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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第7話

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3時には部屋を出て探索を再開するらしいので、仮眠を取るなどして休憩をした。

エックス「ふーん、お前妹いるんだな。どう?かわいい?」

サマル「か・・・かわいいって、自分の妹を?・・・・・どうかなぁ」

ソロ「お前の妹だったらどんな顔かだいたい想像つくな」

サマル「えっそれどういう意味?」

ムーン「ふふふ、確かにそうですわね」

おっとりした雰囲気の大きめなたれ目と、どこか子供っぽさが残るような輪郭と口元。
オレやソロとは正反対のタイプって感じだな。

アベル「はは、5年後が楽しみだね」

アベルももうすっかり笑顔で、オレたちの話に耳を傾けながらコーヒーなんか飲んでいる。

エックス「いいよな、王子様かあ。俺も1回なってみてえな」

レック「そんなに楽しいことばっかりでもないぜ?まあ面白いっちゃ面白いけど」

アレン「お前・・・失礼だろうが、一人前に王政をこなせてるようには見えんな」

レック「なっ!そ、そんなことねーぞ!まあオフの日は気が向いたら手紙のハンコ押し手伝う程度だけど・・・これでもちゃんと王子やってるんだからな!」

アベル「まあ、そのうち君のお父上の仕事も含めて、全部1人でやらなくちゃいけなくなる時が来るからね。王位継承式の時は僕も随分と緊張したものだよ」

エックス「出たよ王族トーク。あーあ、どうせ庶民ですよ・・・」

ソロ「気を落とすな、俺もだ」

まあオレも、上の世界ではただの村人だったわけだけど。

レック「話戻すけど、他に妹とか兄弟いるやつっている?ちなみにオレには妹がひとりいたぜ」

アレン「いた?今はいないのか?」

レック「あー、うん。その・・・死んじゃってさ。いい子だったらしいけど」

アレン「そうだったのか・・・」

レック「いやいや、今は妹同然に仲良くやってる子もいるし、そんな申し訳なさそうにするなよ!」

アベル「僕には兄弟はいないねぇ」

ムーン「私も1人っ子ですわ。でも今はサマルが弟みたいに思えます」

サマル「ちょっ・・・ボクが恥ずかしいよ」

エックス「あはははは。俺は姉貴が1人いたぜ、今はもう会えないけどな。でも別に死んだわけじゃないし・・・元気にやってると思う。まあ話すと長くなるからアレだけど」

レック「お前は?」

会話の中、ひとり遠くを見るような目で天井を仰いでいたソロに声をかける。

ソロ「ん?・・ああ、兄弟か。・・・・・そうだな、弟が1人いた」

アレン「・・お前も“いた”なのか」

ソロ「うん・・・まあ、俺が生まれるより前に死んだから会ったことはないんだけどな」

サマル「え?弟なのに、ソロさんより先に生まれてたの?」

ソロ「それは話すととんでもなく長い話になる。すまんがエックスと同じくパスさせてもらう」

エックス「えー、なんだよそれ・・・。パスした俺が言うのもなんだけどすげえ気になる」

ソロ「つっても肖像画すら見たことないし、知ってるのは本当に名前だけだな」

アベル「へえ、何て言う子なんだい?」

ソロ「・・名前は、ローグデルタ。みんなからはロベルタって呼ばれてたらしい」

―――――――
―――――
―――


・・・その後、ソロに少し個人的に話を聞いた。
ローグデルタ・・・ロベルタは天空城で生まれ育ち、歴史上ではソロの双子の兄となるはずの存在だったらしい。
しかし色々な事件や事情が重なって、ソロよりもだいぶ早く生まれてしまったのだという。
そして、その頃はまだ両親は地上界におり、城に住む天空人の手で育てられた。
後からソロに会ったというその天空人の話も聞いた。まるで生き写しのように容姿も声もソロと瓜二つで、幼いながらに他人を思いやることもできる優しさを持った、明るく活発な子供だったという。
しかし・・・。

ロベルタが、人間の歳にしておよそ7歳ほどまで成長した頃、その事件は起きた。

彼はある夜、豹変した。
今までは大声をあげて泣き出したことなど一度もなかったのに、突然火がついたように喚きながら泣き始めた。
手には凶器を持ち、なりふり構わず振り回して物を壊し、出会った者を片っ端から虐殺していき、最後には凶器で自分の喉を引き裂いて自殺した。

一部始終を見ていた天空人の1人は、ショックのあまり外に出られなくなった程の惨状だったという。

ソロが生まれる、ちょうど2年前の出来事だった・・・・・・。


そこでオレは、前からうっすらと抱き始めていた懸念が当たったことを悟った。

オレは、・・・声変わり前の小さな子供の笑い声が数回にわたって聞こえたことを、ソロに話した。


ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ソロは驚きに目を見開き、しかしすぐに俯いて目を伏せた。
その瞳は悲しみの色に染まっていた。

レック「どうしてオレにしか聞こえないのかはわからない。でも・・・これで、何かがわかった気がするんだ。このゲームの影にあるものが」

壁の落書き。
幼い字の本。
コピー。
サマルが聞いた足音。
ロトたちが見た人影。

ソロ「・・・そうか・・・・・・・・俺は・・・・・・・」

ソロは手で頭を押さえて、下を向いたまま言った。

ソロ「忘れていたのかも知れない・・・信じることを。苦痛を耐えるだけでなく、自ら振り払う術を・・・・あの日から、・・・・・・・・・・・俺は変わった」

上を向き、神妙な表情で自分の手を頭上にかざした。

ソロ「何もできなくたっていい・・・誰も助けてくれなくていい・・・・・・。
何の意味も成さないなら、心なんてないほうがいい・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・。

ソロ「俺は沢山のことに気付き、同時に多くのことに目を瞑るようになった。
時にそれは自分の感情を、他人事のように遠くから見ることの手助けにもなった・・・それが、・・こんなところで・・・・・・・・」

そこまでを呟くように言うと、ソロはうなだれて黙り込んでしまった。

レック「・・・なあ。どうしてあいつがそんなことになっちまったのかは、聞いてないのか?」

ソロは首を振って、暫くしてから答えた。

ソロ「わからない・・・ただ、それが生命の理なんだとしか・・・」

レック「・・はあ・・・?」

生命の理?どういうことだ、暴走して人を殺すのが必然だったとでも言うのか?

それを口に出そうとした瞬間、笑い混じりにソロが言った。

ソロ「俺は運が良いだけなんだ。今この場でこうして話していられることも、奇跡に近い。
たまたま、理解してくれる人がそばにいてくれたから・・・・」

レック「・・・・・・・・ソロ・・・・・・・・・」

ソロ「・・・俺は全てを失ったあの日から、とっくに自分の命なんて捨ててる気でいた。それで誰かが助かるならそれでいいと思ってた・・・でも・・・」

いつの間にか、ソロの声は掠れるような弱々しいものになっている。

ソロ「それじゃ俺はあいつを忘れられない・・・。
俺は、・・・・・人間のままでいたい。・・・ただそれだけなんだ・・・・」

寂しげに微笑みながら、ソロは涙を流していた。

言葉ひとつひとつの意味するところは完全に理解できたわけじゃない。
けど、きっとソロは・・・何かに気づいたんだ。