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滅びかけた都の話

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──滅びた古の都には、古代竜が住んでいる。

高尾和成がその話を聞いたのは、幼い子供だった頃だ。
彼が住んでいる村の山の上にはずっと昔に繁栄していた都がある。今は寂れてしまっていて、居るのは都を守っていた古代竜が一匹だけだと言う。
古代竜は、おとぎ話でしか聞いたことがない。この世界には竜が居るけれども、世界で二番目に産まれた強い力を持った竜だ。
たまに古代竜を狙って冒険者や何処かの王国の兵隊が来るが、行方不明になるか何も発見できずに終わっているとか、言われていて、高尾本人も古代竜の存在は全く信じていなかった。
「……竜の嫁って生贄じゃん」
麓の村で厄災が続いて、古代竜が怒っていると言う事になって高尾は古代竜の嫁にやられることとなった。
実際のところは生贄だ。昔から厄災が起きれば古代竜に生贄を捧げて、厄災を抑えるというのがあり、身内を亡くして一人になった高尾にその役目が回ってきた。
今夜は満月。
月色が星のヒカリと調和しながら柔らかく照っていた。
新品の衣装を着せられて、途中までは送って貰って後は自分で歩いてやってきたのは祭壇らしい場所だ。
竜のレリーフが彫られている純白の祭壇に座りこむ。祭壇の石は冷えていた。
食べるなら速く食べて欲しかった。そう想い夜空を見上げたとき、満月が消えた。
巨大な影が高尾を覆い、目に見えたのは童話に出てくるような巨大な竜、影は祭壇にどんどん近づいて、消えた。
「百年と……細かいところは忘れたが……百年ぶりにしておくか。人間が贄を送ってくるとは」
「……え?」
目の前にいたのは緑色の髪をした高尾と同じぐらいの年齢の男で、眼鏡をかけていた。
黒いローブのようなものを着ていて、神経質そうだ。身長は高尾よりも高い。
「面倒なのだよ……だが、捧げられたものは仕方がないか。お前、何処に行きたい。連れて行ってやる。村には帰れないだろうから遠くの街にでも……」
「ちょっと待った!!」
「何だ」
不機嫌そうに男は言う。話を遮られたからだ。高尾は深呼吸をしながら男に聴いた。
「アンタ……滅びた古い都の古い竜?」
捧げられたと男は言っていた。と言うことは古代竜のはずなのだが、目の前にいるのは人間にしか見えない男だ。
「そうだ」
「人間じゃん」
「……人間の姿を取っているだけだ。元に戻っても良いが……」
古代竜ならばこれぐらい出来るのだろうと高尾は納得してしまった。元に戻ったとするならば先ほどのあの大きな姿なのだろう。
高尾は慌てて首を振って否定した。
「食べられるから嫌だ……でも、人間の姿でも人間を食ったら……」
彼は大きく……それこそ何度も言われた言葉をまた言われて飽き飽きしているように……嘆息した。
「人間など、食わないのだよ」
「食べないの?」
「どうせ厄災が来たから贄として寄越されたのだろうが、俺は何も関与していない。今まで捧げられた贄は全部、新天地に送った。だからお前も送ってやる」
高尾が来た理由を彼はすぐに察して、その対策を打とうとしていた。
贄として選ばれるものは村に居なくても良い者ばかりである。厄介者払いとして贄にさせられることが多い。
彼は贄が来るたびに新天地へ、新しい生活が出来る場所へと送っていたらしい。村に帰ってこないのならば村人は勝手に竜に食われたとか言うだろう。高尾は納得していた。
改めて高尾は竜を見る。神経質そうだ。
「新天地って言ったよね。何処でも良いんだ」
「送るならすぐだ」
「それなら、古の都に行きたい」
こんな答えが返ってくるとは想わなかったのだろう。竜は目を見開いて、反応を止めてから落ち着くようにして眼鏡のブリッジを押し上げた。
「……行ってどうする?」
「見たいんだよ。竜だけしか住んでないって言うけど……竜だけ?」
高尾は彼を指さした。不快そうに彼は眼を細める。
「人を指さすなと習わなかったのか。そうだ。昔は五人ほどいたが、一人は別の場所で眠り続けているし、他の四人は何処かに行った。人間も死んだか移住したからな。居るのは動物や精霊だけだ」
「綺麗なところだったんだろう。見たい見たい見たい。竜様見せてよ」
「……その竜様というのは辞めろ」
「名前知らないし。村にだって名前は伝わってなかったんだし、名乗ってないじゃん。俺は高尾和成だよ」
正当なことを高尾は言う。彼は名を名乗りはしていないし名前は何処にも伝わっていない。
高尾は自分の名を伝えた。少しだけ沈黙が落ちてから彼は名乗った。
「……緑間真太郎だ。正式な名もあるがコレも名だ」
「案内してよ。真ちゃん」
「……見たら次の場所を教えるのだよ。そこまで送る」
会話もするのも嫌だというように緑間は低い声で話すと祭壇の上に立ち、軽く手を動かした。
そこから世界が切り替わり、向こうの方に道が出来上がる。緑間はそのまま歩き出し、高尾は後ろから着いていった。



「……そして君は、高尾くんと二人きりで生活しているというわけですか。しかも契約して」
「コイツが勝手に居座っているだけなのだよ」
数百年、もしくは千年ぶりだろうか。
久しぶりに会った古代竜の一人(彼等は匹で数えられるのは好きではない)である黒子テツヤは緑間に向かって言う。
都が滅びてからは吟遊詩人をしていると言うが、黒子が歌を歌っているところは緑間にはどうしても想像が出来なかった。
滅びる前の都でも黒子は歌よりも読書が好きな竜だった。
「君もここに固執する必要はもう無いんですから新婚旅行に出かけるとか」
「お前もお前でアレと旅をしているようだが……ドラグーンを作ったのはお前の方が先だろう」
アレ、と緑間が言ったのは向こう側で剣の素振りをしている赤い髪の男だった。火神大我、黒子が契約した男である。
剣は都にあった剣だ。とはいえ、特別な力はない。
古代竜である彼等は契約をすることにより、契約者に様々な力を与えることが出来た。
契約者はドラグーンとも言われているが、人間の世界ではおとぎ話の領域だ。
ドラグーンは竜の加護を受けた人間であり、一般人とは比べものにならないぐらいの力を持つ。
「楽しいですよ。黄瀬くんもドラグーンを作りましたし、青峰くんは……プリーチャーなら彼が寄越したようですが」
「紫原は?」
「最後にあったのは、少し昔ですが元気そうでした。ドラグーンについては聞きませんでしたね」
黄瀬こと黄瀬涼太も古代竜の一人だ。今は旅をしているようだが緑間は逢っていない。青峰大輝も古代竜だが、彼も場合はプリーチャーが居るようだ。プリーチャーは神竜王から信託を受けたものである。神竜王とは黒子が彼と呼ぶものだ。 紫原敦も古代竜の一人だ。少し昔と黒子は言うが彼等は永遠に近い時間を生きることが出来るため、少しが、
どれだけの時間になるかは不明だ。
「……奴は寝ているのか」
「彼が……神竜王が寝ているからこそ、今の世界の平和が保たれているのです」
彼等が闘った敵は完全には滅ぼせず、神竜王が力のほぼ全てを使って封印しているために今の世界の平和は保たれている。
そのことは古代竜達だけが知っていればいいことだ。
二人が話していると、先ほど話題にしていた高尾と火神がやってきた。
作品名:滅びかけた都の話 作家名:高月翡翠