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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第2話

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俺たちのこと見てるって言うのかよ・・・・・・?」

エックスがそう呟いた瞬間、ピシッと音を立てて壁に文字が浮かび上がった。

『ああ、見ている』

―――――――!!!

全員が凍りつく。

エイト「あ・・・・・貴方は一体何者なんですか・・・・・・・」

エイトが恐る恐る尋ねると、壁にまた文字が浮かび上がった。

『今は答えられない。
いずれ分かるさ』

・・・・・・・・・・・誰も一言も喋れない中、やがてその文字は音もなく
すうっと消えた。

・・・・・・・・・・静寂。

・・・・暫くして、重い沈黙を破ったのは、・・・サマルだった。

サマル「ボクは・・・・・その、この警告に従ったほうがいいと思う・・・・・」

少ししてから、ロトがあわてたように言った。

ロト「俺もそう思うが・・・とにかく、・・・何かあったら必ず誰かに知らせるようにしてくれ」

それぞれ頷く。



小テーブルをどかし、重い扉を開ける。

中は普通の民家のような、綺麗で広い部屋だった。

ソファ、ダイニングテーブル、奥にはいくつかの扉と・・・
キッチンまである。

アルス「・・・わぁ、けっこう広いね」

アレン「ここが拠点になるのか・・・」

奥の扉はそれぞれバスルームと、12部屋ある短い廊下だった。
おそらく寝室だろう。

エックス「確かこの状態で出るとゲーム開始だよ・・・な。
ちゃんと準備とかしといたほうががいいよな」

アベル「いきなりこんな状況になったんだ、精神的にも疲れているだろうし・・・
今夜一晩くらいは休んだ方がいいかも知れないね」

確かにそうだ。
時間制限はないんだし、休養はきちんととるに越したことはないだろう。

時計を見ると、あと20分もしないうちに5時になりそうだ。

・・・もうそんなに時間経ってたのか・・・。


エイト「・・・どうします?探索は休んでからにしますか?」

ロト「そうだな。やっぱり一度睡眠をとって、体力を回復させてからにしよう。
たぶん屋敷の外に出なければならないこともあるだろうしな」

エックス「そーだな。・・・あーあ、なんか俺腹減ってきた・・・」

ナイン「安全だとわかる場所に来たので安心したんだと思いますよ」

アルス「そういえば今日まだ何も食べてないよね・・・まあ当たり前だけど」


言われてみると、オレもなんだか腹が減ってきた。
そう言や飯はどうするんだ?

アベル「食料は一応あるみたいだよ」

キッチンの下を覗きながらアベルが言った。

レック「マジ?」

アルス「ちょうどいいや、休憩がてらに何か食べておこうよ」

アレフ「そうですね。腹が減っては戦はできぬと言いますし」



オレたちはとりあえず、休憩を兼ねて軽い食事をとることにした。
焼いたパンと、野菜とベーコンをバターで炒めたもの。

とても質素だが、今のオレにはこの上なく美味しく感じた。
ただのパンがこんなに甘いと思ったことはなかったし、優しいバターの香りと温かさが体に染み込んでいくような気がした。
自分でも気づかなかったけど、オレってかなりこの状況に混乱してたみたいだ。

サマル「お腹すいてたからかなぁ・・・なんかすごい美味しく感じるよ」

ナイン「なんだか体が温まりますね」

エックス「ごく・・・ごくっ・・・あー、水がうまいぜ」

レック「ふー・・・。食えるってありがてえよなあ」

まったくだ・・・とエックスは笑いながら呟いた。
こいつはけっこう、オレと似てるところがある。
オレはよく周りから天然だとか、悩みがなさそうで羨ましいだとか・・・何も考えていない奴みたいに言われることがある。
だけどそれは違う。
どんなに明るそうに見えたって、傷つくときはそれなりに傷つく。
泣きたいときだってある。
自分を責めたり、何もかもが嫌になったり、本当に余裕がないときは
他人に当たってしまうことだってあった。

けれどそういうのをあえて笑い飛ばすのは、弱いオレが自分を保つための手段であり・・・それができるのはある意味幸せだと思った。
できない奴だっているんだから。
オレはそうやって自分の痛みを減らすことができる分、できない奴よりは恵まれてる。
今までも、いつだってそれをわきまえた振る舞いをしてきたつもりだ。

エックスも、話すとオレと同じような思いをしてきたのだと言う。
やっぱり性格が似てると話しやすい。

食事を終えたあとはなんとなく気分も軽くなったので、みんなと他愛もない話をしながら笑いあった。
時々少しおかしなことを言ってみたりして、場の雰囲気を和ませる。
わざとやっているというわけでもないのだが、それで少しでもみんなの心が和らぐのなら嬉しかった。

・・・・その時、パタンと扉の閉まる音がした。
振り返ると、ソロが寝室の廊下から出てきたところだった。

レック「ん、ソロ。寝てたのか?」

ソロ「・・・ああ、少しな」

ソロは相変わらず無表情なまま、オレの前を通り過ぎていった。
その時だった。

・・・・・・・パタタッ。

レック「・・・?」

水滴が落ちる音と共に、小さな赤い雫のようなものがオレの視界の端に映った。
・・床を見ると、それは紛れもなく・・・血だった。
2・3滴、床に滴っている。

レック「・・・え」

オレはとっさに顔を上げ、少し早足に歩くソロに目をやった。
心なしか急いでいるようにも見えた。

レック「・・・・・・・・・・・。」

床に落ちた血には、オレ以外気づいていないようだった。
オレは考えるより先にテーブルにあった布巾かなにかを取ってさっとしゃがみ、
血を拭き取ると洗面台に向かった。


・・・・・・・・・。
オレは布巾を水ですすぎながら、なんとなく不思議な気持ちになっていた。
普通に考えると、タイミング的にソロの血だ。
・・・・・・・・・・なぜ・・・・・・・・・・・・。

あとで聞いてみるか。
でもなんとなく気が引ける・・・何か、触れてはいけないことのような気がするのだ。
・・・・・・そうだ。

キュッと蛇口を捻って水を止め、布巾を絞る。

勝手に入るのは心苦しいが、さっきソロは寝室で寝ていたと言った。
まさかとは思うが。いや、でも・・・・・・・

考え始めると居ても立ってもいられなくなり、オレは小走りでリビングに戻ると無言で布巾をテーブルに戻し、足早に寝室の廊下へ向かった。




・・・・・確かソロの部屋は4つ目だったよな。
少し・・・何もないか見るだけなんだ。2分もかからないはず。
なぜこんなに嫌な予感がするのか。
自分でももはや、なんでこんなに心配になるのかわからなかった。

4つ目の扉に手をかける。
・・・鍵は掛かっていなかった。

ベッドが少し乱れている。
どうやら寝ていたというのは本当らしかった・・・だが、
脇にある机が目に入った瞬間、オレは息を飲んだ。


無造作に転がった片手ナイフ。
刃先には血。
机の上には血が小さな池を作っており、端から床に滴り落ちている・・・。

レック「・・・・―――。」

目を見開いたまま、オレは机に近づいていく。
・・・机の上にはナイフと血以外に、小さな紙切れが数枚あった。

まさかと思いそれをよく見ると、あの注意書きの紙とは筆跡が違った。