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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第8話

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しかしオレよりも遥か下の、真っ暗な底の見えない暗闇から異常な長さをした手が無数に、生えてきている・・・そうだあれは・・・みんなの手だ。


どうなってるんだ?



3日目 16時27分 ―ロト―


それはなんとも気味の悪い光景だった。
水面に蠢く無数の手。しかもそれは・・・全て俺たちのものだった。
一体これらに何のメッセージがあるというのか、そもそも意味があるのか?
何らかの警告か、あるいは挑発・・・・か・・・・・・・・・

!?

何かが水面に落ちる音がした。・・・・・・・・いや、誰かが。

エックス「レック!?レック!!!」

水しぶきが飛び散った直後だった、俺がそっちを見たのは。
レックが沼に落ちた。
まさかあの腕たちに引きずり込まれたのか?

ロト「・・おい、何があった!」

エックス「わ・・・わかんねーよ!レックがいきなり・・・!!」

引きずり込まれたのではなく、バランスを崩して落ちたらしい。

アレン「何をやってるんだ・・おい、上がってこねえぞ!?」

エックス「この沼ってまさか、底なしか?やべーよ、早く助けないと」

アベル「待ってみんな、何かおかしいよ」

アベルが静かに言った。
変わらず落ち着いた声と表情で、揺れる水面を見つめながら

アベル「気づくのが遅くなってすまなかった。・・・これは」

蠢く手たちに魔力の塊を放った。

アベル「モンスターだよ・・・バギクロス!」

ゴオっと風が空気を切り裂く。そして円を描きながらそれは竜巻状の真空の刃となって、腕たちに襲いかかった。

きぃいいいぃぃぃいいぃぃいッ!!!

アレン「!?!?」

エックス「う・・・!」

耳を劈くような、音なのか声なのかわからない・・・・・・金切り声のような凄まじい音が沼から放たれた。

思わず誰もが両手で耳を塞ぎ、怯む。
その時沼の水面がボコボコっとせり上がり、その中からおぞましい姿の怪物が躍り出た。

ヒトのような体と足と手、頭。しかし頭には口以外何もない。その口は巨大で、顔の半分を占めるような形をしている。
ドロドロと絶え間なく、どす黒い泥のようなものが溢れ出る汚物色の体。

エックス「な・・・んだよこいつ・・・レックは・・・どこ行ったんだよ・・・!?」

大きく開けた口から不快な金切り声を大音量で出し続けるそいつに、俺たちは手が出せずにいた。怪物は一歩、また一歩と、気味の悪い動きをしながら俺たちに近づいてくる。

ロト「・・おい、戦うか!?」

アベル「・・・・・・・・・・・・!待って・・・」

アベルが何かに気付いたように顔を上げる。

アベル「この子は・・・・どうやら戦えないみたいだ」

その言葉が合図になったかのように、怪物はぐらりと体を傾かせると、金切り声を次第に小さくしながら地面に倒れ込んだ。

するとどす黒かった体が煙を上げながら、みるみるうちに茶色く変化していく。
そして色が完全に変わると、その体は細い枯れ枝のようになっていた。

アレン「・・・・・・・・・。」

エックス「・・・何だったんだ・・・?」

・・・俺はふと顔を上げると、あの腕たちと沼がなくなっていることに気づいた。
まさか、これは・・・・・・

ロト「・・・・幻影・・・・・マヌーサか?」

そして沼があったところに、レックが体の右半分を地面につけて横たわっていた。

エックス「レック!」

沼に落ちたはずなのに、服も髪も濡れていない。やはり幻影だったか。

エックスが体を揺すると、暫くしてからうっすらと目を開いた。しかし視線は宙を漂い、虚ろに虚空を見上げるだけだ。

エックス「レック、大丈夫か?」

レック「ぁ・・・・・」

レックは体を起こし、エックスに礼を言った。そして喉元に手を当て、絞り出すような声で呟いたのだ。

レック「・・・・・・戻らないと」

エックス「何?」

レック「屋敷に・・・戻らないと・・・・」

ふらふらと立ち上がり、苦しそうに息をつく。

ロト「おい、平気か?・・何か見えたのか」

レックは力なく首を左右に振った。だが俺のほうに振り返ると、確信めいた目と声でこう言った。

レック「早く戻ってあの扉に行こう・・・・手遅れになる前に」