフォンスは小さく笑った。
「……でもどうして、ウィンリィは教えてくれたのかな」
「あの歌、ジンクスがあるらしいんだ」
「ジンクス?」
首を傾げたアルフォンスに、エドワードは頷く。
「歌を贈った相手とは、生涯添い遂げられるって」
「…………」
「オレ、ジンクスとかまじないとか、あんまり好きじゃないんだけど。だけど偶には、そういうの信じてみてもいいかなって」












───あたしの母さんもばっちゃんも、おじいさまや父さんに歌ってあげたんですって。
何故自分にこの歌を、と尋ねたエドワードに、ウィンリィはそう言ってにっこり笑った。
───あんたから、歌ってあげて欲しい人がいるから。
───だからあんたに教えてあげようって、ふたりで考えたの。
ね?と彼女が視線を向けたのは、その言葉に頷いた、ひとつ違いの蒼い瞳の青年。
───僕らだけが幸せになるんじゃ、意味がないんです。
───あなたとアルフォンスくんにだって、幸せになる権利と義務があるんですから。
───だからエドワードさん、僕たちみんなで、幸せになりましょうよ。
従弟の言葉はとても優しく深く、重みのあるそれで。
───幸せはきっと、多くて困るくらいが丁度良いんです。
ハイデリヒはウィンリィの肩を引き寄せて、彼女の腹をそっと撫でた。



「アル。…アルフォンス」
居住まいを正し、エドワードはまっすぐに弟を見る。
「だからオレはオマエにだけ、あの歌を贈るよ」
ジンクスに準え彼女たちがくれた、形のない祝福を。
「兄さん…」
「…ずっと、一緒にいような?」
兄の言葉に、アルフォンスは笑顔で頷いた。
「───うん」




いつかこの身が朽ち果て風と舞い、空に還っても。



命を紡ぎ、愛を紡ぐ歌を。





ただひとり、大切なひとのためだけに。