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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第7話

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エックスがとどめを刺すと、ドルーガはひしゃげながら溶け出し、血の池の中に沈んでいった。
しばらくして波打つ水面が静かになると、あたりを包んでいた炎も消え、何事もなかったかのように静寂に包まれた。

レック「はぁ・・・はぁ・・・」

こう言っちゃなんだが、オレたちはなんだか色々なことを見落としているような気がする。
確信はないしそれこそまた漠然としてるんだが、なんとなくそんな感じがするんだ。

・・・あーくそ、こういう勘に限って高確率で当たるんだよなぁ、こういう時って。

まあ、その時はその時だ。過去のことはもう変えられない。
・・・・・・・あ、忘れてた。

レック「おーい、ソロ!」

手を振って振り向かせ、合図をする。
ソロは頷き、急ぎ足で屋敷の方へ向かっていった。

エックス「あいつ・・・」

レック「ああ。・・まったく災難だったよな」


━─━─第七話 Poisonous Dahlia


3日目 09時15分 ―エイト―

薄暗い階段に、数人の足音だけが不気味に響く。
埃っぽい空気とカビのような匂いが不快だ。

アルス「うわー・・・こっちも結構広いんだね」

アレフ「1階と似たような造りになっているんですね」

僕たちは今、屋敷の2階の探索をしている。
注意書きに書いてあったので、何かゲームに関する手がかりや新しい情報がないか探しに。

アレフさんの言った通り1階の廊下と似た造りになっていて、でも1階より薄暗くて空気が重い気がする。

アベル「・・・あれは・・・旅の扉かな」

ロト「もう少し近くまで行ってみるか?」

廊下の奥の方に、銀色の鉄格子に囲われた、青い光を放つ渦巻きのようなものがあった。

アレフ「旅の扉?」

アルス「あ、アレフさんの世界にはなかったんだ。
あれは原理はよくわからないんだけど、多分空間のねじれを利用したものだよ。
入ると一瞬で遠くまで移動できるんだ」

ナイン「遠く、と言いますと?」

アルス「うーん・・・それはその時によると言うか・・・入ってみないとわかんない」

アベル「どれに入るとどこに着くかは決まっているんだけどね。
多分だけど、あの旅の扉は次の・・・第2ステージに繋がってるんじゃないかな」

歩み寄って見ると、それを囲む銀色の鉄格子は淡い光を放っていて、普通の金属ではないことがひと目でわかる。
おそらくオリハルコンか・・・はたまた僕らの世界にはない、次元を超えた世界のものなのか。
よく見ると鉄格子には扉があって、鍵穴もついている。
やはりここも鍵が必要か。

エイト「どうやら本当に“ゲーム”を気取ってるらしいですね・・・」

ラスボスを倒したら、きっとここの鍵が手に入るんだろう。

アルス「ボクたちは今までもゲームをしてきたようなものだけど・・・でも、こんなに悪意に塗れたものじゃなかったよ」


それぞれ部屋を奥から見て回った。
どの部屋もやっぱり薄暗くて、あちこちクモの巣が張っている。
血のような液体がポタポタと壁から垂れていたり、何に使うのかわからない歪な形をした道具や首のとれた西洋人形が転がっていたり、いたるところに僕たちの不安感を煽るような装飾が施されている。

長くいたくない。

ロト「・・・・これは」

奥から3番目の部屋で、ロトさんが1冊の本を見つけた。
赤い表紙に、黒いインクで乱暴に何か文字らしきものが書いてある・・・けど、何と書いてあるのかわからない。

アレフ「・・この本だけ、埃をかぶっていませんね」

アルス「うん・・・」

ゆっくりとページをめくる。

・・辞書のような薄いページにびっしりと、解読不能な文字と思しきものがいっぱいに書かれている。
ところどころインクが滲んでいたり、ページが破れていたり、おかしな絵の落書きがあったり、・・・まるで・・・・・

エイト「・・・・小さな子供が書いたみたいですね」

アベル「・・・そんな感じがするね・・・でも、確信はないのだけど」

アベルさんがため息をついて、ページを撫でながらどこか悲しげに言った。

アベル「これにはメッセージがあるんだと思うよ。それが何かはまだわからないけど、これを書いた子は何かを伝えたかったんだと思う」

ナイン「・・何か感じるんですか?」

アベル「うん。雰囲気って言うのかな・・・いや、思念か。何かを伝えたくて、気づいて欲しくて書いたんじゃないかと思うんだ。小さな子供かどうかはわからないけどね」

・・・・・・・・・・・・・・。

その本はひとまず元に戻し、僕たちはその部屋を出た。

すると・・・・・・

ナイン「!!」

アレフ「・・・またですか・・・・」

壁に血文字の落書きがあった。さっき見た時にはなかったものだ。

あああか え り たい の ?ああああああ―だ
     い  っ しょ にああああああ――――め  あああ あ
   ああああ           あ そ ぼ

本当に今さっき書かれたらしく、文字から血が線となって壁をつたい落ちている。

ロト「・・・やっぱりだ。絶対に誰かいる」

アベル「・・・遊ぼう、っていう内容の落書きが多いね。・・寂しいのかな」

アベルさんは憐れむような目で壁を見つめている。

と、その時。


・・・・タタタタタ・・・キィ・・・・・――パタン・・・・

エイト「!」

足音だ。
それと、扉を開け、閉める音も聞こえた。
階段付近の方だ。

アルス「今の聞こえた?」

アレフ「ええ、行きましょう」

僕たちは音の聞こえたほうへ進む。
そして閉まっているその扉を、・・・・・・アレフさんが恐る恐る開くと・・・

・・・・・中は、なんの変哲もない白い部屋だった。

エイト「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

何もない。本当に何もない、ただ壁と床があるだけの、それほど広くもない部屋だった。

アルス「・・・誰もいない・・・・・・」

アベル「・・・・・・・・・・・。」

僕たちは全員部屋に入り、護身用の銃を手に身構えていた。
・・・・・が、不注意だった。

なぜなら僕たちは物音に気を取られ、部屋の外に誰も残さず全員が部屋の中に入ってしまったからだ。


─────・・・・・・・・くすくすくすっ


エイト「!?」

アルス「何・・・!?」

突然背後から、小さな子供の笑い声が聞こえた。
振り返ると、そこには・・

ロト「・・・・・・・・・え」


ほぼ閉じかかった扉の隙間からのぞく緑色の髪。
扉のノブに手をかけたまま、笑みの形に曲がった口元がすっ、と元に戻った。


バタン。


・・・扉が閉められた。

アレフ「な・・・・!」

アベル「・・・・・・・・・・。」

慌てて扉を開けようとするが、開かない。ガチャガチャと音を立てるばかりだ。

エイト「な・・・何ですかこれ、開かない!」

アルス「嘘・・・」

その時、音もなくフッと部屋が真っ暗になった。
僕たちはピタリと動きを止め―真っ暗なので見えなかったが、気配でわかった―目だけであたりを探る。

アルス「何・・・・なんなの・・・!?」

アレフ「・・・閉じ込められたのでしょうか・・・」

エイト「まさか、トラップ」