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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第5話

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2日目 09時29分 ―レック―


レック「やっぱり!そこにいたか」

ソロ「・・・コレ使う意味なかったな」

片手でトランシーバーをポンポン投げたりキャッチしたりしながら、歩み寄ってくる。
全然ケガなんかしてないし、普通に元気そうだった。

ソロ「まさかとは思ったが・・・こんなに早いとは。
まったくお前は不思議な奴だよ、レック」



━─━─第五話 Uncanny red

なんか、最初に会った時と随分雰囲気が違う気がする。
なんだろう。目つき?
崖の上で初めて話したときはもっと気弱な、なんていうか・・・不安そうな表情をしていたと思うんだ。だけど今はまるで、
・・・・・・・こうなることもゲームも何もかも全部、見透かしてるような感じ。

レック「お前こそ。・・・なんかえらく余裕ぶっこいてんじゃねえか」

ソロ「余裕?」

ソロはちょっとだけ眉を上げて、あからさまに驚いたような顔をした。

ソロ「とんでもない。しばらく1人だったんで素が出てるだけさ」

・・・うわ、よく見たらこいつすげえ美形だな。
前髪とか長めだし、今までそんなにじっくり見てなかったから気づかなかった・・・
なんか悔しい。

レック「まあいいや、それじゃあんな嘘をついた理由を聞くとしますぜ」

ソロ「了解。ああでも、その前に謝っておかなきゃならないことがある」

レック「?」

ソロ「・・・はっきりとはしてないが、俺はお前にあと2つ嘘をついている。
これがその1つ目だ」

ソロは左手の裾をすうっとまくり上げる。
・・・・・あぁ、思い出したくなかったのに・・・・

レック「・・・・・・・。・・・・何を謝るって?」

ソロ「俺はお前に対して、「俺」という人間への印象操作をした。・・昨日のアレで、お前は俺のことを頭がどうにかなっちまってると思い込んだはずだ」

レック「あぁ・・・」

ソロ「あれな、実は全部ウソ。俺は誰とも筆談なんてしてないし、自傷癖のある異常者でもなんでもない。まあワケあってお前にああいうのをを見せなきゃならなかった」

昨日ソロが見せた、あの狂気じみた表情。言葉。仕草。
・・・・全て演技だったってわけか。

ソロ「あのナイフもこの屋敷で見つけた物だ。そりゃーもう切れ味悪くてな。
あんだけ血ィ出すのにどれだけ苦労したことか・・・」

ソロはため息をついて、またあからさまに苦笑した。
・・・・・だけど、・・・だったら。

レック「だったら、あの傷あとは何なんだ?本当に刃物か何かで切り刻んだ痕だろ・・・あれ。あれぐらいの量の血出すのに、そんなにする必要あるか?」

ソロ「・・・あぁ・・・・・・・・それはな」

ソロは一瞬だけ射殺すような目で虚空を睨んだが、すぐに今までのオーバーな苦笑顔に戻った。
そして珍しく迷うようにゆっくりと口を開いた。

ソロ「・・すまん。わかった、お前に嘘はつきたくないから正直に言おう。
実は、俺が勇者として旅をするようになったきっかけがちょいと特殊でな。
それまでは自分が勇者だとか云々ってのは全く知らされてなかったわけだ。で、そん時に俺は究極の2択を目の前に突きつけられたのさ・・・ちょうど、こんな感じで」

ソロは手で首をスパッと切るジェスチャーをして見せた。
殺された・・・という意味だ。
・・・どういう、・・・何が言いたいんだ?

ソロ「・・・見つかったんだ。“俺を勇者にした奴”に。
もちろんこの俺にその選択を放棄する資格も権利もあるはずがなく――・・・」

ピタリ、とソロの動きが止まる。
腕組みをして不機嫌そうに顔を歪め、だが次の瞬間。

ガシャアアアアアアン!!!

ソロの左後ろのほうにある壺のオブジェが、大きな音を立てて粉々に砕け散った。

レック「!?」

・・・ソロは、突っ立ったまま僅かに左後ろを向き手だけを後ろに回していた。そしてその手には。
先端から細く煙が立ち上る・・・銃。形状から見るにショットガン・・・散弾銃・・・!
一体どこに持ってやがったんだ!?

ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

目をこれ以上ないくらいに見開き、額には脂汗が浮かんでいる。
半開きの口と、引き吊って明らかに不自然な眉。

・・・・・ソロの紫色の瞳が、震えている。
黒目の部分がガクガクと。
                 か お
一体、何をどうしたらこんな表情になるってんだ。

レック「ソロ!?!?何やって・・・ッ」

ガシャンッ。

ソロの手から滑り落ちたショットガンが音を立てる。
ソロは少しよろめいて、一度大きく前かがみになり・・・銃を拾って顔を上げた。

その時には息こそ荒かったものの、どこかおどけるような茶化しているような、少なくともオレを一瞬で激しく不安にさせるような表情ではなくなっていた。

ソロ「・・・・・・思い出すと今でも腹が立つんだよなァ・・・・・。
あの2択。
・・・・・・・・・・死か、屈服か・・・」

レック「・・・・・・・ソロお前、・・・・・・・まさか」

ソロは悲しそうな、何か湧き上がってくるものを必死に押し殺そうとしているような・・・そんな顔をしていた。
・・・・・・・・・・いや、目だ。
目が、さっきまでと全然違う・・・悲しい色をしている・・・・・。

ソロ「・・で、このザマだ。
他に質問は?」

レック「・・・・・・・・・いや」

その時、さっきの銃声に驚いたんだろう。
廊下の向こうから大勢の足音が近づいてきて・・・

ロト「・・・どうした!?何かあったのか!?」

アルス「レックさん、こんなところでな・・・え!?」

アベル「ソロ・・・」

ソロ「よう。久しぶり・・・っつっても10時間弱だけどな。
発砲したのは俺だ、ちょっと手が滑った」

アルス「あの壺壊しただけ?・・・はぁ、もうホントやめてよ心臓に悪いから・・」

ソロ「すまん」

片手でショットガンをくるくる弄びながら、相変わらずソロはへらへら笑っている。
・・・どうやらみんなも、ソロの態度が以前までと明らかに違うことに気づいたようだった。

ロト「・・・・ソロ、理由やらは後でゆっくり聞く・・・とりあえず俺たちと休憩室に戻ろう。
みんな心配してる」

ソロ「ああ。そのつもりで来たからな」

――――――――
―――――
――


ナイン「・・・よかった、無事だったんですね・・・」

ムーン「突然銃声が聞こえたので本当に驚きましたのよ。でも・・・」

レック「大丈夫。誰もケガしてないし、まぁ少し事情がさ」

振り向くと、壁にもたれて腕組みしているソロの顔つきがなんだか最初らへんに戻っていた。
無表情で、無口で大人しそーなあの感じに。

アベル「・・とにかく、突然出て言って突然現れた理由を聞かせてもらうよ。
まず、“犠牲者”は君ということでいいのかい?」

ソロ「そうだ。だけど・・・」

ソロは何か言おうとしたが、何かを思い出したのか口を噤んだ。

アベル「・・だけど?」

ソロ「何でもない、忘れてくれ。・・・一応今までで手に入れた情報はいくつかあるぜ。
まず、俺が今ここにいる理由なんだが実に奇跡的でな。あの変な紙っきれに、ある条件をクリアすると俺と合流できるってあっただろ?」