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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第6話

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3日目 05時33分 ―サマル―

ソロさんが戻ってきたこともあって、昨日は割とゆっくり休むことができた。
軽く食事をとったあと、武器の点検なんかをしたりして、今はみんなで今日の動きについて話し合いをしている。

ロト「・・・でも、昨日の話からすると鍵は屋敷の中にあるみたいだが。
まだ探さなくてもいいのか?」

ソロ「さあ。別に時間に限りはないんだし、のんびりやってたって誰にも文句は言われねえよ」

アルス「そうだけど・・・でも、できるだけ早くここから出たいっていうのはみんな同じだよ」

今日も外の探索をするので、昨日のようにまた2手に別れて行動することになった。
そこで、メンバーを昨日と同じにするかどうかで今話し合っているところ。
ボクは同じでいいと思ってたんだけど、エイトさんやアルスさんは屋敷の中がいいらしくて。特にエイトさんは、外のあの血みたいな匂いがどうにも駄目みたい。

逆に、ソロさんは何故か外に出たがってる。
なんか、動かしてないと体がなまるとか、ストレス発散に調度いいとかなんとか・・・。

で、あの青い扉の鍵はどうやら屋敷の中にあるみたいなんだけど、それを探すのはソロさんじゃないとダメらしいから、屋敷に残ったほうがいいんじゃないかって話をしている。
でもソロさんいわく、時間に限りはないんだから急いで探そうがゆっくり探そうが同じだって。
まあ確かにそうなんだけど・・・なんかなあ。

レック「いーんじゃねーの?新しい武器も手に入ったことだし、昨日よか楽に進めるはずだぜ」

ムーン「でも、屋敷の中にもトラップがあるんでしょう?外ばかりが危険というわけでもないと思いますわよ」

・・・いなくなってた間に何をしていたのか、ソロさんは頑なに語ろうとしない。
これもきっと、“犠牲者”としての都合なんだろうけど。

ソロ「ならなおさらだ。俺はレックたちと外に行くぜ」

どうしてこんなに、何もかも知っているのだろう。
全部注意書きに書いてあったのなら、何も文句は言えないけど。

・・・でもまあ、少なくともボクは行かないほうがいいに決まってるよね。
何にも役になんか立たないし、邪魔になるだけだし・・・

その時。
少し視線を上げただけなのに、ソロさんと目があった。
きっと偶然。だって、ソロさんもちょうど今顔を上げたんだもん。

サマル「・・・・・・・・あ」

ソロさんはボクの顔を見るなり、少し意地悪そうにニヤリと笑った。
そしてみんなに向き直ると、

ソロ「・・なあ、こいつも連れてっていいか?」

サマル「えっ・・・・・え!?」

耳を疑った。

エックス「別に誰と一緒でもいいだろ。大差ねえよ」

ロト「武器も手に入ったし、危険は明らかに減ったと思う。でもサマル君がどう思うかは・・・」

サマル「そ、そんな・・・無理だよ!ボクっ・・・力ないし、強い魔法も使えないしどんくさいし、役になんか立たないよ・・・!」

あんまりびっくりしたから、思わず大きな声を出してしまった。
みんながキョトンとしてボクを見ている。

サマル「・・ぁ・・・っえと、ボク・・・」

どうしていいのかわからず、言葉が出てこない。
喉に何かが詰まったみたいに、何も言えない。

と、その時。

ポンっと肩に手が置かれた。
ぎょっとして見ると、・・・ソロさんだった。

ソロ「いんじゃね、役に立たなくても。ならそれなりの活躍のしかたがある」

口を開けたままポカンとしているボクを見て少し笑うと、肩に乗せている手をボクの頭に移して、まるで子供をあやすみたいにゆるゆると撫でた。

・・・いつの間にボクの後ろに来たんだろう。

ソロ「大体、役に立つ立たないって誰が決めるんだ?役に立つ奴しかいらないなんて誰が言った?例えばどういう奴で何ができて何ができなければ役に立つ奴なんだ?」

笑顔のまま、早口で息継ぎもなしに、でもなんだか不機嫌そうな声。

ボクが固まっていると、今度はすごく真面目な顔をしてボクを覗き込んで言った。

ソロ「今の質問に正答はない。なぜならその答えは全部お前が。1人で。勝手に。作り出したコンプレックスだからだ」

思わずギクっとした。

ソロ「・・そんなのは気にしなくていいんだぜ。お前がなんでそんなふうに自分を劣等化させるようになったのか、俺は知らんし興味もない。
だが、見てて気分が悪いんでな・・・今後さっきみたいなことは口にするなよ」

圧倒されて、頷く。
・・・あぁ、きっと今のボク・・・情けない顔してるんだろうなぁ・・・・・。

するとガタンと音がして、テーブルが揺れた。
アレンが立ち上がった音だった。

アレン「・・・・お前・・・・いい加減にしろよ」

ソロ「?」

アレン「どこまで人をからかえば気が済むんだ?お前にサマルの何がわかる」

ソロ「何も。だからだよ。何もわからないし知らないからこそ」

アレン「だったら口出しするんじゃねえ!!」

アレンが怒鳴った。
・・自分の肩がビクっと震えたのが分かった。

アレン「お前はサマルのことを知らない、知らないからこいつが味わってきた苦しみも知らない!何も知らない!!
1人で何でもできるお前はいいかも知れない、だがその価値観はお前だけのものだ!
俺たちやサマルに押し付けるなッ」

・・・アレン・・・・・。

ソロ「心外だな・・・俺は俺の価値観をお前らに押し付ける気なんてちっともないんだが。ああでもそういうふうに聞こえたなら謝ろう」

ソロさんはため息をついて、少し困り顔で言った。

ソロ「だけどな。ちょっと言わせてもらうと、まず俺は1人で何でもできるわけじゃない。ただ見栄っ張りだからそう見えるだけだ。あと、これは警告なんだが・・・」

いきなりぱっと笑顔になって、アレンに笑いかけた。

ソロ「短気な奴は早死にするぞ」

アレン「貴様ッ!!」

サマル「アレン!も、もういいよ・・・ごめん、ボクが弱音を吐いたからいけなかったんだ」

ボクが思わず立ち上がってそう言うと、途端にアレンは勢いをなくしてこっちを見た。

・・・・・ごめん。ごめんね、アレン。ごめん、ボクがこんなだから。
わかってる、ずっと前から。ボクがこんな弱い人間だから、アレンはボクに気を遣って守ろうとして、でもボクが楽しくいられるように色々考えてくれて、ムーンだってそうだった。

いつもいつもボクは守られてばかり。
でも、それでも・・・こんな役に立たないボクでも、アレンたちは友達として必要としてくれた。

だから、だからこそ、もうやめて。
ボクなんかのためにアレンが怒るのも傷つくのも、嫌だよ。
ボクがあんなこと言ったから、あんなこと言ってソロさんの機嫌を損ねてしまったから。
全部ボクのせいなんだよ。全部。
だから・・・・・・・・

ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

サマル「2人とも、ごめんなさい。ボク外に行きます。もう我侭なんて言わないから。もう・・・・」

アレン「・・・・サマル」

ごめんね、アレン。
またボクのせいで嫌な思いさせちゃったね。

アレンがボクのこと大事に思ってくれてるのはわかってるし、とっても嬉しい。
でも・・・だからもうやめて。