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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第12話

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・平均として58.22%の確率で言語障害を患う
・身体のほとんどの機能はヒトと共通になるが、聴力と視力がある一定の条件により特殊に変化する
・ある一定の条件により自然治癒力が最大でヒトの4.2倍に増大する
・血液に金属のみを溶かす物質がおよそ0.023%含まれている
他、47点

また、1点目の特徴には著しく個人差が見られる。しかし、それも誕生してからおよそ700年ほどまでに限られるようだ。
内部の時間の経過速度を調整する装置で調べてみたところ、生き過ぎた者は1点目の特徴が例外なく暴走をを始めることがわかっている。

実はMT.kWSの中には、その力で人類を淘汰するほどの力を持つ者もいる。また、その意識が覚醒するまでの過程で、またしても共通の変化を我々は発見した。

データでは、理性の暴走が始まると極度の空腹感と破壊衝動に見舞われ、見境なく破壊行動を起こすようになる。理性は失われ、言語を理解することはできず、ただ無尽蔵に湧き出る食欲から、ありとあらゆる生物を殺し食べ始める。
また同時に細胞の異常変形を引き起こし、到底ヒトとは呼べぬ怪物へと成り果ててしまうことがわかった』

・・・・・・・・・・・は・・・?

頭の中がぐちゃぐちゃでわけがわからない。
だが次のページをめくった瞬間、オレは思わずその本を床に取り落とした。

・・・そのページにはいっぱいに挿絵があった。
そこに描かれている黒い化け物には、見覚えがあったのだ。

漆黒の翼が4つ生えた、首のないヒト形の化け物。
背中から伸びる無数の触手、その先にある眼球。
首があるはずのところに大きく開いた穴には、びっしりと鋭い歯が生えている。

レック「え・・・・・・・・・・え・・・・・・?」

これは、夢で見た化け物だ。間違いない。
オレたちが戦っていた・・・・・・・

待てよ、だったら・・・・これって・・・
・・・・え・・・・・・?

あの夢で、・・ソロがいなかったのって・・まさか・・・・・・・・・・・・・・・・

そこで思考が停止した。

『その姿になり凶暴化したMT.kWSの筋力や動体視力は変化前とは比べ物にならない。最新の薬物兵器などを駆使しても、殺処分は非常に困難であった。
またヒト形時の思考力や行動の傾向はある程度反映されるようである。

そして大半の者は身体の組織が細胞の限界を超えた使役に耐えられず溶解を始め、最終的には誕生に失敗した者のように液状化してしまう。
しかしごく稀に液状化を免れ、もとのヒト形に戻るというケースもある。
その過程を経たMT.kWSは混血による突然変異の真の力を発揮する。

その状態となったMT.kWSは通称“エヴィギラヴィット(Re.ar)”
再覚醒せし者と呼ばれる。

テレキネシスを自在に操ることができるということだったが正確には少し違うようで、ある特殊な実験を行ったところ、肉眼での視認が不可能な触手のようなものがあるとのことだった。特殊な光を通すことで視認が可能になる。被検体によると自在に形状を変化させることができる腕のようなものらしく、その力はヒトの腕の何十倍にも及ぶ。また個人差はあるが、形状とともに長さも最大4キロメートルまで伸ばすことが可能。
本数もまた個人差があるが、観測上での最大本数は86本。
刃状に変化させれば物を切断することも、数本を結合させてシールドを作ることも、ヒトの手の形にすれば細かい作業を行うことも可能な、まさに神の腕である。
発見した科学者は翌年、「対峙したものの運命は明らかである」という意味を込めて、これの「クリア(Clear)」という学名を発表した。

しかしクリアの使用は本人の利き腕が使用可能な状態である時に限られる。
利き腕がいわば指揮棒のような役割を果たしており、使用時の加速や方向転換に用いているようだ。
またこれで体を支えることによって、空中での停滞や移動が可能である。

さらに、Re.arはヒトではまるで及ばない程の知能と思考レベルを持ち、一瞬にして膨大な量の情報のを取り込み、分析する。数学的な計算や記憶力はもちろん、極限まで高められた思考計算により事象の予知が可能となる。

これらの実験結果から、MT.kWS及びRe.arの存在は全世界を震撼させることとなった。
人類を危機に追いやる恐れがあると主張し殲滅を求める声や、細胞を利用して人類の更なる進化と発展に繋げるべきだという声もあれば、もはや自分たちが頂点に立つ必要はない、最強の生物として我々の世界に迎え入れようという声など、意見は別れに分かれた。

MT.kWS開発者のスワードソン氏曰く、“我々は侵入してはならない神の領域に足を踏み入れてしまった。今こそ我々は過ぎたる支配と傲慢を捨て、強者に従うべきなのだ”とのことであった。
しかし、Re.arの細胞を人類の発展に利用しようと非公式に研究を続ける科学者たちは、今なお独占的に何百体ものMT.kWSを所有している。彼らは生まれてすぐに記憶障害を引き起こす薬を投与され、拘束されて地下室に監禁され、薬物に利用できる細胞採取のため実験台としての日々を送っている。

また、MT.kWSからRe.arに進化する過程にある例の“凶暴化”だが、昨年、それを抑えることができる対細胞用の抗体の開発に成功した。
細胞を麻痺させ運動を止めることで、例え凶暴化してしまった後でも、投与さえできればもとの姿に戻すことが可能だ。
もちろん、そのまま液状化する可能性を回避しRe.arとなることができる。
理性がない状態から会話や思考能力を取り戻すことに由来して、この抗体は“ラーン(Learn)”と名付けられた。

現在も、これらについての討論と研究は続けられている』


・・・・・・・・・・・・・・・文章は、そこで終わっていた。

オレは放心状態になり、しばらくの間微動だにせず・・いや、できずにいた。
一度に頭に入ってきた情報が膨大すぎて、整理できていない。

ふと手元に目をやると、すぐそばに1枚の紙切れがあった。
このページに挟まってたやつだ。

これが何なのかは大体予想はついている。
そう思いながら、書かれている文字を読んだ。

『薄々は気付いていたんじゃないのか?異変があることに。
まあ、まだ遅くはない。ラーンと呼ばれるこの抗体は、この世界のどこかに隠されている。
必ず必要になる時が来る』

・・・・・・・・・・・・・・。

ああ、そうか。その通りだよ。
あいつの様子がおかしいことにくらい、気付いてたさ。

ただその原因を知るのが怖かったんだ・・・・・・。
何か恐ろしいことが起きるんじゃないかって、遠ざけてたんだ。無意識のうちに。

それなのに・・・・・・・・・・・・



―――俺は、・・・・・人間のままでいたい。・・・ただそれだけなんだ・・・・―



・・・ようやく、ソロのあの言葉の意味がわかった。
あいつは知っていたんだ、自分が普通に生きられないことを。

・・・・・・これで、最後の1つのピースが揃った。
絵が完成した。

・・・・ラーンを探さないと。

今すぐじゃなくてもいいかも知れない、だけど手遅れになるわけにはいかない。
早く見つけておいて損はないだろう。