ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第11話
すると、ソロは・・・いや、ロベルタは、声もなく唇をにいっ、と片方だけ吊り上げて笑んだ。
ソロがよくやるやつだ。
ソロ「・・・殺す?・・お兄さんが僕を?・・・・・ふふふふふ」
動くなと言ったのに気にすることなく、オレの顔を指さして言った。
ソロ「そんなことできないよ。誰にも僕を殺すことなんてできない。僕は死なないんだから」
凶器を目の前に向けられているというのに、全く怯む様子もない。
それどころか目を輝かせて、嬉しそうにすら見えた。
ソロ「それにお兄さん、それ使う気ないんでしょ?わかるよ。この体はお兄ちゃんのだもん、傷なんてつけられないよね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ソロ「・・・・・別に何もしないよ。それ下ろして」
おどけるように笑って言うロベルタの表情は、ソロが気を抜いている時に見せる笑顔とよく似ていた。
オレは包丁を逆手持ちにしてとりあえず下ろした。
レック「・・・・・・・・お前の言う通りだ。オレにはソロの体を傷つけることなんてできない。わかってるさ」
この程度の脅しが効く相手かどうかも薄々は気付いていた。
レック「どうしてお前はここにいるんだ。なぜ・・・お前は生まれた」
まずこの答えを聞かなくては。予想が外れていたら、嬉しいんだが・・。
ソロ「ふーん、そういう聞き方なんだ。じゃあわかってるんだね。頭のいい人ほど引っかかりやすいと思ってたんだけど・・・お兄さん、すごいよ?」
・・・・当たっていたか・・・・・・。
ソロ「他の人だったら多分こう思うだろうね。
僕は手違いでお兄ちゃんより早く生まれちゃって、たくさんの人を殺してから自殺したっていう話を信じて・・・霊体になった僕がお兄ちゃんの体に乗り移ってるってさ」
レック「実際オレだって途中まではそう思ってた。ソロはどうあってもまだ本当のことを話す気はないらしいし・・でも、子供の笑い声が聞こえたって打ち明けた時にソロが言ってたことの意味がやっとわかった。シンシアさんの言葉の意味も理解した」
ソロ「・・・それで、どうするの?僕を消す?でも今のお兄ちゃんは僕がいなくなったら生きていられないよ、きっと。そのために僕がいるんだから」
レック「・・ああ、わかってる」
ソロ「・・・・・驚かないんだね」
レック「・・?」
ソロ「お兄ちゃんからは、僕は随分と小さな子供だって聞かされてたでしょ?7歳位の」
レック「そうだな。それはオレの話と辻褄を合わせようとしたんだろうな・・・オレが笑い声のことを話すことを知ってて」
ソロ「で、なんで僕がこんなふうに話せるかもわかってるんだ」
レック「・・最初にあんな喋り方だったのはオレを試してたんだろ。・・ソロが嘘を言うことを前提でオレは話を聞いてたんだ」
ソロ「そっか。じゃあ騙してたみたいなものだよね」
・・・少しばかり罪悪感があるが、このことに関して後悔はしていない。
ソロは自分からは決して弱みを見せるタイプではないからだ。
ソロ「でもわかってないところもあるんでしょ?お兄ちゃん、全然自分のこと話してないみたいだし」
レック「・・・・・まあ、そうだな」
ソロ「だったら僕が教えてあげるよ。なんで僕が生まれたのか知りたい?」
レック「・・・・知らなきゃ話になんねえ」
ソロ「ふふ、いいよ。お兄ちゃんが話さなかったこと、全部教えてあげる」