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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第11話

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ソロが小声でそう呟いたような気がした。
・・・オレは隣にいるソロの横顔が、微かに硬くなっていることに気づいた。

ソロ「はっきり言っておく。死者は免れない」

その一言に、その場の空気が張り詰める。

アレン「どういうことだ?戦いもしないのに命を落とすのか?」

そんなのありえないだろう、とでも言いたげにアレンが身を乗り出す。
ソロは腕組みをしたまま、目を細めて遠くを見た。

ソロ「どうかな?人間なんて案外さっくりと死んじまうものだぜ」

・・・・何なんだ?トライアングルの中心ってのは・・・・・

ナイン「・・・・・トラップをくぐり抜けていく・・とか・・・・?」

レック「・・ああ、確かにそれっぽいな」

迷路の中に、引っかかったら即死!みたいな罠がそこらじゅうに張り巡らされてて、それらをかわしながらゴールまで行かなきゃならないとか?

アルス「でもそれだったら、“自分自身の恐怖”とは戦わないだろうし・・ものによっては武器とか道具で解除できたりするんじゃないかな。だって何もいらないんでしょ?」

ああ。そうか・・・。

じゃあ、あの扉の中にもまた別のエリアがあって、そこから脱出しないといけない・・・とか。
あ、でもそれだと生き物的なものとは戦わないってのに当てはまらないような気もする。
トラップは解除できる可能性もあるんだし条件に合ってない。
制限時間以内に出られないと死ぬとか?
あ・・でもそれだったらみんなで固まってりゃ済む話じゃねえか。

あーくそ、だめだ。わかんねぇ。

オレは解答を求める眼差しでソロの方を見た。するとソロもオレをちらりと見やり、「まだわからないのか」とでも言いたげにため息をついた。
そして席から立ち上がると、

ソロ「話はそれだけだ。細かいことは明日また話す。
あれは事前の準備とか個人個人の能力なんてものが通用しないからな」

そう言ってすたすたと部屋の方へ行ってしまった。

まああいつの態度が基本的に素っ気ないのは今に始まったことじゃないが・・・
ひとつ気になったのはソロが話している途中、何度か咳き込んだり、腕や肩を抑えるように触っていたり、不自然に曲げ伸ばししたりしていたことだ。

――――――
――――

・・・・・・・暫く時間が経った。
時計を見ると、午前2時を回っている。

オレは、まわりに誰もいなくなったのを見計らってキッチンに向かうと、包丁を手に取り刃の部分に適当な布を巻いた。
それを服の中にしまい、誰ともすれ違わないことを祈りながら静かに廊下を歩いていく。

なるべく音を立てないように扉を開けると、部屋に入って・・・鍵を閉める。
そして奥にあるベッドに近づきながら、包丁を取り出し巻いてある布をほどいていく。

ベッドで眠っているのはソロだ。

本当はこんなことしたくなかった。
だけど仕方がないんだ。誰かが助けてやらないと。
オレがどうにかしてやらなければ・・もう人殺しをさせるわけにはいかないのだから・・。

オレにしかできないんだ。

包丁を持ったまま歩み寄り、すぐそばまで行く。

レック「・・ソロ、ごめんな」

――――――
――――

4日目 19時12分 ―ロト―

トライアングルの中心。死者は免れないという、この第1ステージのメインイベント。
武器も道具も何も必要ない、戦闘することもない、トラップがあるわけでもない。
それでいて、必ずや俺たちに地獄の苦しみと死の危険を与えるであろうという。

死者は免れない・・・か。それが最初からわかっているのに何も対策を取らないわけにはいかないな。当然だ。

かと言って、具体的に何をすればいいのかもはっきりとはわかっていない。
トライアングルの中心が一体何なのかもわからないのだから・・・命を最優先にしろ、と助言するくらいしかないんじゃないのか?

いや、何かもっとできることがあるはずだ。するべきことが。

だが・・・・・・

ロト「・・レック?」

レック「・・・・・・・何だ?」

レックの顔色がまた変わっている。
さっきまでの疲れ果てたようなものではなく、何かを決心し覚悟したかような・・・緊迫した、思いつめた表情だった。

ロト「どうしたんだ?やっぱり休んでいたほうがいいんじゃないのか。だいぶ疲れただろ」

レック「あぁ・・・うん。そうなんだけど・・」

ロト「あいつが心配なのか?」

そう言うと、レックは少し目を伏せて微笑んだ。

レック「わかったんだ、オレ。ムーンが死んじまった理由。・・・わかっちまったんだ」

・・・・・・・・ソロがどうしてあんなふうになったか・・・・・・・・・
実は俺も薄々気付き始めていたんだ。彼の言動や仕草の不自然さから、あるひとつの可能性にたどり着いた。
・・あの壁の薄気味悪い落書きの犯人や、あのトラップ時に見た人影の正体と。

俺たちがゲームを始める前から、廊下の照明を消し、本棚に地図を用意し、鍵を用意し、注意書きに沿って俺たちが進みやすいように準備をしてくれたのは・・


同一人物なのだと・・・・・・・・・・・・・・・・・。


あの時、扉の隙間に見たのは幻覚などではなく、紛れもない彼自身だったのだ。
時系列的にもそう考えると全てに筋が通る。通ってしまう。

だから、わかってしまった・・・・・。

俺は何も言わずに視線を下げ、胸を締め付ける後悔と悲しみに耐えた。

レック「オレが助けてやらないといけないんだ。もうあんなふうに誰かが犠牲になったりしないように・・・終わらせないといけないんだ」

その目は絶望に染まりながらも、決意に満ちていた。
俺はその言葉の意味を理解した。

ロト「・・・わかった。俺はお前もあいつも責めるつもりはない。ただ、もう二度とあんなことが起きないように願ってるよ」

――――――
――――

5日目 02時01分 ―レック―

オレはソロに向かって静かにマホトーンを唱えた。
そして包丁を構えたまま膝立ちになり、ソロの目の前に刃を翳した。
よく見えるように。

そして一度深呼吸をすると、包丁を持っていない方の手をソロの額に添えた。

レック「・・・・オレの声が聞こえるか?聞こえてるなら、どうかオレの前に出てきてくれないか。
お前と話したいことがある」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

レック「・・・聞いてくれ。お前のためでもあるんだ、ロベルタ」

しっかりと少し強めに語りかける。
しかし、あまり大きな声を出すと他の奴に聞こえるかも知れないから声は小さめだ。

少しして、ソロの瞼がゆっくりと上がる。下を見たまま何度か瞬きをし、視線をほんの少し上げて――硬直する。

目の前にはぎらりと光る銀色の刃があるからだ。

ソロは顔を上げ、睨みつけるように見下ろすオレの顔を見つめた。

レック「動くなよ。妙なことをしようとしたら殺すぞ。魔法は封じてある」

自分にできる限界まで冷たく、凄むような声と表情を作る。
・・が、やはり胸が痛い。

こんな脅すような真似はしたくなかった・・・きっと後悔するに違いない。
だけど、やらなきゃいけないんだ。
これ位で泣き言なんて言っていられない。