ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第2話
書いてある内容も。
オレはその紙切れを手に取り、読んでみた。
『そうとは限らないんじゃないか?
得にあいつはかなり疑ってる感じだったぞ』
・・・・・・・・・・?
その紙は置き、他を読んでみる。
『そんなのはどうでもいい。
とにかく僕は、早くこれを終わらせたいんだよ』
・・・よく見ると、1枚目とは筆跡が違った。
また他のを手に取る。
『俺にはどうしたらいいかわからないんだ。
これ以外方法が思いつかなかった』
今度は、1枚目とよく似た筆跡・・・たぶん同じだろう。
これは・・・・・会話か?
ソロはここで、誰かと筆談していた・・・・・・・・・・!?
レック「・・・・・・・・。」
もう1枚、手に取る。
『僕はいいよ?
別に君が生きようと死のうと関係ない。
僕は君がいなくたって生きていられるもの。
あはは、邪魔されなくなるから逆に好都合かもね』
これは・・・2枚目と同じ筆跡だ。
やはりソロは、この部屋で誰かと筆談をしていたのか・・・?
これは、一体・・・・・。
「レック?」
レック「!!!!」
肩が跳ねた。
すぐさま紙を机に置いて振り返ると。
・・・・・・扉の前に、ソロが立っていた・・・・・・・・・。
ソロ「・・・・・・・・・そこで何してる?」
レック「・・・ぁ・・・・」
言葉が詰まって出てこない。
ソロ「・・・・・・・・・・・・・。」
ソロが無言で歩み寄ってくる。
オレの横を通り過ぎ、机の上を眺めたあとオレのほうを向いて言った。
ソロ「・・・・・・・見たのか」
レック「・・・・・・・っ・・ごめ・・・」
ソロ「謝らなくてもいい。わかってる」
ソロはふふっと笑ってベッドに腰掛け、自分の左手を右手でゆっくりと撫でた。
レック「・・・ソロ・・・オレは、お前が心配で・・・・・・」
ソロが怒っていないことはわかったが、オレは深く考えずに言い訳をしてしまった。
レック「本当にごめん!さっき血が出てたから・・・何かあったんじゃないかって、・・・思って・・・・・」
来てみたらこんなだったから、とは言えなかった。
勝手に入っておいてそれはさすがにまずいだろう・・・。
するとソロは、左手の袖をすっと肘までまくり上げて、オレに見せた。
ソロ「これのことだろ?」
レック「―――――!!!」
ソロの左腕には、手首から肘にかけて滅茶苦茶に何十本もの筋のようなものが入っていた。
だがよく見れば、それは酷いケロイドだとわかる。
何か刃物で切り刻んだ痕だ。
ケロイドは魔法では治せない。
太いもの、細いもの、長いもの、短いもの・・・
不規則に滅茶苦茶に、・・・見れば見るほど痛々しい。
レック「・・・・・・ソロ、・・・・・・・・・」
ソロ「ついさっきやったのがこれだ。
うっかり深く切りすぎちまってな。血が止まらなくなったんで回復呪文をかけてきた」
レック「ソロ・・・何を・・・・・・・」
ソロ「・・・・・・。
見たらわかるだろ?」
ソロは机の上のナイフを手に取って、左手にあてがう。
レック「・・・!?おい、やめ・・・」
ソロは突然俯いて、口の端を釣り上げた。
ソロ「くふっ・・・・ふふ。
ああ、わかってるさ。わかってる。
お前が今何を思ってるのか、手に取るようにわかる」
ゴトンとナイフを取り落とし、ソロは呟いた。
ソロ「ああ、知ってるさ。言われなくたってずっと前からな。
俺は病気なんだ・・・おかしいんだ。
お前だって今そう思ったろう?」
レック「・・・・・・・っお前・・・・・!」
ソロ「わかってんだよ・・・
俺自身自分で自分が怖くてたまらない。
でも今回は何か・・・・違う」
ソロは立ち上がると、ナイフを拾って机に置いた。
そのままあの紙切れを1枚手に取り、しばらく眺めたあと、さも可笑しそうに笑った。
ソロ「あぁ・・・そうかよ。所詮俺はお前には逆らえないさ・・・」
レック「・・・・・・・・どうして・・・・・・・」
ソロ「ん?」
レック「どうしてそんなこと!
う・・・腕、傷だらけじゃねえか」
ソロ「・・・お前には理解できんだろうな・・・・・」
レック「・・・っ!」
まるで別人のように重く低い掠れたような声でそれだけ言うと、
ソロは部屋を出ようとした。
オレはまた、考えるより先に言葉を発していた。
レック「待てよ!
オレたちは仲間だろ!?
何かあったなら話してくれよ!!」
ソロの足が止まる。
レック「その紙切れだって・・・誰かと筆談してたんだろ。
・・・・・誰・・・・・・なんだよ」
ソロ「・・・・・・・・・・・・・・。」
レック「誰なんだよ・・・・・ソロ!
お前は誰とッ」
ソロ「レック」
レック「!」
ソロはオレの目を見て、冷たい声色で言った。
ソロ「お前がそれを知ったところで何も変わりはしない。
今までもそうだった。
・・・・・今回は少しだけ会話が時間差でずれていたが・・・・・
どうやらそれだけみたいだ。
もう、疲れた」
・・・・・オレは何も言えなくなった。
ソロ「・・・変なこと言って悪かった。
忘れてくれ。
・・・・・・・じゃあな」
言い残し、ソロは部屋を出て行ってしまった。
・・・追いかける気にはなれなかった。
オレは暫くその場に佇み、床を見下ろしていた。
血のあとが点々と出入り口の扉まで続いていた。
2日目 06時13分 ―レック―
「レックさん!レックさん!」
サマルらしき声がぼやけた頭の中に響き、誰かに肩を揺すられてオレは我に返った。
だんだんと視界が鮮明になっていく。
サマル「レックさん!大変だよ・・・!」
サマルが机に突っ伏したオレの服を引っ張りながら、なんだかとても切羽詰ったような声で言った。
サマル「ソロさんが・・・」
・・・え。
サマル「ソロさんがいなくなっちゃった・・・!」
な・・・・・に・・・・・・?
急いでリビングに向かう。
既にみんな集まっていて、・・・あの両開きの出入り口は開いていた。
ソロがいない。
アレフ「1人で出歩くなんて危険すぎます・・・!
早く探しに行かなくては!」
ロト「待てアレフ、これはもしかしたら・・・
既にゲームがスタートしているのかも知れない」
レック「!!」
昨日読んだあの注意書きには・・・
“犠牲者”は、ゲーム開始と共に姿を消すとあった。
じゃあ・・・
“犠牲者”は、ソロだ・・・・・!!