ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第3話
・・・・・・“犠牲者”は、ソロだ・・・・・・・・!!
だとしたら、もうゲームは始まっている。
オレたちはいつ死んでも、おかしくない・・・・・・・!
アベル「ゲーム・・・・スタートか・・・・・・・」
エックス「でもなんで、ソロは自分が犠牲者だってわかったんだ・・・!?
なんでいきなり・・・・・」
ムーン「扉が空いていて“犠牲者”が消えている・・・
ということは、この扉を開けて外に出たのはソロさん以外ありえませんわ」
アルス「とっ、とにかく早いとこ探しに行かないと危ないんじゃない?」
ロト「いや」
オレも含め、多分ほとんどが「ソロを探しに行く」という思考にある中。
ロトは開け放たれた扉の先を見つめ、言った。
ロト「最初の手紙にあったろう。
“犠牲者”は、俺たちとは別に同時進行でゲームを進めるんだ。
指示がない限りは勝手に合流しないほうがいいかも知れない」
レック「ど・・・どういうことだよ。
そんなの探してから判断すればいいじゃねえか」
エックス「そうだぜ。それであいつが死んじまったらどうすんだよ」
ロト「お前たちが言いたいことは分かるさ。
でもな・・・ゲームのルールには逆らわないほうが良い。
俺の勘だがな」
アレフ「確かにこのゲームに私たちの命がかかっている以上、ルールには従ったほうが良いでしょう。ソロ殿もわかっておいでのはずだ」
サマル「じゃあ・・・ボクたちこれからどうするの?」
アレン「ゲームが始まった以上、進めないとな。だろ?」
エイト「そうですね。・・・ソロさんのゲームを進めるペースもまだわかりませんし」
オレたちは結局、ロトたちの意見に賛成してソロを探すのはやめ、
とりあえずゲームを進めることにした・・・・・。
だが、正直言ってオレにはわからない。
どうやって「ゲームを進める」のか。そうするとどうなるのか。
そもそも、みんなはわかっているんだろうか。
「ゲームを進める」のがどういうことなのか。
オレにはわからない。
何か漠然とした物しか見えてこない。
・・・・わからない。
このゲームの目的も、意味も。
わからない。
昨日のソロの意味深な発言や態度の意味する何かも。
どうして率先してゲームをスタートさせたのかも。
赤い目をした影、コピーの存在、トライアングルの中心、制限時間の謎、
姿の見えない観察者、ソロが誰かと交わしていた声なき会話。
・・・そして、左手の甲に目をやると。
青白く輝く、「21.4」という生存率なる数字。
・・・わからないことが多すぎる。
オレたちは・・・・・これからどうなるんだ。
一体、この先には何が待ち受けていると言うのだ・・・・・・・・・・・。
2日目 ??時??分 ―???―
真実が暴かれるとき、
鮮血の海は干上がり
血染めの月は地に堕ちる。
血を捧げよ。
肉を捧げよ。
そして我が贄となれ。
迷い集え、哀れなる犠牲者のもとに。
永遠の赤き結界にて封ぜ。
慈悲深き我らの神よ、導き給え。
英雄達を、地獄の底に。
最も尊ぶべき秩序を壊せ。
・・・・・・・・・・・
ゲームスタート。
━─━─第三話 Captivity
2日目 07時12分 ―ロト―
俺たちは二手に別れ、それぞれ屋敷内と外の探索をすることにした。
外には魔物がいるという事なので、戦いに備えHPなどが高めのメンバーが選ばれた。
アレン、レック、アルス、エイト、エックス、そして俺。
屋敷内の探索は、アレフ、サマル、ムーン、アベル、ナインが行うことになった。
部屋を出て、俺たちはアレフたちと別れ再び
血の庭へと足を踏み入れた。
途端、あの鉄のような匂いとともに生暖かい風が
俺たちを威嚇するかのように吹き抜けた。
・・・昨日とは、雰囲気が違う。
昨日まではただ気味が悪く、最高に居心地の悪いだけだった世界が。
俺たちに明らかな敵意を示しているのがわかる。
昨日は眠っていたこの世界全体が目を覚まし、今か今かと獲物が来るのを待ち構えているような・・・。
アルス「魔物の気配がする・・・」
ロト「ああ。相当多いな・・・いや、これは多いと言うよりは・・・」
この世界そのものが、一匹の大きな魔物のような感じだ。
レック「大丈夫だって!オレたちは世界を救った勇者だぜ?
勇者が6人もいりゃ怖いものなんてねえ!」
エイト「そうかも知れません。でも、敵も馬鹿ではないと思いますよ」
エックス「・・・と言うと?」
エイト「奴は・・・あの目玉は、僕らをれぞれ世界を救った英雄としてゲームに招いたと言っていました。
だったら僕らの戦闘における強さも知っているはず・・・。
きっとここの魔物たちの強さは半端ではないと思います」
アレン「確かにな。ここが俺たちを試す実験場みたいなものだとして・・・
今まで戦ってきた魔物と同レベルじゃあ話にならないわけだ」
レック「ふぃ~。お手やわらかに頼むぜ」
エックス「そう言えばさあ、この・・・何だっけ。生存率?ってさ、
上がったり下がったり本当にするのか?来てから何も変化ないし」
エックスが思い出したように顔を上げ、左の手の甲を見つめる。
そこには「21.8」という数字が浮かび上がっていた。
アルス「やっぱりこれ、みんなバラバラなんだね。
ボクは24.5だったよ」
そう言ってアルスが手の数字を見せる。
俺も手袋をとって確認してみたが、数字は変わらず23.2のままだ。
レック「あー、そう言やそんなんあったっけなあ。
オレ手袋してるからすっかり忘れてたぜ」
ロト「おいおい・・・」
エイト「僕も来た時から変わってませんね・・・。
まだ体に大きな変化がないからでしょうか」
俺たちはゆっくりと、歩み出す。
前方、後方、左右ともに警戒を怠らず進んでゆく。
木々や転がる岩、草、毒々しい色をした花々・・・
全てが、俺たちを見ているような気がする。
エックス「それにしても武器がないってのは結構きついよなあ。
道具もほとんどないし・・・」
アルス「魔法で戦うのがメインになりそう。
素手で太刀打ちできるレベルの魔物ばっかりとは思えないしね」
アレン「ふん、俺は魔法なんぞに頼らなくとも素手で充分渡り合えるぞ。
魔力切れで足手まといにならんようにな」
エイト「頼もしい限りですね・・・」
空は昨日から変わらず血のような色のままだが、赤く不気味な光を放つ月のおかげで暗くはない。
この世界には昼や夜の区別はないようだった。
時計がないのでだいたいで判断するしかないが、4時間ほど経ったらひとまず
あの休憩室に戻り合流する。
無駄足にはならないと思うが・・・何の収穫もなしに帰るのは避けたいな。
とりあえず、この世界を無理のない範囲で探索しゲームに関する情報などを得たい。
エイト「・・・・・・・・・・・・。」
突然、エイトが立ち止まった。
ロト「おい、どうした?」
俺たちも足を止め、一番後ろを歩いていたエイトを振り返る。
エイト「・・・・・・・・・・嫌な感じがするんです、この近く・・・・。
何だか、囲まれてるような」
レック「・・・へ、いきなりかよ」