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聞かせてよ、あいのうたを(アルエド+ハイウィン)

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「ところで兄さん、さっき約束したこと憶えてる?」
「さっき?」
「東屋で言ったじゃない。子守歌の続きのことだよ」
「…ああ、あれな」
何だろうと一瞬考えたが、エドワードもすぐに思い出す。
「ちゃんと聞きたい、って、ボク言ったよね」
「おう、約束したもんな」
あの時のアルフォンスは夢現の状態だったから、もしかしたら忘れているかもしれないと思っていたのだ。
「なんだか、子守歌っていう感じがしなかったんだけど…」
「だな。あの続きは、意味合いが全然変わってくるんだ」
「子守歌じゃないの?」
頷くとエドワードは一度深呼吸して。
「…じゃあ、もう一回。最初から通して歌うから、聞いてろよ?」
そう言って、ゆっくりと唇を開いた。




  この掌で くるんだ祈り
  夢の彼方へ たどり着けるように
  花の香りも 月の光も
  眠るあなたを 護り続けるわ
  わたしの腕も

  あなたのその笑顔が 光を喚びさます
  夜の闇でさえも 朝を生んで 命を紡ぐの



「……ここまでは、オマエも知ってるだろ?」
「うん。母上がよく、歌ってくれてたもの」
「でな?この後からが、ウィンリィに教えて貰った歌詞だ」




  空の蒼さも 木々の翠も
  冴えて眩く 瞳を灼くけど
  たいせつなあなたの手を 繋いで離さないでいれば
  世界の果てで 砂に埋もれても
  微笑っていられる

  私の歌う声が 眠りを誘うでしょう
  その羽を休めて 目が覚めたなら
  口づけをあげる

  傍にいるから 一緒に歩くから
  あなたのその手つなぎ
  愛してるからずっと だからどうか微笑って

  あなたと辿る跡は いつか空に還り
  風と舞うのでしょう
  花になって 月と輝いて

  いのちの海へゆく





「…こういう歌詞だ」
「へえ……」
歌い終えたエドワードは、喉を潤すように紅茶を口に含む。
「なんだかこう、”女の子の為の歌”って感じがするね。甘くて深くて、ちょっと可愛いっていうか」
「ご明察。この続きの歌詞は、女だけが代々教わるモンなんだと」
「女の子だけが?」
「そ。母親が娘に、娘が自分の娘に、っていう感じで。だからオレ達は知らなかった」
「……そっか、ウィンリィとアルフォンスさんが教えてくれたって、兄さんさっき言ってたもんね。…あれ?」
記憶を掘り起こしたアルフォンスが、ふと気づく。
「じゃあどうして、アルフォンスさんが歌詞を知ってたの?」
女性だけが教わるという兄の言葉通りなら、彼がこの歌詞を知っているはずがないのだ。
「それなんだけどな。…本来この歌詞は、歌える場所ってのが決まってるらしい」
「場所っていうのは…物理的に?」
「あー…いや、正確には”歌える場所”っていうよりも、”歌える場面”だな。ついでに言えば、歌う相手も決まってるんだ」
「……よく解らないよ。どういうこと?」
謎かけのような言葉に、アルフォンスは首をひねるしかない。










「そうだな、ヒントを出すか。…まずは”歌う相手”の方な」
エドワードはカップをソーサーに戻し、どこか楽しげに笑みを浮かべて足を組み替える。
「────ウィンリィはこれを、アルフォンスのためにしか歌わない。つまりオレは、オマエのためにしか歌わない、ってことだ」
「ウィンリィはアルフォンスさんの為にしか歌わなくて、兄さんはボクの為にしか歌わない……」
ウィンリィとハイデリヒ、そしてエドワードとアルフォンスに共通するもの、というと。
「…恋人にしか歌わない、ってこと…?」
「惜しい、ちょっと違うな」
「違うの?」
「だってオレ、オマエのことただの恋人だって思ってねぇもん」
「……それは…そうだよね」
躊躇いのないその言葉に、アルフォンスも頷く。
確かにアルフォンスも、自分や兄の抱える想いが、恋人という枠組みなどとうに越えていることは理解している。
生半可な気持ちや覚悟で、最も濃い血の繋がりである兄弟に触れることなど出来ない。
それにウィンリィとハイデリヒだって、すでにお互いを生涯の伴侶と決めていて、結婚式の日取りを考えるところまで来ているし───。
「もしかして…」
そこで不意に気づく。
共通しているのは、厳密に言えば4人ではなく、ウィンリィとエドワード。
そして自分達の間にある関係と、彼女達の間にある関係。
「自分の、”伴侶”の為に歌うの?」
「その通り」
エドワードがにか、と笑う。
二組の人間の間にそれぞれ横たわるのは、生涯共に過ごそうという、伴侶としての関係。
恋人というには深すぎて、だけど夫婦と呼ぶにはまだ少しだけ照れくさい間柄。
「じゃあ次だ、”歌える場面”。…オレ達はとっくに、それも済んでる。アイツらも済んでて、もう次の段階に行く準備も始めてる」
「次の段階?」
「…そうだなぁ、兄弟のオレ達にはできないことだな。だけど形にはこだわらないって決めたから、それはいいんだ」
どこか吹っ切るような言い方。
「さ、どの場面で歌うのか、解るか?」
「……うん、解ったよ」
兄弟では進むことの出来ない『次の段階』とは、結婚という”形”。
その前の段階、といえば。
「プロポーズ、だよね?」
「正解」





そう、この歌は。
少女たちが成長して大人になり、本当に愛する人が出来たとき、初めて聞かせる歌。
生涯の伴侶と定めた相手からの求婚に対する、承諾の意味を込めて、彼女たちは歌う。


つまりこの歌の、続きの歌詞を知っている男性は。
心底愛し合い、将来を誓った女性がいる、ということ。